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第3章 新たな運命の扉
3-1.離宮での日々
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1.離宮での日々
王都の外れに位置する離宮は、本来は外国の王族や貴賓を迎えるために用意された施設であり、常時はほとんど使われていない。そこに滞在を許されたジェニファー・ランカスターは、最低限の使用人とメイドを伴って、新たな生活を送っていた。
とはいえ、それは“公爵夫人”という立場がまだ表向きには続いているからこそ許されている措置でもあった。正式に離婚が成立してしまえば、ここに居続けるのは難しいだろう。
離宮の部屋は、必要最低限の調度品しか置かれていない簡素な作りだが、ジェニファーにとってはむしろ静かで過ごしやすい。もうあのクラレンス公爵家の華美な館にいる時のような、息苦しさを感じることはない。
朝早く起きて窓辺に立つと、広大な庭園とその先に広がる森の緑が目に入る。大気は澄んでいて、肌を撫でる風が心地よい。クラレンス家の館にいた頃は、いつも夜会や来客対応、あるいはエドワードや義母の目を気にしてばかりで、こんなふうにゆったりと自然を眺めることすらままならなかった。
(これが自由……たとえ一時的なものだとしても、今は大切にしたい)
ジェニファーは深呼吸しながら心を落ち着け、机に向かう。そこには彼女自身が書き溜めた書類やメモが積まれていた。離婚の手続きや、財産の分配の見込み、エドワード側との条件闘争でどういった展開が想定されるか――そういったことをひとつひとつ整理し、必要に応じて法律に詳しい人物の意見を仰ぐ準備を進めている。
まだ王国内でも女性が自ら離婚を望むのは珍しいことで、特に王弟であるエドワードとの離婚は、政治的にも極めて難しい。国王や公爵家の反発は免れないし、ランカスター家の父も激怒するに違いない。
それでもジェニファーがこうして準備を進めていられるのは、心身の安定を得られる離宮という“隠れ家”があるからこそだった。皮肉にも、エドワードが彼女に干渉しないと決めているため、ジェニファーはここで静かに行動を整えることができる。
メイドのクリスティーナが朝食を運んできてくれたので、ジェニファーは軽く礼を述べる。
「ありがとうございます。パンとスープ……今日も質素な食事だけど、すごく助かるわ」
「いえ、こちらこそ。ジェニファー様が不自由なく過ごせるよう、せめてお食事だけでも工夫したいのですが……離宮の設備ではご用意できる品が限られてしまいます。申し訳ございません」
クリスティーナは申し訳なさそうに頭を下げる。だが、ジェニファーは優しい笑みを浮かべた。
「気にしないで。むしろ体に優しいわ。公爵家の時はいつも豪華すぎて、胃が疲れてしまっていたもの」
そう言って微笑むと、クリスティーナはほっとした様子で「あたたかいスープだけはしっかり召し上がってくださいね」と言い残し、部屋を出ていった。
テーブルについてスープの湯気を眺めていると、ふと頭の中に過去の華やかな晩餐会の光景が浮かんできた。そこにはいつもエドワードとローザがいた。
――もう思い出したくない。
ジェニファーは小さく息を吐き、思考を振り払うようにスプーンを口に運んだ。
王都の外れに位置する離宮は、本来は外国の王族や貴賓を迎えるために用意された施設であり、常時はほとんど使われていない。そこに滞在を許されたジェニファー・ランカスターは、最低限の使用人とメイドを伴って、新たな生活を送っていた。
とはいえ、それは“公爵夫人”という立場がまだ表向きには続いているからこそ許されている措置でもあった。正式に離婚が成立してしまえば、ここに居続けるのは難しいだろう。
離宮の部屋は、必要最低限の調度品しか置かれていない簡素な作りだが、ジェニファーにとってはむしろ静かで過ごしやすい。もうあのクラレンス公爵家の華美な館にいる時のような、息苦しさを感じることはない。
朝早く起きて窓辺に立つと、広大な庭園とその先に広がる森の緑が目に入る。大気は澄んでいて、肌を撫でる風が心地よい。クラレンス家の館にいた頃は、いつも夜会や来客対応、あるいはエドワードや義母の目を気にしてばかりで、こんなふうにゆったりと自然を眺めることすらままならなかった。
(これが自由……たとえ一時的なものだとしても、今は大切にしたい)
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それでもジェニファーがこうして準備を進めていられるのは、心身の安定を得られる離宮という“隠れ家”があるからこそだった。皮肉にも、エドワードが彼女に干渉しないと決めているため、ジェニファーはここで静かに行動を整えることができる。
メイドのクリスティーナが朝食を運んできてくれたので、ジェニファーは軽く礼を述べる。
「ありがとうございます。パンとスープ……今日も質素な食事だけど、すごく助かるわ」
「いえ、こちらこそ。ジェニファー様が不自由なく過ごせるよう、せめてお食事だけでも工夫したいのですが……離宮の設備ではご用意できる品が限られてしまいます。申し訳ございません」
クリスティーナは申し訳なさそうに頭を下げる。だが、ジェニファーは優しい笑みを浮かべた。
「気にしないで。むしろ体に優しいわ。公爵家の時はいつも豪華すぎて、胃が疲れてしまっていたもの」
そう言って微笑むと、クリスティーナはほっとした様子で「あたたかいスープだけはしっかり召し上がってくださいね」と言い残し、部屋を出ていった。
テーブルについてスープの湯気を眺めていると、ふと頭の中に過去の華やかな晩餐会の光景が浮かんできた。そこにはいつもエドワードとローザがいた。
――もう思い出したくない。
ジェニファーは小さく息を吐き、思考を振り払うようにスプーンを口に運んだ。
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