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第1章 政略結婚の
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白い結婚――夫婦としての営みを持たない、ただ政治的・形式的な価値のみが重要視される結婚のことだ。その背後には複雑な思惑と力関係がある。ランカスター家は古くから王家に仕えてきた名門だったものの、財政状況が傾きつつあった。ジェニファーの父であるグレゴリー・ランカスター公は、王家により深く取り入ることで家の地位と権力を保ちたかった。
一方、エドワードのほうは、実兄である国王から公爵領の自治を任されているが、その立場を盤石なものにするために、古参貴族であるランカスター家との縁組を求めた。これにより、従来からの重鎮貴族派閥の支持を得られる。双方にメリットはあるが、当のジェニファーとエドワードは“駒”に過ぎないのだ。
ジェニファーには、思うところがあった。それでも、こうして家のために結婚をすることが自分の務めなのだと幼い頃から教えられてきたのも事実だ。もし自分が拒否すれば、ランカスター家は王宮での影響力を大きく失い、落ちぶれていくかもしれない。父も母も、血の滲むような努力を重ねてこの縁談をまとめあげた。
――それを知りながら、ジェニファーは何も言えない。
花嫁支度を終えたジェニファーを見て、付き添いのメイドたちが感嘆の声を漏らす。
「まあ、なんて美しいのでしょう。まさに白百合のよう……」
「これほどまでに似合うドレスは他にないでしょうね」
明るい言葉で盛り上げようとするメイドたちに対して、ジェニファーは微笑みを作りながらうなずいた。自分の心を隠すのは、貴族令嬢としてのたしなみ。泣きそうなほど苦しい思いがあっても、決して涙は見せない。
「ありがとう。皆のおかげで素敵な花嫁になれたわ」
彼女はそう言ったものの、その声は少しだけ震えていた。
やがて、宮廷教会から式の準備が整ったという知らせが届く。メイドたちがジェニファーをうやうやしく先導し、儀式の始まる広間へと向かった。
宮廷教会は大聖堂のように荘厳で、ステンドグラスの窓から鮮やかな光が差し込んでいる。列席者としては王家や高位貴族ばかりが集まっており、その華麗さはまるで異世界のようだった。
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