SP24歳 女子高生始めました。

鍛高譚

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第15話  生徒会選挙

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 春の暖かな風が吹き抜ける午後、校内掲示板の前には人だかりができていた。



「生徒会選挙、ですって」



 紙をじっと見つめながら、倉子は眉をひそめる。



「先輩、うちらには関係ないっすよね?ね?」



「当然。関係あるわけがない」



 と、その直後だった。



「お二人にお願いがあります!」



 そう言って駆け寄ってきたのは、警護対象であるお嬢様――澪だった。



「今回、生徒会長に立候補することにしました。でも、私一人では不安で……どうか、副会長として力を貸していただけませんか?」



「却下です」



「秒で却下っす!」



 即答で断った倉子と真子だったが――



 その夜、教室内で突然担任に呼ばれる。



「服部さん、真田さん、生徒会副会長に推薦されています」



「は?」



「はああっ!?」



「澪お嬢様の他に、クラスメイト数名からの推薦も出ています。つまり、生徒推薦も重なって正式候補です」



「な、なにそれ!?」



「でも、まぁ、落選するでしょ。だって、うちらただのSPですし」



「そうそう、“女子高生に偽装してるだけの24歳”ですよ!?」



 しかし、予想は外れた。



 数日後。



「おい……誰だよ、校内新聞に“最も信頼できるお姉さん的存在”って載せたの……」



「“全学年からの女子人気No.1”って、どうなってんすか私たち……」



 二人は知らなかった。



 制服で毎日通学し、授業を真面目に受け、厳しい目で問題を見つけては率先して注意する――

 その姿はいつの間にか“理想の学園お姉さん像”として浸透していたのだ。



 結果――



 澪、会長当選。

 副会長・服部倉子、副会長補佐・真田真子。



 伝説の始まりである。



「……私たち、学園生活満喫してる場合じゃないのに」



「なんでこんなことになってんすか……」



「しかも、任務としては、これ“学園の運営まで手を出した”ことにならない?」



「これ、社の報告書にどう書けばいいんすか?」



 かくして、24歳の女子高生SPは、学園副会長へと進化してしまった。





---



【第15章-2:卒業生を送る会(の罠)】



 生徒会選挙が終わるや否や、新生徒会に課された最初の大任務は――卒業式後に行われる「卒業生を送る会」の企画と運営だった。



 新会長に就任した澪は、自信に満ちた笑顔で言い放った。 「副会長のお二人、こちらが昨年の構成案になります」



 そう言って渡された資料を開いた瞬間、倉子と真子の顔が一気に曇った。



「……会場設営、演出、照明、司会、進行、選曲、全部、生徒会……」



「先輩、これ……SPより疲れるやつっす……」



 だが、逃げるわけにはいかない。  放課後の生徒会室。三人で始めた最初の打ち合わせは、まず“歌”の選曲からだった。



「やっぱ、歌っすよね! 在校生から卒業生へ、合唱とかサプライズで……」  真子の元気な提案に、倉子が即座に反応する。



「“贈る言葉”とか?」



「いいっすね!」



「……やめろ。それ、私たちが生まれる前の歌だ」



「え?」



「イントロ流れた瞬間、“あ、この人たち親世代だ”ってなるのよ」



「名曲っすよ!? 心にしみる系!」



「しみすぎるのよ。昭和の空気までまとってくるわ」



 ふたりの間に沈黙が落ちる。



「最近の卒業ソングって……“さくら(独唱)”とか?」



「それも平成どまりよ……」



 資料を眺めながら、倉子は深いため息をついた。 「……歌の選曲は、クラスメイトに聞くべきだ。私らが選んだら、どうあがいても平成どまりになる」



「現実が厳しすぎるっす……」



「“旅立ちの日に”も思い出したけど、それも古いのよね……」



「……“卒業写真”とかどうすか?」  真子がぽつりと言った。



 倉子のツッコミがすぐに飛ぶ。 「昭和だ」



「えっ、でも……」



「気持ちは分かる。でも、“懐メロ枠”で感動されるのは、精神的にキツイ」



「……うちら、平成生まれのはずなのに、浮かんでくる曲が昭和ばかりっすね……」



「“乾杯”とか“思い出がいっぱい”とか流れ出したら、もう終わりよ……」



 二人は資料の上に突っ伏した。



「……生徒会じゃなくて、老舗ラジオ番組の選曲会議みたい……」



 その空気を打ち破ったのは、澪の明るい声だった。 「では、アンケートを取りましょう。全校生徒から選曲案を募って、上位の曲を中心に構成すれば、間違いありません」



「さすが澪お嬢様……」



「うん、全部任せたい……」



 こうして、生徒会としての初仕事は――想像以上に“精神を削る任務”であることを、彼女たちは知ることとなった。







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