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第1章 政略結婚の
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しおりを挟む曇りひとつない青空が、まるでこの日の輝かしさを示すかのように広がっている。けれども、ジェニファー・ランカスターは窓辺の奥から差し込む陽光をどこか冷えた眼差しで見つめていた。今日は彼女にとって一生に一度の晴れ舞台、すなわち結婚式の日である。本来なら胸が高鳴り、期待でいっぱいになるはずのこの日が、彼女にはまるで自分の人生の終焉を告げるような暗い幕開けに感じられてならない。
ジェニファーの着る純白のドレスは、王都で一流の仕立屋が丹精を込めて作り上げたものだった。豪奢なレースが惜しみなく使われ、胸元や袖口を彩る小さな刺繍は、まるで花のように繊細で美しい。彼女の長い栗色の髪はきっちりとまとめられ、煌びやかなティアラがその上で光を放っている。
――まさか、自分の結婚の日にこれほど虚しい気持ちを抱えることになるなんて。
ジェニファーはそっと目を伏せた。形ばかりの笑みを浮かべるように調整された唇が、少しだけ震える。彼女はまだ十九歳の若さで、貴族社会でも絶世の美女として名を馳せていた。背は高すぎず低すぎず、上品な佇まいは幼少期からの厳しい教育の賜物だ。切れ長の青い瞳には聡明さが宿り、柔らかな笑顔は誰からも好かれていた。
しかし、この結婚は誰のためのものなのか。少なくとも、自分の幸せを考えた上でのものではない。それだけははっきりしている。
ジェニファーの背後で、小間使いのメイドが細心の注意を払いながらドレスの裾を整えている。仕上げにヴェールをかけられたとき、ジェニファーは不意に自分がまるで籠の中の鳥か、あるいは繭の中の蝶かのように感じた。まだ羽化していない、自由になれない存在。それがあまりにも息苦しく、悲しかった。
結婚式の相手は、王弟たるエドワード・クラレンス公爵。現国王の弟であり、王家の血を引く名門中の名門。クラレンス家は長くこの王国の繁栄を支え、公爵の称号を戴いている。エドワード自身は二十六歳。涼しげな灰色の瞳ときりりとした顔立ちを持ち、その端正な容姿で社交界の女性たちを虜にしていた人物でもある。
――そして、噂では彼には既に愛人がいるという。
もちろん公にはされていないが、貴族社会は噂好きだ。ジェニファーの耳にも、エドワードと伯爵令嬢ローザの関係はなんとなく伝わってきていた。だが、ジェニファーはそのことを直接確かめるすべもなかったし、確かめる意味もないように思えた。どうせこの結婚は形ばかりの「白い結婚」なのだから。
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