形式だけの妻でしたが、公爵様に溺愛されながら領地再建しますわ

鍛高譚

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4−3 星降る夜のささやき

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4-3 星降る夜のささやき


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盗賊団の脅威を退けたあと、クラリティとガルフストリームの心の距離は、少しずつ、けれど確実に近づいていた。
領地巡りの旅は終盤。次に滞在する町が、二人の関係に思いがけない転機をもたらすことになるとは、この時まだ誰も知らなかった。


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◆孤独な夜を分け合うように

その夜。
滞在先の静かな館で、クラリティは読んでいた本を閉じ、ふと外の空気が恋しくなった。
ひんやりとした宵の風に誘われるまま、庭の石畳に出て星空を仰ぎ見る。

「一人で星を眺めるとは、珍しいな。」

背後からかけられた声に振り返ると、ガルフストリームが月明かりの中に立っていた。
鎧も脱ぎ、どこか疲れの抜けた柔らかな表情をしている。

「あなたこそ、こんな時間に。」

「眠れなくてな。……考えることが多くて。」

彼はクラリティの隣に腰を下ろし、自然と距離の近い位置に座った。
互いの肩に触れるか触れないか、そんな微妙な間合い。
沈黙は不思議と心地よく、星明かりがふたりを静かに照らした。

「こうして星を見るのは……久しぶりです。」
クラリティの声は囁くように柔らかかった。

「私もだ。君が隣にいるから、余計に落ち着くのかもしれない。」

ガルフストリームが視線を向ける。
その横顔は、冷徹な公爵ではなく、一人の男性のものに見えた。


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◆封じた過去

しばらく星空を眺めたあと、彼はぽつりと語り始めた。

「領地を継いだ頃は……地獄だった。」

淡々とした声に隠された痛み。
クラリティは彼の横顔を見つめた。

「莫大な借金、荒れた領地、離れていく家臣たち。
あの頃の私は……感情を出す余裕などなかった。
冷たく、無表情でいるしか……生き残れなかった。」

その言葉に、クラリティはそっと手を胸に置いた。
冷酷に見えた態度が、実は鎧のようなものだったと気づく。

「あなたがそこまで……。」

「だから君が笑いかけてくれた時、どう返せばいいのかわからなかったんだ。」

ガルフストリームは小さく息を吐いた。

「けれど、最近は違う。
君と話すと……心が軽くなる。」

その言葉は夜空より静かで、星よりも温かかった。


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◆クラリティの告白

「……私も一つ、お話ししても良いでしょうか?」

クラリティが小さく問いかけると、彼は真剣に頷いた。

「私……自分があなたの隣にふさわしいのか、ずっと不安でした。
公爵夫人としての器も、あなたを支える力も……足りないのではと。」

その告白に、ガルフストリームは目を見開く。

「君が……そんなことを?」

「私は、あなたに必要とされているのか……ずっと、わからなかったのです。」

夜の静寂を破るように、彼は即座に言った。

「必要だ。」

その声は迷いがなく、クラリティの心に真っ直ぐ届いた。

「盗賊団の件で確信した。
君がいてくれるだけで、私はどれほど救われたか……君は想像もしていないだろう。」

クラリティの胸の奥がじんと温かくなる。

「……そんなふうに言っていただけるなんて……。」

「本心だ。」
ガルフストリームは淡く微笑んだ。


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◆触れた手の温度

やがて風が強くなり、クラリティの肩が小さく震えた。
それに気づいた彼は、迷いなく立ち上がり、手を差し伸べた。

「戻ろう。君が風邪でも引いたら困る。」

その手は、いつも通り大きく、しかし驚くほど優しいぬくもりを帯びていた。

クラリティはそっと手を重ねる。
ほんの少し触れただけなのに、胸の奥が甘く痺れるようだった。

「……ありがとうございます。」

「礼を言うのは私の方だ。
君と話せてよかった。」

館に戻るまでの短い道のり、二人の手は自然と離れることはなかった。


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◆二人の心が向いた先

深夜、クラリティは自室で胸に手を当てた。
あの温もりと優しい言葉が頭から離れない。

「私……この人を支えたい。」

その思いは、すでに義務ではなく、心からの願いだった。

同じ頃、ガルフストリームもまた灯りの消えた部屋でひとり呟く。

「……あの人となら。」

どれほど困難な未来が訪れようとも、二人なら乗り越えられる。
そんな確信が、静かに心の奥で芽生えていた。

形式的な夫婦は――
この夜を境に、本当の意味で歩み寄り始めるのだった。

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