【完結】騎士の家の子になった王女は義兄に愛されたい

第1章 幼き精霊に愛されし王女

第14話 ダリルの旅 前編

　私の名前は、ダリル・ハントン。
　今、他国の諜報活動を行うために山を越えている。リンダことを考えると胸が苦しくなる。

　私は、第1王女のリンダの王配になるように命じられた。彼女とは8歳も歳が離れており、昔から可愛いい妹の様に見ていた。
　しかし、ますます美しさに磨きがかかる彼女を愛おしく思う日はそう時間はかからなかった。気付いた頃には私とリンダは深く愛しあうようになっていた。功績も認められ、リンダの王配になること、騎士においても最高の位の騎士団長も与えられた。また、若いのではと言う声もあったが最年少騎士団長就任に家族もリンダも喜んだ。

　
　あの夜、騎士団長就任の祝いで仲間と酒を飲みほろ酔い気分だったが、リンダと星空を見に行く約束を思い出し、部屋に向かう。
　彼女は、仲の良い精霊がなぜか騒いでいるから外出には乗り気ではなさそうだか、私が彼女と過ごしたいので強引に誘い出した。
　
　城から離れた湖の東屋が私達の逢瀬場所だった。私は、彼女を馬に乗せ東屋まで走らせた。近づくと何が甘い匂いがした。花畑があったかなと思いながら、東屋に着くまで眠気が遅ってきた。

「ダリル？起きて！あれ私も…」
彼女の声遠くなり、そこから記憶がない。

　しばらく、顔の周りに精霊達が飛んでいて、光がチラリ、チラリと見え目が覚めた。

「あれ、リンダ？一瞬にいたはず…」

「リンダー」
呼んでも返事はない。

　彼女が結んでいた赤い色リボンが落ちていた。私は不安に襲われた。他の馬の音が聞こえ、仲間の騎士がやって来た。精霊が騒いでると神殿から報告を受け、リンダの行方を探していると言われた。

　私はどれほど寝ていたのだろう…

　まさか、王女であるリンダを拐ったか？

　私は、二人でここに来て眠気に襲われて、気づいたら一人だと話すと副団長のジャックに馬鹿やろうと殴られた。
　それから精霊達の導きでリンダの捜索にあたる。彼女が発見された時、無惨に五人の賊に襲われた後だった。私が駆けつけた時、彼女は、目がうつろで放心状態だった。　

　私は賊の一人の気配を感じ、彼女に声を掛けず、自分自身への怒りに任せて賊を追いかけた。
　五人の賊はばらばらに逃げ惑っており、彼女を愛した精霊が賊の行為に怒り、彼らを呪ったようだ。そのうちの何人は容易に私の手で殺すことができた。残りは仲間がやってくれると思い、気持ちを落ち着かせリンダの待つ城へと戻った。

　しかし、リンダは還らぬ人となっていた。

　私が与えた、私の剣と対なるデザインの短剣で自害したのだ。
　
　夜、誘わなけば…
　酒を飲まなければ…
　傷ついた彼女をなぜ一人にした…
　私は自分を責めた。
　
　

　五人いた賊の一人はとうとう見つからず、山を越え逃げたようだった。精霊に呪われた身だ、長くはないだろう。
　賊の一人を取り調べると、この国の者から情報を聞き、王女が不思議な力を持ち関係を持てば長生きできるなど誇張された噂を聞き、子供を産ませ、売り飛ばそうと恐ろしいことを考えていたそうだ。
　東屋に誰か来るだろうと眠りを誘う香を焚き、その罠にまんまと引っかかったのだ。

　私は騎士団長も解任された。
　騎士仲間から冷やかな目で見られ、罵倒され、自分の居場所も失ったのだ。
　家族も責任を取らされ北の村へ追いやられた。

　王から賊の追跡と国の周辺調査をら命じれた。私はこの手で逃げた賊を追いつめ殺してやると決め、諜報活動の旅へすぐに出発したのだった。