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第5章 リーラとアンデルクの王子
第7話 狙われた王子
しおりを挟む早朝、黒と紅の騎士達が混じり合う。
「ロゼッタ隊長おはようございます。今日も相変わらずお美しい…」
「おはようございます。美しいなんて当たり前ですけど嬉しいですわ」
「あのぉ、ノーザンランドでも是非ご一緒に食事でも…」
「まぁ!お誘い嬉しいですわ、予定が合えば是非ご一緒させて頂きますわ」
よし!とガッツポーズを決めたアンデルク騎士団長のデュークは鼻の下を伸ばしながらキャサリンと最後の打ち合わせを立ちながら話をしている。
両騎士達は呆れ顔で2人を見ていた。デュークはキャサリンが4番隊隊長となりアンデルクに仕事で訪れた時にどうやら恋に落ちたようだ。会う度に口説いているようだがいつも空振りらしい。
アンデルク側は王族や付人が乗る馬車をアンデルクの騎士が守り、前後をノーザンランド第4番隊の騎士が二手を分かれ配置につく。
後方部隊を担当するネイルが最後の確認を皆に話を始めた。
「我ら後方部隊先頭はリーラとデニスだ。アンデルク側の後方を守るんだ。リーラの後ろはレンとアンディでよろしく頼む。あと後ろはいつものメンバーで配置だ。1番後ろは俺がいる。リーラ達のいる先頭の方が比較的安全だと思うが、もしもの時、戦闘になったら敵がアンデルク側に行かないようよろしく頼む」
「はい」
打ち合わせ通りに後方位置に配置に付きアンジェラ王女とライアン王子が来るのを待つ。侍女や従者を引き連れた人の集まりが見えた。
周りを警戒しながら馬車への乗車を待つ。
アンデルク側の号令がかかる。
「出発!!」
馬が駆ける音と馬車の進む音か早朝、静かなアルティーレの街に響いていく。
リーラは前方のアンデルクの騎士達の髪の色を見る。赤、オレンジ、ピンクの鮮やかな色の髪がこの国の髪の色のようだ。みな、紅色の上着に白色の下衣の騎士服を着用している。
ノーザンランドの馬は黒色だかアンデルクの馬は茶色のようだ。リーラはじろじろと観察していると少し前にいたアンデルクの騎士と目が合う。
赤色の髪の若い騎士だった。
冷たい眼差しで睨みつけられたようだ。
"多分、あれだ。女だと馬鹿にされたパターンだ。"
そう思えばアンデルクの騎士団には女性がいなかったように思う。
『女だけどリーラは強いから安心しろ』
『ありがとう』
一行は順調に北上し、テール川に差し掛かる。川沿いを進み国境を渡りユーリィ基地の関所を目指す。
右手にテール川を見ながら進む。街並みから外れ、左手には何もない林のみが点在する場所を走る。
『リーラ、左側から人の気配を感じるぞ』
剣を通じ感性を澄ませる。
確かに林の中に複数の人の気配を感じる。
後ろの部隊に林の方に敵がいると合図を送る。後ろから剣を抜けと笛の合図が聞こえた。
ガチャ。
剣を抜くと同時にエクストリアが声をかける。
『林から来るぞ!まだ林にも何人か残っている』
「敵襲!左側から!林にも何人か残っている」
『敵はリーラの前を狙っているのか?』
"ネイルさん、敵は後方から来るって言ったじゃないですか…なんで真横から敵襲が来るんだよ"
とぶつぶつリーラは文句を言いながらノーザンランド後方部隊はアンデルク側を守るように横に付ける。
黒装束の男達が現れた。
「うそだろ!また、戦闘かよ…リーラさまぁ、無理しないでくださいよ」
アンディさんが懇願するような声を出す。
カキーン!
しかし、黒装束の男達はノーザンランドの騎士の剣を受け流すと避けるように擦り抜けアンデルク側の騎士に攻撃を始めた。前の部隊を後方に下げないように林から矢の攻撃も始まる。
「くそっ、なんでアンデルクの後方を狙うの!」
ルルから降り戦闘中のアンデルク側に行く。
「リーラ様!!自分から敵に向かうな!」
レンが叫ぶ。
『リーラ!わかったぞ!敵はあの後方にいる男を狙っているようだ』
見ると睨みつけていた若い騎士だった。その騎士を守るようにアンデルクの騎士達か囲っている。
"もしかして…守られているって…あれが王子なんじゃ??"
