SP24歳 女子高生始めました。

鍛高譚

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第16話 :卒業式と卒業生を送る会

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 三月。寒さの中にも、春の匂いが混ざりはじめた季節。



 校庭の桜はまだ蕾のままだが、校舎には卒業を祝う垂れ幕が掲げられ、厳かに、そしてどこか賑やかに卒業式の日はやってきた。



「それでは、在校生代表より、送辞を申し上げます」



 澪が壇上に立つと、体育館の空気が静まり返る。



 マイク越しの澪の声は、柔らかくも凛としていて、聴いている誰もが、彼女が“新生徒会長”であることを納得せざるを得なかった。



 その横には、副会長の倉子と補佐の真子が控えている。二人とも、式典用の制服を正しく着こなしているものの、内心では緊張と羞恥心と闘っていた。



(うわ……全校生徒の前で副会長席に座ってる……しかも、SPとしてじゃなくて、ガチ副会長……)



(なんで、こんなことになってるんすかね……)



 そう思いつつも、卒業式は滞りなく進行していった。



 そして、式が終わるとすぐに体育館が模様替えされ――午後からは、「卒業生を送る会」が始まった。



 照明が落ち、音響が切り替わる。



 生徒会主催の初イベント。



 司会は倉子と真子。最初の挨拶でマイクを持った瞬間から、観客の空気が変わった。



「え、副会長ってこの人だったの?」「なんか……アイドルかと思った」「っていうかメイドSPの人だよね!?」



 ざわつく会場。



「……先輩、注目されすぎっす……」 「いまさらでしょ……」



 プログラムは順調に進み、アンケートで選ばれた卒業ソングの合唱や、クラブ活動ごとのメッセージビデオなど、サプライズも満載だった。



 そのどれもが、生徒たちの手で丁寧に準備され、まっすぐな思いに満ちていた。



 そして、最後に卒業生代表がステージに立ち、涙ながらに言った。



「……この学校に、そして生徒会のみなさんに、心から感謝します」



 その言葉に、倉子と真子は無言で頷いた。



 普段は“制服SP”として潜入していることを忘れ、今だけは、一人の“学園の先輩”として――確かに、後輩たちと心を通わせた気がした。



 卒業生を送り出す拍手の中、二人はこっそりと顔を見合わせる。



「……悪くない、かもね」 「っすね」



 こうして、彼女たちの“初めての生徒会仕事”は、無事に幕を閉じたのだった。



【第16章-2:永遠の副会長はご勘弁】



 送る会が終わり、後片付けも一段落した頃。生徒会室で、倉子がふと漏らした。



「しかし、今さらなんすけど……なんで私ら、生徒会なんすか?」



「……選挙で選ばれたからだろう?」



「いやいや、そうじゃなくて……生徒会長とかって、普通は3年生がやるものじゃないんすか?」



 その問いに、澪がいつもの柔らかい笑みで説明を始めた。



「2年生が新3年生になると、受験に専念するため生徒会は引退するのです。ですので、基本的に“新2年生”が生徒会の中心になります」



「なる」



 倉子と真子は同時に、思わず天井を仰いだ。



「……じゃあ、私ら、あと1年……?」



 その空気を読まず、澪はさらりと言った。



「そういえば、お二人は受験するわけではないので……来年も継続して副会長をされますか?」



「いやいや、遠慮するわ」  倉子が即答した。



「“永遠の副会長”とか“伝説の生徒会SP”とか言われ始めたら、さすがに気まずいから」



「それ、マジで学園都市伝説になるっすよ……」



 そして二人は同時に、つぶやいた。



「せめて……今年で終わらせたい……」



 だが、そんな願いが通じるかどうかは──また別の話である。







SP、25歳、先輩はじめました。



 卒業式と送る会がようやく終わり、少しは落ち着けるかと思われた翌週――



 生徒会室で、澪が開口一番に言った。



「卒業式、卒業生を送る会が終わったばかりでなんですが……早速、新入生歓迎会の企画・運営の相談をしたいのですが」



 その言葉に、倉子と真子は机に突っ伏した。



「……意外に……ハードスケジュールっすね……」



「イベントの連投って、芸能人でも辛いやつよ……」



 そんなふたりをよそに、澪はにこやかに続ける。



「新入生には“先輩”として接することになりますし、皆さんの存在感はきっと心強いはずです」



「先輩、ね……」



「先輩になるのか……」



 倉子がぼそりとつぶやく。



 真子も続ける。



「やばいっす……SP、25歳、先輩はじめました……っす」



「いやぁぁぁぁっ!! 25歳、やばっ!!」



 ふたりは揃って頭を抱えた。



「新入生に“人生の相談”される年齢よ、これ……」



「むしろ進路指導室にいそうな雰囲気になってきてるっす…… 下手したら担任の人生相談も受けることになりそうっす……ありそうっす。あの先生だと……」と真子がうめいた。」



 澪だけが、まったく動じずに頷いた。



「それでも、皆さんがいてくださるだけで、新入生たちは安心できると思います」



「……もしかして澪お嬢様、内心めちゃくちゃ楽しんでる……?」



 かくして、まだ春休みにも入っていないうちから、新年度に向けての戦いが始まる。



 SP25歳、副会長、そして――“先輩”。



 新たな肩書きに、ふたりは震えるのであった。



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