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3章
這い寄る漆黒③
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「あぁ、そっかぁ」
七海はその場から動かずに呟いた。
「朝田には自分から言いたかったんだけど、仕方ないか」
七海は少し迷ってから、空いている朝田の隣に腰を下ろした。
「えーっと、何か不味いことを言ったかしら」
梅香は七海の雰囲気を感じ取ったのか、目の前の二人を交互に見る。朝田は七海に目を向けずに、話が始まるのを待っていた。七海が沈黙を破る。
「話してもいいですか?」
「先ず、僕は『影踏み』っていう妖怪です。
能力は人の影に潜むこと」
「影に入って色々できるんでしょ?」
梅香は七海のことを知っているようで、説明を促す。
「ええまあ、その部分は今回のこととはあんまり関係がないのでまた今度説明させてもらいます。今回呼ばれたのは通り魔の件ですよね?僕は事情があって、通り魔を捕まえたいと思っていて、色々と動いていました」
朝田は秋穂先輩の件だろうな、と思う。
七海は朝田の方を見つめる。そして、意を決したかのように「僕は朝田が襲われた日、朝田を囮に犯人の影に入りました」と言った。
「朝田、本当にごめん」
朝田はその言葉に返すことが出来なかった。
「ちゃんと言うつもりだったんだ、だから……」
「話を遮って悪いのだけど、犯人が分かったのになんで花純が襲われたの?」
梅香が七海に尋ねる。当然の質問だ。七海には犯人が分かっていたのに、なぜ止められなかったのか。
「それについては僕にも分からない……です。犯人は、朝田を襲ったのは山下瀧彦といううちの学生でした。だけど、黒木さんが襲われたっていう時間、僕はその男の影に潜んでいた」
「つまりは、朝田くんと花純を襲った犯人は別だったっていうことね」
梅香は朝田くんも災難だったわね、と付け加える。
「七海、話は変わるけれど、なんで花純さんに『気をつけろ』って僕に言ったんだ?」
朝田にはその理由が分からなかった。
「ええと……」
七海は梅香を見て、気まずそうな顔をする。
「ちょっと前だけど、黒木さんの影に入ろうとしたことがあったんだ、でも失敗しちゃって。こんなことは初めてだったから、黒木さんには何か秘密があるんだと思って」
花純は驚いているようで、戸惑った顔で七海を見ている。
「七海くん、次やったら殴るからね」
梅香はにこやかに言った。
「山下の影に潜んでいたときに、黒木さんのことを話しているのを聞いて。もしかしたら、次のターゲットは黒木さんなのかと思って」
七海は慌てて、理由を説明する。
梅香は花純に断ってから、先ほど話してくれた『双子屋』についての話を七海に聞かせた。七海は信じられないという表情で目の前の花純を一瞬見つめ、すぐに目を逸らした。
「……本当にごめんなさい」
花純に向かって、七海は頭を下げた。
「まぁ、いいわ。
じゃあ朝田くんを囮にしたっていうのはどういうこと?」
「通り魔が多く起きていたのが特定の曜日の、あの時間だったんです。サークルの先輩も他の被害に遭った人も、その時間に一人で歩いていたって聞いて」
七海の歯切れが悪いこともあって、話の主導権は梅香が持っていた。七海はそれに従う他ないようだ。
「朝田はいつも時間がない時は、大通りではなく路地を抜けて家に帰るって知っていたのであの日僕は引き留めてその道を通るように仕向けて、朝田と別れるときに影に入ったんです」
もちろん七海には確信があったわけではないが、条件が揃えば襲われる可能性は高くなると考えた。
「朝田の影を通り魔が踏んだときに影から影へ移動しました」
それから七海は犯人の素性を調べて、見張っていた。朝田の一件で失敗したことが理由か、その間なかなか決定的な証拠を得ることは出来なかったところに花純が襲われたことを聞くことになる。
「朝田、本当にごめん。
友だちを囮にするなんて、どうかしていた」
七海は泣きそうな顔で朝田を見ていた。
「七海、なんで僕だったんだ?」
七海には友だちが多い。
なぜ自分を選んだのかが、朝田には不可解だった。
「それは、朝田は強いから…」
七海は消えそうな声で言った。
それ以上は言葉を続けることが出来なかった。
朝田はふう、とため息をつく。
「…知っていたよ」
その言葉に場の全員が、朝田に目を向ける。
「七海が秋穂先輩のために通り魔を探していることも、僕に何かをさせようとしてたことも」
朝田は「僕の正体も知っているんだろ」と続けた。
「梅香さんも話の途中でしたよね、僕は妖怪『羊男』
特に能力も持っていない変身できるだけの妖怪です」
朝田は通り魔に襲われた日、七海はいつもと違っていた。決意や謝罪が混じった気持ちを持っていることも感じ取ることもできた。その感情があまりにも強く哀しいものだったので、付き合うことにした。
「まさか、それが通り魔に襲わせることとは思ってなかったけどな」
朝田が自嘲気味に笑う。
「分かっていて乗っていたんだ僕の責任でもある。それに、『逃げろ』って言ってくれたのお前だろ? あれが一番怖かったけどな」
朝田は少し笑いながら言った。
「だから、もういいよ七海」
朝田は七海の目をしっかりと見つめながら言う。七海は泣きそうな顔をしている。
「今度やったら殴るけどな」
