【完結】ノーザンランドの白き獅子リーラ 〜捨てられた王女は人生逆転復活劇は起こしたくない〜

京極冨蘭

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第8章 孤立した皇太后の故郷 ウィターニア編

第5話 悲劇の始まり

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(第5話から不快な描写が始まります、苦手な方はお気をつけください)




ザブーン
ザブーン 

 夜闇のウィンターニア沖にゾーンからの船が留まっている。紫色の髪の逞しい身体の男は腕を組みながら陸をじっと見つめる。

「サンドラ、俺はお前のようにはならん…」

横に控えていた部下に命令をする。
「例の魚を放て」

「へい」

青色の美しい魚は海の中へと飛び込むと嬉しそうに跳ねながらウィンターニアへと向かって行った。

「親父、本当にあの魚が切り札になるのか?」
隣に立つ男と同じ髪と逞しい身体の青年が父親に尋ねた。

「知らん、ご主人様が仰るんだ間違いないだろう。我らはことが大きくなるまで待つだけだ。仲間から連絡が来るまで船でのんびり過ごすぞ」

青年の顔がさーっと青くなる。
「嘘だろっ!陸地に上がらせてくれよ。これ以上船はキツい…オエッーー」





  ウィンターニア領内 メラバン村

「今日は大漁だ!」
「笑いが止まらないぐらい獲れたな!」
あはははと賑やかに漁師達が早朝に沖から戻り収獲した魚を船から下ろしている。

「獲れたての魚で一杯やろうじゃないか!」
「いいねぇ」

今宵収獲された魚は村でも振舞われ、どの家でも豪華な夕食になったのだ。

翌朝、村の診療所に体調不良で診察に訪れる人がいた。

「先生、大変です。次から次へと村人が診療に訪れています。問診で共通するのは夜に収穫した魚を食べたそうです」

「うむ、食中毒か…。しかしこの村では生で食べるからなぁ」
やれやれと医者は白衣を羽織り、診察の準備に入る。この北西部は魚を生で食べることが多く、度々食あたりを起こす患者がいるので医者も驚いた様子はなかった。

「ひとまず、薬は足りるか?」

「在庫は少ないですね。領都に買いに行かねばなりません」

「仕方あるまい。急いで領都に行ってくれ」

「はい、わかりました」
では、急ぎ行ってまいりますと準備を整え診療所の手伝いの者は出て行った。

「じゃあ、患者を呼んでくれ」

「はい」

「次の方どうぞ」

「こちらにきて座って下さい。喉も見ておこう。口を開けて」

「うっ、は、はい…」

「辛いかもしれないが頑張って」

「あーっ」
と患者が口を開くと口の中からピシッと何かが出てきた。

「なんだ!ギャアーー!!」

「先生!ギャアーー!!」

そして、村から悲鳴が聞こえ続けたのだ。




  ノーザンランド 帝都 皇宮

クリストファーの寝所の扉がノックされ、扉越しに侍従の声が掛かる。
「陛下、お寛ぎ中、申し訳ありません。至急レニー子爵が謁見を申し出ております」

「今何刻だ?」
クリストファーは酒の入ったグラスをぐいっと飲み干し、目を通していた書類をテーブルに置く。

「今、準備して行く、執務室に会う」

「御意」

クリストファーはガウンを羽織ると執務室に向かう。扉にはすでにレニー子爵が控えていた。
「陛下、夜分遅くに申し訳ありません。お早く耳に入れて頂きたい案件がございます」

「あぁ、わかった。おまえ達は扉の外で控えろ」
護衛を扉の外に待たせて、レニー子爵を部屋に招きいれた。

「只今、ウィンターニアに散らばせている密偵から報告でございます。ウィンターニアのメルバン村にて原因不明の奇病が発生したとのこと。現在も隣村に同様の病が広がっているようです。22年前の伝染病の再来かもしれません」

「何?!」

 22年前にウィンターニアから伝染病が発生し帝都にまで及ぶ感染がかつて起きていた。当時、医療院のアマーノの迅速な対応により感染を食い止めるができたが、ウィンターニア及び北西部に渡り多くの命が失われた。
 ウィンターニアに南の国からの船が寄港し、船にいたネズミが上陸し菌を運んだとされている。菌が拡がるのは一瞬だった、ウィンターニアは当時下水完備もされておらず度重なる戦火に遭い、衛生状態が粗悪な為に起こってた伝染病だった。


「陛下!ウィンターニアからの一報が来ております!」
と執務室の扉をノックし侍従か紙を握りしめてやってきた。クリストファーは紙を広げ読むと、険しい表情になる。

「レニー!ウィンターニアを隔離する!おまえは対応にあたれ!」

「御意」
と頭を下げると小走りにレニー子爵は立ち去った。

「すぐに大臣達に招集をかけろ!あと医療院のアマーノと第6番隊にも招集をかけろ!すぐにだ!」

「はっ!」

「伝染病…」
クリストファーはウィンターニアからの知らせを握り潰した。
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