精霊使いと冠位の10人

いなお

文字の大きさ
8 / 51

神草埜々

しおりを挟む
 遡る事数時間前、先の騒動が起こる前の話をしよう。
康太が補講をしている時間であった。
 職員の校門口から一人の女学生が出てきた。
 その学生は綺麗な金髪をサイドテールでまとめ、茶色のカーディガンを着ており、周りを確認するように恐る恐る確認しながら歩いている。
彼女の名前は神草埜々。
魔術科1年。
成績は実技の成績は常にトップ。
そして魔術省における10人しか居ない冠位の10人(グランドマスター)の一人だ。
また彼女はその可憐な容姿からスカウトされて、アイドルとしても活動しており、実力容姿共に備わった魔術省の顔とも言える人物が彼女である。
確かにの魔術実技においては、一流と呼ばれる魔術師や無論、他の学生にも追随を許さない実力であるが、実際は魔獣との実践経験はほぼ無いに等しい。
アイドル業にしたって親が勝手にプロダクション事務所に応募し、そして選考が通ってしまい、仕方なく始めたのがきっかけだ。
この職員用の出口から帰るのは、正門や裏門から帰るとファンの押しかけや男子生徒からのサインの要求やらでキリがないからだ。
それで教師の許可を取って職員用の出入り口から学校へ通っているという訳だ。
少し学校から離れたとこまで行き、神草がもう大丈夫かなと気を抜いて一息ついた時であった。
後ろから「わっ」と声をかけられ、身体をビクッと震わせた。
すぐさま振り返ると、そこには彼女の親友の顔があった。

「もー驚かせないでよ!ともかー!」
「いやー、ごめんごめん。そんな驚くとは思わなくってさー」

 無邪気に笑うのは少女の名は大築智香。
彼女は康太とトモノリの幼馴染であり神草埜々の唯一の理解者であり親友だ。
 彼女は神草桃と同じ魔術科のクラスメイトだ。
成績も神草には及ばないが上位優秀者で、彼女もこの高校では名が知れ渡っている。
 その細身で華奢な印象から想像できるように、彼女は繊細で細かい魔術行使を得手とし、水属性の扱いでは高校生の中でも5本指に入るのではないかと言われているくらいである。

「そうそう、今からセントラルタワーのちかくにできた喫茶店行かない?今日から期間限定のスイーツ祭っていうのやってるらしいのよ」
「えっほんと!?」

スイーツ祭と聞いて女子高生としては行かなければならない使命感のようなものを感じたが、神草は今から予定があることを思い出し肩を落として智香に謝った。

「ごめん智香。今日私本部に顔出さなきゃいけないんだよ...」
「あー、そういえばそんなこと昨日言ってたね。じゃあ私はお休みですし埜々の分も今日は食べてきてあげるよ」

笑顔で言う智香は埜々には悪魔のように見えた。
智香も魔術省に所属はしている。
本来この組織は18歳以上からしか入ることのできない組織である。
ただし高校もしくは中学で成績上位者で魔術省の主催する実技試験に合格することができれば研修生として組織に入ることができる。
神草埜々についてはずば抜けた試験結果を叩き出したため、特例として冠位の称号と正式隊員として魔術省に所属している。
埜々はうーっと唸り声を上げて智香を羨ましげに見ていた。

「あはは、そんなに睨まないでもまだしばらくやるらしいから、埜々の空いてる日に行こうよ」
「絶対!絶対だからね!」

埜々は念を押して智香に訴えた。

「わかってるって。じゃあ今日は久しぶりにあの2バカでも連れて行ってくるよ」
「2バカって、智香がよく話してる幼馴染の人たち?」

そうそうと智香は頷いた。

「ここ最近遊んでなかったし、相手でもしてやろーかなってね」
「その子たちって普通科だったよね、確か」

以前から智香は埜々に康太たちの話をしていた。
高校に上がって科が別れてからは接点が少なくなったらしいのだが、埜々はきっと寂しいんだろうなと察していた。

「そうそう、普通科との接点なんて学校行事かたまに魔術の実技がかぶる程度だしね」

普通科にも魔術の実技の講義はある。
しかしそれは半月に3回程度であり、毎日と言えるほど魔術の実技がある魔術科に比べるとその差は大きいといえる。
そしてハッとしたように携帯のディスプレイに映っている時計の針が16時を刺そうとしていて、まるで子供のように慌てだした。

「うっわやばい、ごめん智香!また明日ね。」

そう言うと埜々は女子高生が走って出せるスピードとは思えない速度で走り出し、まさにあっという間に智香の視界から遠ざかっていく。
智香は「気をつけなよー」と叫んで埜々を見送り、智花はトモノリに携帯で電話をかけるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約者は無神経な転生悪役令嬢に夢中のようです

宝月 蓮
恋愛
乙女ゲームのモブに転生したマーヤ。目の前にいる婚約者はそのゲームの攻略対象だった。しかし婚約者は悪役令嬢に救われたようで、マーヤそっちのけで悪役令嬢に夢中。おまけに攻略対象達に囲まれている悪役令嬢も転生者で、何だか無神経発言ばかりで少しモヤモヤしていしまうマーヤ。そんな中、マーヤはゲームには関係ない隣国の公爵令息と仲良くなり……!? 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...