形式だけの妻でしたが、公爵様に溺愛されながら領地再建しますわ

鍛高譚

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5-4 永遠を誓う夜 ─正式な夫婦へ─

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5-4 永遠を誓う夜 ─正式な夫婦へ─

公爵領の復興は順調に進み、クラリティとガルフストリームは新たな課題に向けて歩みを揃えつつあった。
しかし――形式だけの夫婦から、本物の夫婦へと変わるには、あと一歩だけ、踏み越えるべき境界があった。

その境界を超えるきっかけは、思わぬ形で訪れる。


---

特別な招待状

ある朝、ガルフストリームの執務室に、隣接領地の侯爵家からの豪奢な招待状が届けられた。
侯爵家令嬢の婚約披露宴――領主たちが集う、半ば政治の舞台だ。

「行くべきなのだろうな」
ガルフストリームの声には、珍しく迷いが差していた。

「もちろんですわ」
クラリティは柔らかく微笑んだ。
「公爵家の立場を示す絶好の機会ですもの」

しかし、彼はゆっくりと首を振る。

「君を快く思わぬ者もまだいる。…危険に巻き込まれる可能性がある」

クラリティは驚いたが、すぐに静かに彼の瞳を見つめ返す。

「どんな場所であっても、私はあなたの隣に立ちますわ。――公爵夫人として」

その強い言葉に、ガルフストリームはふっと息をゆるめた。

「……ならば、共に行こう。もし何かあれば、命をかけてでも守る」

「ええ。私も、あなたを支えます」

二人の視線が重なった瞬間、形式的だったはずの関係に、確かな温度が灯った。


---

婚約披露宴の舞台

披露宴は侯爵家の壮麗な城館で開かれた。
宝石のような光が溢れる会場に、領主たちの視線が一斉に注がれた先――

そこには、蒼のドレスをまとい、自信に満ちたクラリティの姿があった。

「……皆、見惚れているな」
ガルフストリームが囁き、クラリティは頬を染める。

「いえ、そんな……」

「本当だ。君がいるだけで、この場が引き締まる」

その言葉に背筋を伸ばしながら、クラリティは夫の腕にそっと手を添えた。

次々に貴族たちが声を掛けてくる。
その内容は、もはやクラリティを軽んじるものではなく――

「公爵領の復興、見事でしたな」
「クラリティ様のお噂は、こちらにも届いております」

賞賛と敬意がほとんどだった。

かつて“形だけの夫人”と言われた彼女は、今や誰もが認める“公爵夫人”へと変わっていた。


---

忍び寄る影

華やかな宴の裏で、陰は密かに動いていた。

クラリティが星空を眺めにバルコニーへ出た時、不審な足音が静かに近づく。

「奥様…お話が」

侯爵家の使用人を装った男が、包みを差し出してきた。
だが、その目には明らかな悪意が宿っていた。

「その包みは何かしら?」
クラリティは一歩も引かず問いかける。

男は答えず、無理に押しつけようとした――瞬間。

「そこで何をしている!」

鋭い声が闇を裂いた。

ガルフストリームが素早くクラリティの前に立ちふさがった。

「奥方に指一本触れさせぬ」

その怒気に満ちた声音に、不審な男は怯え逃げ出す。
騎士たちがすぐさま後を追った。

クラリティが無事なことを確認すると、ガルフストリームは震える彼女の手を包み込む。

「……君に危険が迫るなど、絶対に許さない」

「大丈夫です。あなたが必ず来てくださるって、分かっていましたから」

その一言に、彼の表情が驚きに揺れ、そして穏やかな笑みが生まれた。

「君は……本当に強いな」

二人の距離は、もう誰にも邪魔できないほど近くなっていた。


---

永遠の誓い

披露宴の帰り道、月光のもとでガルフストリームはそっと言葉を紡いだ。

「クラリティ。君と出会ってから、私は変わった。
君が隣にいるだけで、私は前へ進める。
……どうか、これからも私の隣にいてくれ」

クラリティは迷いなく微笑む。

「私は、あなたと歩む未来しか望みませんわ」

その答えに、彼は彼女を優しく抱き寄せた。

月光が二人を包み込み、形式だけだった壁は完全に消えた。
今ここにいるのは――
ただ互いを選び合った、一人の男と女であった。


---

新たな幕開け

翌朝。
陽光差し込む執務室で、ガルフストリームは新たな地図を広げていた。
隣にはクラリティ。瞳には昨日よりも強い光が宿る。

「ここからが、本当の始まりですわね」

「――ああ。我らの手で、この領地に永遠の繁栄を」

二人はしっかりと手を取り合った。

かつて形式上の夫婦だった二人は、
今や“領地を導く真の公爵夫妻”として、揺るぎない絆で結ばれたのだった。

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