その言葉に七海は今日初めて笑顔を見せた。
七海はその場から動かずに呟いた。
「朝田には自分から言いたかったんだけど、仕方ないか」
七海は少し迷ってから、空いている朝田の隣に腰を下ろした。
「えーっと、何か不味いことを言ったかしら」
梅香は七海の雰囲気を感じ取ったのか、目の前の二人を交互に見る。朝田は七海に目を向けずに、話が始まるのを待っていた。七海が沈黙を破る。
「話してもいいですか?」
「先ず、僕は『影踏み』っていう妖怪です。
能力は人の影に潜むこと」
「影に入って色々できるんでしょ?」
梅香は七海のことを知っているようで、説明を促す。
「ええまあ、その部分は今回のこととはあんまり関係がないのでまた今度説明させてもらいます。今回呼ばれたのは通り魔の件ですよね?僕は事情があって、通り魔を捕まえたいと思っていて、色々と動いていました」
朝田は秋穂先輩の件だろうな、と思う。
七海は朝田の方を見つめる。そして、意を決したかのように「僕は朝田が襲われた日、朝田を囮に犯人の影に入りました」と言った。
「朝田、本当にごめん」
朝田はその言葉に返すことが出来なかった。
「ちゃんと言うつもりだったんだ、だから……」
「話を遮って悪いのだけど、犯人が分かったのになんで花純が襲われたの?」
梅香が七海に尋ねる。当然の質問だ。七海には犯人が分かっていたのに、なぜ止められなかったのか。
「それについては僕にも分からない……です。犯人は、朝田を襲ったのは山下瀧彦といううちの学生でした。だけど、黒木さんが襲われたっていう時間、僕はその男の影に潜んでいた」
「つまりは、朝田くんと花純を襲った犯人は別だったっていうことね」
梅香は朝田くんも災難だったわね、と付け加える。
「七海、話は変わるけれど、なんで花純さんに『気をつけろ』って僕に言ったんだ?」
朝田にはその理由が分からなかった。
「ええと……」
七海は梅香を見て、気まずそうな顔をする。
「ちょっと前だけど、黒木さんの影に入ろうとしたことがあったんだ、でも失敗しちゃって。こんなことは初めてだったから、黒木さんには何か秘密があるんだと思って」
花純は驚いているようで、戸惑った顔で七海を見ている。
「七海くん、次やったら殴るからね」
梅香はにこやかに言った。
「山下の影に潜んでいたときに、黒木さんのことを話しているのを聞いて。もしかしたら、次のターゲットは黒木さんなのかと思って」
七海は慌てて、理由を説明する。
梅香は花純に断ってから、先ほど話してくれた『双子屋』についての話を七海に聞かせた。七海は信じられないという表情で目の前の花純を一瞬見つめ、すぐに目を逸らした。
「……本当にごめんなさい」
花純に向かって、七海は頭を下げた。
「まぁ、いいわ。
じゃあ朝田くんを囮にしたっていうのはどういうこと?」
「通り魔が多く起きていたのが特定の曜日の、あの時間だったんです。サークルの先輩も他の被害に遭った人も、その時間に一人で歩いていたって聞いて」
七海の歯切れが悪いこともあって、話の主導権は梅香が持っていた。七海はそれに従う他ないようだ。
「朝田はいつも時間がない時は、大通りではなく路地を抜けて家に帰るって知っていたのであの日僕は引き留めてその道を通るように仕向けて、朝田と別れるときに影に入ったんです」
もちろん七海には確信があったわけではないが、条件が揃えば襲われる可能性は高くなると考えた。
「朝田の影を通り魔が踏んだときに影から影へ移動しました」
それから七海は犯人の素性を調べて、見張っていた。朝田の一件で失敗したことが理由か、その間なかなか決定的な証拠を得ることは出来なかったところに花純が襲われたことを聞くことになる。
「朝田、本当にごめん。
友だちを囮にするなんて、どうかしていた」
七海は泣きそうな顔で朝田を見ていた。
「七海、なんで僕だったんだ?」
七海には友だちが多い。
なぜ自分を選んだのかが、朝田には不可解だった。
「それは、朝田は強いから…」
七海は消えそうな声で言った。
それ以上は言葉を続けることが出来なかった。
朝田はふう、とため息をつく。
「…知っていたよ」
その言葉に場の全員が、朝田に目を向ける。
「七海が秋穂先輩のために通り魔を探していることも、僕に何かをさせようとしてたことも」
朝田は「僕の正体も知っているんだろ」と続けた。
「梅香さんも話の途中でしたよね、僕は妖怪『羊男』
特に能力も持っていない変身できるだけの妖怪です」
朝田は通り魔に襲われた日、七海はいつもと違っていた。決意や謝罪が混じった気持ちを持っていることも感じ取ることもできた。その感情があまりにも強く哀しいものだったので、付き合うことにした。
「まさか、それが通り魔に襲わせることとは思ってなかったけどな」
朝田が自嘲気味に笑う。
「分かっていて乗っていたんだ僕の責任でもある。それに、『逃げろ』って言ってくれたのお前だろ? あれが一番怖かったけどな」
朝田は少し笑いながら言った。
「だから、もういいよ七海」
朝田は七海の目をしっかりと見つめながら言う。七海は泣きそうな顔をしている。
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その言葉に七海は今日初めて笑顔を見せた。
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