魔法×英雄×学校生活

いなお

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プロローグ

物語の始まり

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「お客さん」

遠くから声が聞こえ、身体を揺すられる。

「お客さんもうすぐ港に着きますってば」

霞んでいた視界が明瞭になる。
体を揺すり、起こしてくれた人はこの小さい小舟の船長だ。
細い体付きの老人で白い立派なヒゲを蓄えている。

「あれ、ここどこ?」

眠たげな声を出すのは風峰悠人。
白髪の髪を一つにまとめているのが特徴的な15、6歳の少年だ。
麻布のローブの隙間から、黒衣の軍服のようなものを着ている。

「ほれ、あそこを見てみなさい」

そう言った老人の指差す方向を見てみると大きな島が見えた。
この島の名前はグレイシス島と言う。
なんでもこの島はすべてとある魔術学園の敷地内で、多くの学生がこの島で魔術について学んでいるらしい。
そんな島にが訪れた理由はこの島にあるとある学園の学院長から依頼が来たのだ。

「全く一体なんの用事なんだかね?」

ある日学園長から一通の手紙が来た。
中身は簡潔な文で「至急、グレイシス島に来たれり」とただそれだけが書かれていた。
そんな彼が一体何のようで呼び出したかがやはり気になって仕方がなかった。
そうこう考えにふけっている内に舟乗り場に着いた。

「ありがとなじいさん。助かったよ」
「なに、これが仕事じゃよ。その道に沿って森を真っ直ぐ行けば学園につくじゃろうよ」
「ああ、わかった」

そう言うと老人の船長はまた舟を海へ出し霧の向こうへと消えていった。

「さてと、じゃあ行きますかね」

船乗りのじいさんに教えてもらったように森に足を踏み入れた。
一度森に入れば辺り一面が緑に覆われている。
目じるしとなっているこの舗装された道を踏み外し森に入ろうものならばすぐに迷子になってしまうであろう。
しかし舗装された道を歩いている分には、森の木々はとても穏やかに感じる。
木々の間から射し込む日に光はとても暖かく、時折吹き上げる風は心地よく感じられる。
そんな自然の恩恵を受けながら歩くこと1時間。

「おい嘘だろ、まだつかねえぞ......」

全く目的地である学園につくことができない。
それどころか前も後ろもあるのは木のみ。
早く森を抜けなければ日が暮れてしまう。
流石にそれは勘弁である。

「外から見た感じだとそんな遠い感じしなかったんだけどな」

木々の葉に覆られた空を見ながら小声で呟く。
一つため息を吐いて、歩き始めようとしたその時であった。
微かながら、キィンと金属のぶつかり合う音がした。
それは道から外れた森の奥の方から聞こえた。
これは紛れもなく剣と何か金属がぶつかる音だ。
こんな日の暮れる目前な時間帯に森で剣術の稽古か?それとも学園の授業かなにかか。
そう思ってみるもののこの学園に呼び出されたことと何か関係あるのかと不安にも感じられる。
もう一度空を見上げる。
木々の間から射し込む光は赤色に染まってきており、完全な闇になるまで時間は少ないだろう。

「......まあしょうがねえか」

頭を少し掻き、音のした方へと走り出した。
草木を軽やかにくぐり抜け、全速力で走る。
走りながらところどころに剣尖の跡があるのに気がついた。
こんな森の中で一体何やってんだと疑問に感じる。
学生同士の訓練とか演習とかって言うのなら余計な心配で済む。
問題はそれら以外の場合だ。

「無駄な心配であってくれよ」

小さくつぶやき走る速度を上げた。

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