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第6章 亡国の王女の子達
第9話 オースティンの恋ー2ー
しおりを挟む「坊っちゃま、御隠居様がお呼びです」
爺さんにとうとうばれたか。影から屋敷に戻るように言われる。
「何か用か?爺さん」
「何か用かだ!影を勝手に使いよって!
おまえの行動は帝国に筒抜けだ!我が一族を危険に晒す気か!」
「じゃあ、離縁すればいいんじゃないのか?」
「さっさとしたいわ。陛下がお呼びだ。すぐに皇宮へ行け!!」
「くそ。厄介な」
「はぁ。全く厄介なのはおまえ達親子だ」
「どうして親が出てくるんだ?」
「昔、屋敷を出入りしていたレリーズ王女を覚えているか?」
「あぁ」
「本当はおまえの父とレリーズは婚約していたんだ。しかし、情勢により破談。おまえの父はレリーズを未だに想っている。嫉妬したおまえの母がガーリングをわざと屋敷に呼んでレリーズと会わせたんだ。やった離れたと思ったら今度はおまえだよ。レリーズの娘に再び会い、自分の人生を狂わしている。目を覚ませ!
陛下に命乞いをするんだ。我が一族のためだ!」
衝撃を受けた、皇宮までどのように行ったかなんて覚えていない。彼女の人生を狂わせたのがよりによって自分の母親とは思わなかった。
久しぶりに来た皇宮に同僚の騎士達は俺を見て驚いたが、すぐに皇帝の謁見の間に案内された。
「何かご用で?」
「ふっ。用があるから呼んでいるんだかな」
俺は気勢を張るが内心穏やかではなかった。皇帝の真っ黒瞳に睨みつられて背筋からタラタラと汗が流れるようだった。
「我が帝国でよくもまぁ好き勝手してくれたものだ。まだ目標は達成してはいないようだかな」
心の内を読まれているように嘲笑われた。
「くそっ。何が言いたい!!」
「おまえの能力を買っているんだよ。騎士も官史も事件の真相にたどり着くことが出来なかった。しかし、お前はひと月もかからず事件に関わった者を全て皆殺しだ。子供も含めてな…」
全てがばれていると悟る。
「まだ殺し足りてないんだろ…」
にやりと皇帝が笑う。
「おまえ、我が犬となれ。その能力、私のために使うのだ。そうすればおまえにも力を与えてやろう。おまえの最終目標に辿り着けるかもしれんなぁ」
くっくっくと笑う皇帝を俺は睨みつける。
嘲笑う皇帝は俺に追い打ちをかけた。
「キャサリン・ロゼッタは我がそばに置くことにした。どうする?犬になるか?」
クソッ!!!
答えは決まっている。
「仰せの通りに……」
俺は彼女のために皇帝に忠誠を誓った。
俺は皇帝の犬となり最年少で第2番隊隊長に昇進した。
隊長に昇進したことで祝いの為に珍しく父と母が領から帝都の屋敷にやってきた。家族が珍しく揃った食事の最中、兄の子供の話を楽しそうにペチャクチャと喋る女に虫唾が走る。
「やかましいだよ!クソババァ」
「あなた、隊長職についたのにまだその話し方なの?」
「うるさいんだよ!!おまえのせいで隊長なんだよ!!!悪魔に魂売ったクソババァが説教なんて出来るのか?たかが低い爵位の身分だったおまえが侯爵に嫁げたからっていい気になるな!!レリーズ王女に詫びて犯した罪を償え!!」
そして、レリーズ王女のことを暴露をしてやると目玉が飛び出るくらい驚いた顔をしていた。
その場にいた兄と弟は驚いていたが父は驚いていなかったところを見ると知っていたんだろう。
翌朝、母は毒薬を飲み自殺したようだ。葬儀の間、家の者は誰一人悲しむ者はいなかった。俺と目を合わす者も誰もいなく、恐らく俺を恐れ悲しんではいけないだろうと思ったんだろう。
祖父、父も俺を責めることはなく、俺は一族から恐れられコールディアの最高権力者となる。
第2番隊の隊長になった俺は皇宮警備を名目にして皇帝の命令通りに歯向かう貴族を見つけ出し、闇へと葬る。我がコールディアの影が各々の領内に潜ませ、多くの反逆者達を葬ってきた。
もちろん、ザイデリカを陥れることを忘れはしない。ザイデリカだけでは駄目だ。ローレンヌ王族を裏切った貴族達まとめて始末して彼女にローレンヌを渡すのだ。
