精霊使いと冠位の10人

いなお

文字の大きさ
9 / 51

神草埜々2

しおりを挟む
埜々は人目を気にせず、それはもう全力疾走であった。
魔術省は日本にある東京、大阪、名古屋、鹿児島、北海道の5つの都市にそれぞれ拠点を置き、本部は東京に置かれている。
埜々は名古屋の支部に在籍している扱いとなっている。
名古屋支部はセントラルタワーとは反対方面の都心とは離れた位置にある。
埜々の通う高校からは5キロほど離れた場所であり、それを埜々は15分程度で支部の入り口までたどり着いた。
彼女がフルマラソンに挑戦したらどんなタイムを出してくれるのだろうか。
しかし無論純粋な体力というわけでなく、魔術における補助を使用している。

「10分前に、つけたあ」

埜々ははぁ、はぁ、と息を切らしながら支部の入り口を跨ぐ。
そして正面ゲートを通過し急いでエレベーターに乗った。
エレベーターに乗っている最中、埜々はエレベーター内に取り付けてある鏡を使い、服装や髪の毛を整え、よしと頷いたと同時にエレベーターの扉が開いた。
埜々は目的地である会議室を目指し歩き始めた。
会議室の前でごくんと唾を飲んでから一呼吸置き、失礼しますと言い会議室の扉を開けた。
部屋の中にいたのは深い青色の髪を肩に下げた幼げな150㎝くらいの少女が席に座っていた。
少女の視線は入ってきた埜々を映していた。
その視線に緊張している埜々に幼げな少女は言った。

「やっほー埜々ちゃん来たね来たね。とりあえずそっち座りなよ。あとお菓子あるけど食べる?それともお茶のがいい?」
「あ、出来たらお茶が...」
「埜々ちゃんいつもこの部屋入ると緊張してるよねー、はいお茶」

少女は笑いながら、埜々にお茶を淹れて渡した。
 
「ありがとうございます。遠藤さん」
「うーん、由美子でいいって言ってるのになー。埜々ちゃんって結構頑固だよね」
「いや流石にそういうわけにはいかないですよ」

少女の名は遠藤 由美子。
名古屋支部の責任者であり、この都市を守る最終防衛ラインが彼女だ。
署長クラスの人間は基礎属性である火、水、風、土、雷のいずれかを極めたもの達であり、冠位の10人(グランドマスター)達と同等だと言われている。
由美子は基礎属性の中の水属性を極めた者であり、   一人で1000体の魔獣を討ち取った記録が残っている。
冠位の10人(グランドマスター)の地位は独立していて、本部、各支部への所属はしなくてもいいのだが、埜々は高校生ということもあり名古屋支部に属している。

「わざわざ来てもらっちゃってごめんねー。 アイドル業とか学業とかも大変なのに。あとそういえばこの前出た埜々ちゃんのCD買ったよ。あれいい曲だねー」
「えっと、ありがとうございます」

とにかく遠藤由美子という人物はよく喋るのだ。
ただ誰にでもというわけではない。気に入った人や興味のある人にだけにはこのようになる。
埜々はどちらかといえば前者だろう。

「そうそう、今日来てもらった理由ね。最近街の中に

魔獣が結構入ってきてるって話は聞いてるかな?」

「はい。一応噂程度ですけど一耳には入ってます」
「そう?なら話は早いんだけど今からに一度支部内で私も含めてだけど、強い子たち集めて結界の境界付近の魔獣を一掃してこようと思うんだよ。それで中心部の警備に不安が残っちゃうから埜々ちゃんに見回りを少しお願いしたいなーって話」

ああ、一掃する側では無いのかと少し埜々は落胆した。
埜々はスケジュールを確認するために携帯をとりだして予定を確認し、空いていることを確かめてから「はい」と由美子の依頼を了承した。

「じゃあ、早速行ってくるから警備の方はまかせたよん」

由美子はそう言って部屋を出て行った。
埜々もじゃあ準備してこようかなと呟き会議室を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

婚約者は無神経な転生悪役令嬢に夢中のようです

宝月 蓮
恋愛
乙女ゲームのモブに転生したマーヤ。目の前にいる婚約者はそのゲームの攻略対象だった。しかし婚約者は悪役令嬢に救われたようで、マーヤそっちのけで悪役令嬢に夢中。おまけに攻略対象達に囲まれている悪役令嬢も転生者で、何だか無神経発言ばかりで少しモヤモヤしていしまうマーヤ。そんな中、マーヤはゲームには関係ない隣国の公爵令息と仲良くなり……!? 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...