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第4章 別れと新しい旅立ち

第9話 実地訓練ー皇宮編ー3

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 ようやく近衛交代式訓練から解放されたリーラは皇宮にあるクリストファーの執務室へオースティンに連行される。

「3番隊オースティン参上しました」

「騎士候補生リーラ参上しました」

部屋に入るとクリストファー、ダリル、ハルク、宰相達がいた。

「リーラ、今日はご苦労だった。皇太后も怪我はなく無事だ。感謝する」

「陛下、騎士として当たり前のことをしたまでです」

「しかし、今回のことはいささかか問題だな」

「問題ありました??」
まわりはあきれた表情でリーラを見る。
耐えきれなくなったオースティンが吠える。

「きさまー!騎士学校で何を習った!」

「えーっ、たくさん習いましたよ」

「おまえは、馬鹿か!」

「ダリル先生、騎士学校で何を教えているんですか!」 

「面目ない…」

「ちゃんと言ってくれないとわかりません」

「なぜ、皇太后様をかかえて倒れた!皇太后様は療養中だ!怪我をされたらどうするんだ!自分の身を盾にしろ!馬鹿もの!」
療養中と知らなかったので驚きのあまり口に手を当てる。

でも、自分をにするのは嫌だなぁ。

「次!護衛対象を置いて敵を追うな!馬鹿か!その隙に第2の敵が来たらどうする!!」

本当だ!と思い手をポンとたたく。

「最後、敵に刺したナイフをさらに蹴り、深く刺さったナイフを一気に抜くとは敵が出血多量で死んでしまったら自供させれないだろが!!」

 あー、それは習ったかもしれないなぁ。 

「リーラ・ハントン。明日の業務が心配だ。徹夜でもう一度騎士の心得をおさらいしようか?」

「はぁ?今から?帰ってご飯食べないと」

「ははは、大丈夫だ。食堂から持ってきてやる。当直室もあるから寝る所もある。果たして寝れるか怪しなぁ。さぁ、付き合ってやる。いくぞ」

がしっと後ろえりつかまれたリーラはオースティンに連行される。

「いやだ、今からなんて!疲れてるのに!やだぁー!とうさーん!助けて!!」

「リーラ、復習は大切だ」

ハルクはふっと思い出し笑いをする。




◇◇◇


      
       20年前

「キャサリン、なぜ一人で敵を追った!」 

「私、強いから大丈夫です!」

「馬鹿やろう!騎士学校で何を習った!」

「うーん…たくさん習ったからあげれないですぅ」

「馬鹿やろう!今から徹夜で班全員で騎士の心得をおさらいするぞ!!連帯責任だ!」 

「やだ!お腹減ってるのに、ハルク隊長なんてキライ!」

「おまえのせいでどうして私まで…」

「オースティン、うるさい!あんたが止めてくれたらこんなことにならなかった」

「人のせいにするなよー!」


◇◇◇



キャサリンとオースティンの若かりしき頃を思い出し笑うハルクにダリルが声を掛けた。

「どうしてにやにやしてるんだ?」

「おまえの娘とキャサリンがダブってな。」

「皆似てると言うがそんなに似てるのか?」

「まぁな」
ダリルの肩に手を置きくっくと笑うハルクだった。

「失礼します」
2番隊ラッセルが入室する。

「先程、皇太后様を襲撃した者の身元かわかりました。ザイデリカ領民でした。ザイデリカ領内の男爵令嬢から依頼を受けたそうです」

「??男爵令嬢?」
クリストファー始め、皆が困惑する。

「男爵令嬢を問い詰めたところ、ザイデリカ侯爵の令嬢が皇太后様の容態が改善に向かわれているので、今後帝国の催しに皇太后様のエスコート役を陛下が行われると自分のエスコートのチャンスが失われるから何とかしてほしいと相談を受け侯爵令嬢のために皇太后様に怪我を負わすように指示したそうです」

「私が誰をエスコートするかなんてあいつらに関係あるのか…」
クリストファーの表情が怖くなる。

宰相がため息をつく。
「ただでさえ陛下のお相手探しに大変だと言うのに全く訳のわからないことを」

「宰相、ザイデリカ領の男爵は身分剥奪。令嬢はコールディアの修道院に送れ。新たにこちらの手の者を男爵領にいれろ。
 ザイデリカ……、ボロが出始めたな。
 財務を仮とはいえザイデリカに任せていたが叔父上がまもなく財務大臣として復帰される。わざと知らせず驚かしてやるか」

「不透明な部分があると報告もあります。徹底的にやりますか?」

「ふっ。見せしめにもいいだろう。内密にあぶり出しを始めろ。
 ダリル殿、各領の騎士指導はザイデリカへ向かってくれるか?
 ザイデリカの内状も探ってほしい。新しい爵位を与える男爵もダリル殿がいれば安心するだろう」

「御意」

「ダリル殿がザイデリカへ向かわれる時は王女はどうされるのですか?
我が家ですか?!」
宰相は期待の素振りを見せる。

「ない、ない。リーラはローズ夫人を嫌ってるんだぞ。我が家にくるんだ!」
ハルクは自慢するように宰相に言う。

「まぁ、家に騎士だらけですからねぇ。安心ですね。しかし、なかなか王女は剣のいい腕をお持ちだ。陛下のお相手はリーラ王女はいかがですか?」
場が静まり返る。

「王女とは8歳も歳が違うぞ。無理だ」

「では、アンデルクのアンジェラ王女に決められては?」

「無理だ。あのピンク色の髪とキンキン声が受け付けない」

「では、帝国内にしますか?1人だと領内の争いが起こるので何人か娶られたら?」

「全て却下だ。今その時ではない。ゾーンの動きも気になる。今は国政中心だ」

「またや、逃げられましたなぁ」
宰相はニヤリと笑うと、
「祝い事は突然訪れるもんだよ。おまえの息子もそうだっただろう。ルドルフ?」
とハルクが言う。

「解散だ。仕事にかかれ」
クリストファーは、口煩くちうるさい者を追い出す。

 誰もいなくなった部屋で溜息をつく。
 呪いを持っていたので誰かを娶るつもりはなかった。
 誰をか…
 ふと、リーラ王女が浮かぶ。
 
 一年半前のリヴァリオンでの出会いを思い出す。

「お、おじさん!ごめんなさい。迷路で勝手に遊んでしまって」

 おじさん…

 ない、ないな。首を振る。
 
 まだ、13歳だ。ありえない。
 
 
 ハルクの言う通り縁とは突然訪れるものだといい聞かせて仕事に取り掛かるのだった。





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