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第2章 夫の裏切りと離婚の決意
2-2冷たさの奥にあるもの
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2-2冷たさの奥にあるもの
ある日の朝。ジェニファーはいつものように早起きし、メイドの手を借りて身なりを整えたあと、公爵家の館の執務室に向かった。
彼女は公爵夫人として館の運営管理に関わっており、使用人への給金や備品の購入予算などをマーサや執事らとともに確認し、必要な決裁を行うのが日課になっていた。
ジェニファーが執務机に向かい書類に目を通していると、控えめなノックの音が聞こえる。
「失礼いたします、ジェニファー様」
マーサが姿を現し、深々と一礼した。彼女は公爵家の家令長として仕え、実質的には館の使用人を統率する立場にある。ジェニファーが夫人として着任して以来、最も頼りになる補佐役だった。
「おはようございます、マーサ。何か進捗はいかがですか?」
「はい。本日の夕刻に、殿下がお帰りになる予定だと連絡がございました。少し長めにいらっしゃるかもしれませんわ」
ジェニファーは一瞬、驚いた。最近のエドワードはほとんど家に帰ってこないことが多く、用があっても滞在時間は短かった。
「夕刻……わかりました。何かお迎えの準備をした方がよろしいでしょうか」
「そうですね。殿下は今夜、館にお客様を招く予定とのことです。詳細はまだ把握しておりませんが、なんでも“お食事会”になるようで……」
ジェニファーはマーサの言葉に、一抹の不安を覚える。なぜならエドワードが催す会合のほとんどには、政治的・社交的な意図があり、それに伴って面倒なやり取りが発生するからだ。特に、エドワードが可愛がっていると噂される愛人の存在――伯爵令嬢ローザ――が絡んでくる場合は、ジェニファーの立場がさらに複雑になる。
しかし、今さら尻込みしても仕方がない。ジェニファーは椅子から立ち上がり、背筋を伸ばしてマーサに向き直った。
「わかりました。食事会の準備は私も手伝います。シェフや給仕たちと打ち合わせをして、失礼のないようにしましょう」
「かしこまりました。ご用命があれば何でも申し付けくださいませ」
そう言って、マーサはジェニファーに一礼し、そっと部屋を出ていく。
エドワードが“誰”を連れてくるのかはまだ定かではないが、彼の社交関係を考えれば、かなりの高位貴族か、あるいは王宮の重臣である可能性が高い。ジェニファーは少し気を引き締めた。公爵夫人としての顔を完璧に装って、そつなく振る舞わなければならない。
朝のうちに資料をざっと確認し終えたあと、ジェニファーは館の調理場へ向かい、料理長や給仕長とメニューの相談を始めた。エドワードの急な指示にも対応できるよう、数種類の料理案を用意しておく。ワインのチョイスやテーブル装飾の花の種類、楽師の手配なども念入りに打ち合わせる。
こうした細々とした作業は、貴婦人として退屈かもしれないが、ジェニファーはむしろこれらの「実務」にやりがいを見いだしていた。領地経営や館の管理は、やればやるほど自分の知識やスキルが活かされ、結果としてクラレンス家の名誉と利益に繋がる。それは少なくとも、“ただの飾り物”として見られたくないジェニファーにとって、小さくとも力を得られる場だったからだ。
ある日の朝。ジェニファーはいつものように早起きし、メイドの手を借りて身なりを整えたあと、公爵家の館の執務室に向かった。
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「そうですね。殿下は今夜、館にお客様を招く予定とのことです。詳細はまだ把握しておりませんが、なんでも“お食事会”になるようで……」
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しかし、今さら尻込みしても仕方がない。ジェニファーは椅子から立ち上がり、背筋を伸ばしてマーサに向き直った。
「わかりました。食事会の準備は私も手伝います。シェフや給仕たちと打ち合わせをして、失礼のないようにしましょう」
「かしこまりました。ご用命があれば何でも申し付けくださいませ」
そう言って、マーサはジェニファーに一礼し、そっと部屋を出ていく。
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