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第4章 元夫の後悔と幸せな再婚
4-2.ローザ伯爵令嬢の企み
4-2.ローザ伯爵令嬢の企み
一方、その頃クラレンス公爵家では、ある問題が深刻化していた。
エドワードが愛人として寵愛してきたローザ・フィッツジェラルド伯爵令嬢の“投資”が、どうやら大きな損失を招きつつあるというのだ。ローザの遠縁が経営する商会へ多額の資金を投入し、王宮のコネを利用して事業を拡大しようと目論んだまでは良かった。しかし、実際に商会の経営はうまくいかず、赤字が膨らんでいるとの噂が絶えない。
マーサから密かに届いた手紙にも「ローザ嬢が更なる投資をエドワード殿下に求めている。馬車や宝石を買い漁り、贅沢三昧な暮らしをしている様子が目立つ。公爵家の財産が危うい」と書かれていた。
当然ながら、エドワードは激怒した。ローザが「絶対に儲かる」「元手を回収できる」と大言壮語していたのに、実態はその逆。自分の信用で資金を工面したことが無駄になるだけでなく、公爵家の名誉に傷がつく恐れもある。
「ローザ、これはどういうことだ。こんな大損をいつまで放置するつもりだ」
公爵家の奥深い部屋で、エドワードが苛立ちをぶつける。
「……それは仕方ないのよ。事業というのは波があるものだわ。もう少し待てば、きっと取り戻せる」
「もう少し待てだと? これ以上の資金投入は危険すぎる。あの商会に本当に将来性があるのか」
ローザは口紅を引き直しながら、あっけらかんとした態度を崩さない。
「大丈夫よ。あなたは王弟でしょう? 国王陛下から特別な許可さえ得れば、融資の期限を延ばすことだって……」
「勝手なことを言うな! 王宮がこんな不透明な取引を支援するわけがない。……そもそも、君は金の使い道を知っているのか? 宝石やドレスばかり増えているように見えるが」
「まあ、女には女の楽しみがあるでしょう? それが不満なら、ジェニファーみたいな地味でつまらない女を抱えて生きていれば良かったのに」
その一言に、エドワードは思わず言葉を失う。ジェニファーの名が出ると、なぜか胸の奥が痛むような感覚があった。
――そういえば、ジェニファーは浪費など一度もしたことがなかった。公爵家の予算管理や使用人の給金についてもしっかりと目を通し、余計な出費は極力抑えようとしていた。社交界のドレスにしても、派手すぎる装飾品は控え、必要最小限の範囲で着飾っていたのだ。
その地味さが、当時のエドワードには物足りなく感じられたのかもしれない。しかし、今こうしてローザのわがままぶりを目の当たりにすると、ジェニファーの“堅実さ”がどれほど貴重だったかを思い知る。
「……そ、それは……」
「なによ、珍しく黙っているわね。もしかして後悔しているの? あんな地味な妻を冷遇したことを」
「……そんなことはない」
エドワードは否定するものの、その声には力がなかった。ローザが妖艶な笑みを浮かべ、エドワードの胸元に手をやる。
「大丈夫よ。私はあなたを退屈させたりしないわ。……ただし、そのためには資金が必要なの。ねえ、わかるでしょ?」
「……」
そう囁くローザに、エドワードは苛立ちを募らせながらも何も言い返せない。恋人というよりも金蔓のように扱われているのを、さすがの彼も薄々感じ始めていた。
(このままでは公爵家が食いつぶされるかもしれない……。だが、ジェニファーとの離婚を巡る財産問題もあるし……一体どうすれば……)
頭を抱えるエドワードの姿を、ローザはどこか冷めた目で眺めていた。
一方、その頃クラレンス公爵家では、ある問題が深刻化していた。
エドワードが愛人として寵愛してきたローザ・フィッツジェラルド伯爵令嬢の“投資”が、どうやら大きな損失を招きつつあるというのだ。ローザの遠縁が経営する商会へ多額の資金を投入し、王宮のコネを利用して事業を拡大しようと目論んだまでは良かった。しかし、実際に商会の経営はうまくいかず、赤字が膨らんでいるとの噂が絶えない。
マーサから密かに届いた手紙にも「ローザ嬢が更なる投資をエドワード殿下に求めている。馬車や宝石を買い漁り、贅沢三昧な暮らしをしている様子が目立つ。公爵家の財産が危うい」と書かれていた。
当然ながら、エドワードは激怒した。ローザが「絶対に儲かる」「元手を回収できる」と大言壮語していたのに、実態はその逆。自分の信用で資金を工面したことが無駄になるだけでなく、公爵家の名誉に傷がつく恐れもある。
「ローザ、これはどういうことだ。こんな大損をいつまで放置するつもりだ」
公爵家の奥深い部屋で、エドワードが苛立ちをぶつける。
「……それは仕方ないのよ。事業というのは波があるものだわ。もう少し待てば、きっと取り戻せる」
「もう少し待てだと? これ以上の資金投入は危険すぎる。あの商会に本当に将来性があるのか」
ローザは口紅を引き直しながら、あっけらかんとした態度を崩さない。
「大丈夫よ。あなたは王弟でしょう? 国王陛下から特別な許可さえ得れば、融資の期限を延ばすことだって……」
「勝手なことを言うな! 王宮がこんな不透明な取引を支援するわけがない。……そもそも、君は金の使い道を知っているのか? 宝石やドレスばかり増えているように見えるが」
「まあ、女には女の楽しみがあるでしょう? それが不満なら、ジェニファーみたいな地味でつまらない女を抱えて生きていれば良かったのに」
その一言に、エドワードは思わず言葉を失う。ジェニファーの名が出ると、なぜか胸の奥が痛むような感覚があった。
――そういえば、ジェニファーは浪費など一度もしたことがなかった。公爵家の予算管理や使用人の給金についてもしっかりと目を通し、余計な出費は極力抑えようとしていた。社交界のドレスにしても、派手すぎる装飾品は控え、必要最小限の範囲で着飾っていたのだ。
その地味さが、当時のエドワードには物足りなく感じられたのかもしれない。しかし、今こうしてローザのわがままぶりを目の当たりにすると、ジェニファーの“堅実さ”がどれほど貴重だったかを思い知る。
「……そ、それは……」
「なによ、珍しく黙っているわね。もしかして後悔しているの? あんな地味な妻を冷遇したことを」
「……そんなことはない」
エドワードは否定するものの、その声には力がなかった。ローザが妖艶な笑みを浮かべ、エドワードの胸元に手をやる。
「大丈夫よ。私はあなたを退屈させたりしないわ。……ただし、そのためには資金が必要なの。ねえ、わかるでしょ?」
「……」
そう囁くローザに、エドワードは苛立ちを募らせながらも何も言い返せない。恋人というよりも金蔓のように扱われているのを、さすがの彼も薄々感じ始めていた。
(このままでは公爵家が食いつぶされるかもしれない……。だが、ジェニファーとの離婚を巡る財産問題もあるし……一体どうすれば……)
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