孤独な聖獣は愛しき王女の為に舞い戻る!!

京極冨蘭

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第1章 再会

10 始めての公衆浴場

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(引き続きリラジ目線)

 俺達は城下町にある公衆浴場に向かう。我々、この国には公衆浴場があり、皆、利用することができるのだ。

「裸になるぞ」

「わかった」

「待てッ!破るなよ」

シャツを握り締めた瞬間、ピピの行動を悟った俺は服を脱がしてやる。

「自分でできるようにならないと恥ずかしいぞ」

「うーん…わかった!」

俺達は浴場の中に入り、人が少ない場所を選び、ピピの身体を洗ってやる。

「おまえ、汚いな…」

湯を流すと茶色の水が流れている。一回では足りない判断し、もう一度頭の先から洗い始めた。俺は汗だくになりながらピピの身体を洗い終え、自身を洗い始めた。

「リラジ、俺も洗ってやる!」

「?!ふふっ」
俺が洗ってやったからお返しをしないといけないて思ったのだろう、なかなか律儀な奴だ。

「大丈夫だ、あっ…」

隣にいる親子を見ると子供が懸命に父親で広い背中を擦っていた。子のいない俺は実は憧れていたのだ。

「じゃあ、背中を洗ってくれるか?」

「任せろ!」

俺はピピに布を託し、背中を向けた。

ピピは思い切り力を込め、背中を洗い始めた。

「グァーーッ、止めろ、力が強すぎる!」

「強いか?」

「強いよ、馬鹿野郎!優しく洗うんだ」

「うーん、優しくだな」

ピピは先程よりは上手く背中を洗いはじめた。

「上手いぞ!ピピ!」

「オーッ!!」

「さぁ、湯船にはい…」

バシャーン!!

ピピはどうやら湯船に入りたくてうずうずしていたようで俺が声を掛ける前に飛び込んだのだ。

「うわぁーい」
ピピはバシャ、バシャと湯船の中を飛んだり跳ねたりと遊び始めた。

「忘れてた…あいつ鳥だった…」

大の大人が湯船で遊んでいる姿に周りの子供達もかなり引き気味で観察している。

「静かに入れっ!誰だ!」
町の男達が怒り出す。

「すまない、俺の連れなんだ。初めて浴場に来たんだ。頭がちょっと弱くてさ…
あははは…」

「リラジの連れか…初めてか、まるで子供だなあー」

「子供…そうだな、全く手の焼ける子供だよ」

子供がいたらこんな感じなんだろうかとふと思う。

「全く神様もこんなでかい子供も俺に託すなんて…」


「楽しーッ!!」
気付く子供達もピピと一緒に湯を掛け合いながら遊び始めた。

長きに渡りカナリヤの姿に変えられていたんだ。苦しんだ分、思う存分、楽しんだらいいんだと俺は微笑ましくその光景を眺めた。



◇◇◇


「肉ーーっ!」
リリーに手で掴んだ肉を阻止されたピピはフォークを持たされる。

「手で食べちゃ駄目よ。行儀が悪いから食器を使いましょうね。私が肉を切り分けてあげるからおあがりなさい」

フォークに肉を刺し、ピピは口を開け肉を頬張る。

「旨いーーッ!昔食べた肉より美味い!!」

昔か…きっと昔は香辛料も豊富ではなかったんだろうとリリーの料理に舌鼓を打つ、うん、リリーの料理は美味い。

「野菜も食べるのよ」

「野菜は嫌だ!何百年も野菜ばかり食べてきた!!」

出された野菜にピピは反っ歯を向く。

「何百年??」
リリーは何のことかしらと首を傾げる。

「ピピ、バランスよく食べないと身体に良くないだぞ。今日は肉だけ食べていいから明日はどちらも食べるんだ」

「わかった!肉旨いーー!リリーの料理美味しいぞ!!」
と口に肉を頬張りながらピピはご満悦だ。

「明日の朝食もたくさん用意しなくちゃ」
とリリーも嬉しそうに顔を綻ばせた。

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