一方、皇帝のそばに置かれたキャサリンは数々の功績と戦火を潜り抜け、25歳の時にイーサン陛下に認められ第4番隊隊長を地位を得た。帝都の隊長はノーザンランドの5本の指に入る強さを誇る地位だ。
特に激しく続くウィンターニアの戦いでは彼女の功績は大きく、彼女のおかげで終わったに等しい。
彼女の戦法である素早さと毒薬を塗りこんだ剣で斬られた敵はじわりじわりと苦しめられて死んでいく。その殺し方からノーススコーピオンの別名もつけられる。帝国からも他国からも彼女の名は広まり騎士としての不動の地位を得る。
俺は嬉しかった。
彼女が自分自身を誇れる騎士になれたことを…。
たまに顔を合わす隊長会議だけが元気なキャサリンを見れる至福の時だった。
しかし、年々、彼女がつらい表情をする時があり不安を煽る。
副隊長のネイルを飲みに誘いキャサリンの様子を聞く。
「昔の古傷のせいで鎮痛剤の量は増えています。医療院に薬を取りに行く時にアーマノ先生がかなり身体に負担が来てるから無理をさせるなとも言われましたよ」
「そうなのか…」
「このまま無理をさせたら身体が長く持たないとも言われましたよ。オースティン隊長はどうするんですか?余計なお世話かもしれないですが、このままの関係に終わらすんですか?」
「わかっている」
「そうだ、この前のリヴァリオンでの晩餐会の時アンデルクのデュークとゾーンのザカルケが相変わらずキャサリン隊長を口説いてましたよ」
思わずグラスを握り締める。
「ただでさえ胸でかいのに胸がポロリと出そうなドレス着るんですよ!あいつらや他の男達も胸ガン見ですよ」
パリン、
グラスが割れる。
「あっ、すみません…余計なことを話しました」
彼女の苦しみを理解できない愚かな虫けら共が彼女の美しい姿を見たと聞いただけで腹立だしかった。
ザイデリカを追い詰める材料は準備でき、今までまとめ上げた不正資料を父に渡す。
父もザイデリカに回した影の働きで確実にあいつらを地獄に突き落とす準備は整ったようだ。父を見ると俺と同様の復讐者の瞳だった。亡くなった祖父の言葉を思い出す。
「親子で厄介かぁ…」
「何か言ったか…」
「いや、何も」
留置棟に新しく入った賊の取り調べに向かう途中、馬車の中からキャサリンと騎士学校の教員であるダリルが笑いながら歩く姿が見えた。
俺の胸はずきりと痛む。
確かにダリルはあいつの父親に似ている。細身の俺なんかより父親に似たダリルの方が彼女を幸せにできるかもしれないとそろそろ自分の気持ちに蓋をしなければいけないと悟り始めた。
忙しない日々を過ごし、騎士候補生の実地訓練がやって来た。俺は少し楽しみしていた。皆が口々にキャサリンに似た女性騎士候補生がいると聞き、どんな奴かと期待をする。ハルク隊長からその子はリヴァリオンの王女であると聞かされ、胸が痛くなる。キャサリンと同じ王族なのかと…
実際会って見ると破茶滅茶ぶりや言動がキャサリンに似ていて目が離せなくなる。
将来困らないようにリーラに騎士について教えてやることを決めた。
教えながら眠そうに半目で必死に私の話を聞こうするリーラの顔の面白くに必死に笑いを堪える。
気づくといびきをかきながら寝始めた。こいつ、隊長を前にいい度胸してやがる。
リーラのほっぺを抓るが動じない。
昔、ハルク隊長が勉強の苦手なキャサリンの為に徹夜でわかりやすく教えていた。今ならわかる男社会である騎士隊で舐められなくするためだろう。俺の気持ちに気づいていた隊長は何かとキャサリンのそはにいさせてくれた。
わからないところを聞いてくるキャサリンが可愛くて仕方なかった。
おまえもこの騎士社会で舐められるなよとリーラのほっぺたを突く。
月日が経ち、ようやくザイデリカが
告発される日がやってきた。
キャサリン、アンデルクから帰ってきたら君の長年の恨みを晴らすことができるからな…
君の手にローレンヌを…
間に合うよな、キャリー
そして、俺は捕らえられたザイデリカの取り調べに監獄棟に向かうのだった。
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