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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百四話 巡回完了

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 変な乗り物を運んでから、今度は傭兵斡旋所ルーンにまで戻って来た。
 それにしてもおかしな乗り物だったな。今までに見た事が無い形だった。
 色々な大陸から参加者、見学者が来るとは思っていたが……デイスペルでの
闘技大会もそうだったのかな。
 今のところ……ライデンと思わしき者や、常闇のカイナと思わしき奴らは見ていない。
 町でのフード被りは厳禁なので、奴らが居たら即ばれる。
 それに、デイスペルでお願いしたある物のお陰でやばい奴が入って来れば直ぐ伝わる
はずなんだが……今のところは反応が無い。

 まぁ、でかい釣り針だ。大々的にかかって見せる奴はいないだろう。
 ……ロキも含めて。

「ルインさん! お戻りですか」
「ああ。エージェさん。問題は特に無し。一件、港に変なのが停泊しちゃってたから
運んでおいた」
「運んでおいたって……乗り物をですか?」
「ああ。重かった。後で警備詰所に返却しないと。俺ももっと鍛えないとな」
「そういう問題なんですかね……やっぱり妖魔って変わった方が多いんですね……」
「それはフォニーを指してるんだよな?」
「あははは。そんな所です」
「それにしても、随分と傭兵団が多いな」

 この傭兵斡旋所レンズ、ジャンカの町支店はとても大きい。
 トリノポートで最も流通が多くなると判断したアビオラの指示により、この支店を
最大級のレンズとなるよう造られただけあり、出入りする傭兵は増えた。
 ……当然ガラの悪い輩は、シーザー師匠とハーヴァルさんの洗礼にあったわけだが……。
 しかもこの近くには学校がある。
 学校の生徒に何かあるといけないので、非常に厳しい法が制定された。
 
 それは、傭兵たるもの学生の手本となるべし! という、信、儀、礼だ。
 つまり……出来の悪い傭兵はもれなく、学校へ強制入学させられる。
 そして、フェドラート先生のこわーーい笑顔を見ながら授業を受けねばならない。
 時折逃げ出す輩はもれなく身動きが取れなくなる現象が起きると、もっぱらの評判である。
 中には美しい女性に鼻を伸ばしたせいで、氷漬けになった奴もいたらしい。

 まだ出来たばかりでこの事件……相手を見て鼻の下を伸ばすべきだ。
 いや、鼻など、そんな事しなくても子供に伸ばされるから、必要ないわけだが……。

「ルインさん?」
「ああ、すまない。少々鼻の事を考えていて」
「ああ、お花ですか。綺麗に咲きましたよね……」
「ええ? そ、そうだな……それはさておき、どうだ? 商品の方は」
「はい。ばっちり管理してあります。魅力的な商品ですね……でも、デイスペルとは
違って一点ものばかりですが、いいんですか?」
「ああ。闘技大会会場は終了したらその後、市場にしたりするつもりだからな。
ここで色々な催し物をやるっていう認知のために、闘技大会の話をそこら中でして
もらうのが目的なんだ」
「本当凄いですね。後先の事も考えてるなんて」
「デイスペルのように、使用しないんじゃ勿体無いだろ? せっかくの会場が」
「それもそうですよね。あ! お仕事戻らないと。また寄ってくださいね!」

 他の傭兵団が入って来たので俺も出ようとすると、敬礼されてしまう。
 シーザー師匠のお陰ですっかり有名になってしまった。
 幻妖団メル。この場所で最もでかい傭兵団だからな。
 肝心の団長は女王なので、顔を出す事は無い。
 幻妖団メルの部隊は全部で三部隊と一傘下。それぞれ他の仕事も持って
いるのだが、状況により活動をする。強制はしていない。

 一番隊はミズガルド、ビーが率いる。白丕、沖虎、彰虎、ビュイ、サーシュ、リュシ
アン。
 四幻全員だ。ビーは圧倒的な統率力を誇る。というよりあらゆる能力が平均して高すぎる。
 こんな逸材がただのトループだったなんて、正直勿体無いにも程がある。
 ……いや、能ある鷹は爪を隠す……では無いが、上手くばれないようにしていたのだろう。

 二番隊隊長はイビンだ。
 俺が信頼出来る数少ない仲間。そして何よりも大切な思いやりを持っている。
 決して重い槍を持っているわけではない。面白い槍を持っているのは間違いないの
だけれど。
 二番隊にはエー、レッジ、レッツェル、ドーグル、イーファが一応所属している。
 傭兵は基本団体で活動する。そのためこういったチーム分けは必要となる。

 シーザー師匠やライラロさん、ハーヴァルさんは別動隊。
 つまり傘下の扱いとしてある。
 何せ元々は死流七支。同じ幻妖団メルとするより、残ったメンバーとして固めた方が
いいと考えた。
 ライデン及びバルドス、それに奥さんのメフィルさんは当然いない。
 シーザー師匠を筆頭に、ハーヴァルさん、セフィアさん、ライラロさんを固めたわけだ。
 隊の名称は……四死流らしい。怖いよ。
 
 ……肝心の俺は一や二の数字で表す隊では無い。
 そして、俺の隊員は欠員で固められている。
 つまり……ファナ、サラ、ベルディア、レミニーニ、ベルロ-ゼ先生、アルカーンさん、フェドラート
さん、フェドラートさん、リル、カノン、アネさん等々……。
 封印者が多いので、いつでも補助員として出られる者もいる。
 俺にはモンスターたちもいるからな。
 なので、特隊としてある。
 特攻隊? いやいや、特隊だ。

 部隊数で言うなら全部で四部隊と、まだまだ少ないが、今後はもっと
整備する必要があるだろう。

「さて。警備隊詰所に道具を返却したら、一度闘技場内に入るか。準備もきっとほぼ終わってるだろう」
「パーミュ!」

 パモを撫でながら、警備隊詰所に立ち寄り、力を増幅するだけのアーティファクトを
返却し、闘技場前へ。
 明後日に、ここは人で埋め尽くされる。
 その光景が、今から目に浮かぶようだ。

 ――さて、一足先に闘技大会会場で、伝書の基礎トレでもしてみるか。
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