アンデルクの騎士が黒装束に斬られそうになっている。リーラは敵の剣を受け止める。
カキーン、ギリッ。
相手を蹴り、そのまま斬り捨てる。
バサッ。
「あ、ありがとう、助かった」
「まだきますよ」
赤髪の若い騎士が何やら叫んでいた。
「くそっ、狙いは俺なんだろう。俺も戦う!」
「王子!馬から降りないで下さい!」
「うるさい!俺だってやれるんだ!」
リーラは戦いながら狙われている王子に近づく。
剣に力を込める、白銀色の光が剣を包みこむ。
「はぁ!!」
カキーン。
敵の剣を受け止め、間合いを取ると素早く斬りつけた。
バサッ。
『リーラ、矢が来るぞ。あの男を狙っている』
『わかった!』
ヒューン、
カン!矢を打ち砕く。
狙われている騎士の元へ急ぐ。狙われている騎士の足元に矢が連続で打たれる。
ヒューン、
ヒューン、
ヒューン
若い騎士は矢を除けるために後方に下がる。
ヒューン!
一歩後方に下がりすぎたため川底へ落ちてしまう。
「あぁーーーー!!」
バシャン。
「川に落ちたよ!」
剣を鞘に戻し落ちた騎士を助けるためにリーラも川に飛び込む。
バシャン。
テール川は流れは緩やかだか蛇行している箇所もあるため部分によって流れが急な所がある。
赤髪の騎士を見つけ、なんとか掴み岸に近づこうと思ったが流れが急になる。
「うぷっ?!」
水を飲んでしまった。
やばい。
流れが急すぎる、
私まで溺れる…
『ここだ!!』
エクストリアが誰かに叫ぶ。
空から小さな影が見える。
ヒュ~
「風よ、川の水を切れピヨ!
2人を浮き上げろピヨ!」
川の水が瞬間なくなり、身体が持ち上がる。
ふわり。
岸に打ち上げられる。
どさっ!
「おぇっ。いったぁー。助かった~」
「何やってるピヨ。泳ぐには寒いピヨ」
急いで赤髪騎士を見るとぐったりしている。
息をしてないんじゃないか??
騎士の顎をあげ鼻を押さえ、口から空気の吹き込みを何度が行う。
「ごほほっほ。おえっ!」
息を吹き返し、飲んでいたら水を吐き出したようだ。
「大丈夫?」
「あぁ。助けてくれたのか?」
「リーラ!馬鹿ピヨ!光の力使えピヨ!キスしてどうするピヨ!!」
ぺぺがジタバタして怒っている。
「キス…??」
赤髪の騎士は呆然とする。
「だって死にそうだったよ!!オースティン隊長が一騎士として優先されるのは人の命だって言ってたもん!やっぱり人命救助には人工呼吸でしょ!あの時徹夜して習った事が活かされたぁー!オースティンたいちょー!!リーラ、人を救いました!!」
リーラはガッツポーズをする!
「馬鹿ピヨ!脳筋共にすっかり洗脳されてるピヨ…」
「俺のファーストキスが…」
「おまえのファーストキスなんてどうでもいいピヨ。可憐な乙女のファーストキスを奪うなんてどう責任取るピヨ」
頬を翼でバシッと叩かれた。
「えっ、そんなこと言われても被害者は私の方で…」
「うるさいピヨ。うちの娘が嫁に行けなかったらどう責任取るつもりピヨ」
「も、申し訳ありません…」
「謝って済む問題じゃないピヨ!」
「ねぇ、いつ私がぺぺの娘になったの?まぁ、いいけどさぁ。みんなが探しているだろうから早く合流しようよ。でも、びしょびしょだよ」
リーラは服を脱ぎ始める。
「バカァ!!リーラ!こんな所で服を脱ぐんじゃないピヨ!!」
「えっ??ダメなの?」
赤髪騎士は赤面して顔を横にしながら高らかに声を上げる。
「もうー!なんの拷問なんだよー!!」
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