16 / 43
第16話 :卒業式と卒業生を送る会
しおりを挟む
三月。寒さの中にも、春の匂いが混ざりはじめた季節。
校庭の桜はまだ蕾のままだが、校舎には卒業を祝う垂れ幕が掲げられ、厳かに、そしてどこか賑やかに卒業式の日はやってきた。
「それでは、在校生代表より、送辞を申し上げます」
澪が壇上に立つと、体育館の空気が静まり返る。
マイク越しの澪の声は、柔らかくも凛としていて、聴いている誰もが、彼女が“新生徒会長”であることを納得せざるを得なかった。
その横には、副会長の倉子と補佐の真子が控えている。二人とも、式典用の制服を正しく着こなしているものの、内心では緊張と羞恥心と闘っていた。
(うわ……全校生徒の前で副会長席に座ってる……しかも、SPとしてじゃなくて、ガチ副会長……)
(なんで、こんなことになってるんすかね……)
そう思いつつも、卒業式は滞りなく進行していった。
そして、式が終わるとすぐに体育館が模様替えされ――午後からは、「卒業生を送る会」が始まった。
照明が落ち、音響が切り替わる。
生徒会主催の初イベント。
司会は倉子と真子。最初の挨拶でマイクを持った瞬間から、観客の空気が変わった。
「え、副会長ってこの人だったの?」「なんか……アイドルかと思った」「っていうかメイドSPの人だよね!?」
ざわつく会場。
「……先輩、注目されすぎっす……」 「いまさらでしょ……」
プログラムは順調に進み、アンケートで選ばれた卒業ソングの合唱や、クラブ活動ごとのメッセージビデオなど、サプライズも満載だった。
そのどれもが、生徒たちの手で丁寧に準備され、まっすぐな思いに満ちていた。
そして、最後に卒業生代表がステージに立ち、涙ながらに言った。
「……この学校に、そして生徒会のみなさんに、心から感謝します」
その言葉に、倉子と真子は無言で頷いた。
普段は“制服SP”として潜入していることを忘れ、今だけは、一人の“学園の先輩”として――確かに、後輩たちと心を通わせた気がした。
卒業生を送り出す拍手の中、二人はこっそりと顔を見合わせる。
「……悪くない、かもね」 「っすね」
こうして、彼女たちの“初めての生徒会仕事”は、無事に幕を閉じたのだった。
【第16章-2:永遠の副会長はご勘弁】
送る会が終わり、後片付けも一段落した頃。生徒会室で、倉子がふと漏らした。
「しかし、今さらなんすけど……なんで私ら、生徒会なんすか?」
「……選挙で選ばれたからだろう?」
「いやいや、そうじゃなくて……生徒会長とかって、普通は3年生がやるものじゃないんすか?」
その問いに、澪がいつもの柔らかい笑みで説明を始めた。
「2年生が新3年生になると、受験に専念するため生徒会は引退するのです。ですので、基本的に“新2年生”が生徒会の中心になります」
「なる」
倉子と真子は同時に、思わず天井を仰いだ。
「……じゃあ、私ら、あと1年……?」
その空気を読まず、澪はさらりと言った。
「そういえば、お二人は受験するわけではないので……来年も継続して副会長をされますか?」
「いやいや、遠慮するわ」 倉子が即答した。
「“永遠の副会長”とか“伝説の生徒会SP”とか言われ始めたら、さすがに気まずいから」
「それ、マジで学園都市伝説になるっすよ……」
そして二人は同時に、つぶやいた。
「せめて……今年で終わらせたい……」
だが、そんな願いが通じるかどうかは──また別の話である。
SP、25歳、先輩はじめました。
卒業式と送る会がようやく終わり、少しは落ち着けるかと思われた翌週――
生徒会室で、澪が開口一番に言った。
「卒業式、卒業生を送る会が終わったばかりでなんですが……早速、新入生歓迎会の企画・運営の相談をしたいのですが」
その言葉に、倉子と真子は机に突っ伏した。
「……意外に……ハードスケジュールっすね……」
「イベントの連投って、芸能人でも辛いやつよ……」
そんなふたりをよそに、澪はにこやかに続ける。
「新入生には“先輩”として接することになりますし、皆さんの存在感はきっと心強いはずです」
「先輩、ね……」
「先輩になるのか……」
倉子がぼそりとつぶやく。
真子も続ける。
「やばいっす……SP、25歳、先輩はじめました……っす」
「いやぁぁぁぁっ!! 25歳、やばっ!!」
ふたりは揃って頭を抱えた。
「新入生に“人生の相談”される年齢よ、これ……」
「むしろ進路指導室にいそうな雰囲気になってきてるっす…… 下手したら担任の人生相談も受けることになりそうっす……ありそうっす。あの先生だと……」と真子がうめいた。」
澪だけが、まったく動じずに頷いた。
「それでも、皆さんがいてくださるだけで、新入生たちは安心できると思います」
「……もしかして澪お嬢様、内心めちゃくちゃ楽しんでる……?」
かくして、まだ春休みにも入っていないうちから、新年度に向けての戦いが始まる。
SP25歳、副会長、そして――“先輩”。
新たな肩書きに、ふたりは震えるのであった。
校庭の桜はまだ蕾のままだが、校舎には卒業を祝う垂れ幕が掲げられ、厳かに、そしてどこか賑やかに卒業式の日はやってきた。
「それでは、在校生代表より、送辞を申し上げます」
澪が壇上に立つと、体育館の空気が静まり返る。
マイク越しの澪の声は、柔らかくも凛としていて、聴いている誰もが、彼女が“新生徒会長”であることを納得せざるを得なかった。
その横には、副会長の倉子と補佐の真子が控えている。二人とも、式典用の制服を正しく着こなしているものの、内心では緊張と羞恥心と闘っていた。
(うわ……全校生徒の前で副会長席に座ってる……しかも、SPとしてじゃなくて、ガチ副会長……)
(なんで、こんなことになってるんすかね……)
そう思いつつも、卒業式は滞りなく進行していった。
そして、式が終わるとすぐに体育館が模様替えされ――午後からは、「卒業生を送る会」が始まった。
照明が落ち、音響が切り替わる。
生徒会主催の初イベント。
司会は倉子と真子。最初の挨拶でマイクを持った瞬間から、観客の空気が変わった。
「え、副会長ってこの人だったの?」「なんか……アイドルかと思った」「っていうかメイドSPの人だよね!?」
ざわつく会場。
「……先輩、注目されすぎっす……」 「いまさらでしょ……」
プログラムは順調に進み、アンケートで選ばれた卒業ソングの合唱や、クラブ活動ごとのメッセージビデオなど、サプライズも満載だった。
そのどれもが、生徒たちの手で丁寧に準備され、まっすぐな思いに満ちていた。
そして、最後に卒業生代表がステージに立ち、涙ながらに言った。
「……この学校に、そして生徒会のみなさんに、心から感謝します」
その言葉に、倉子と真子は無言で頷いた。
普段は“制服SP”として潜入していることを忘れ、今だけは、一人の“学園の先輩”として――確かに、後輩たちと心を通わせた気がした。
卒業生を送り出す拍手の中、二人はこっそりと顔を見合わせる。
「……悪くない、かもね」 「っすね」
こうして、彼女たちの“初めての生徒会仕事”は、無事に幕を閉じたのだった。
【第16章-2:永遠の副会長はご勘弁】
送る会が終わり、後片付けも一段落した頃。生徒会室で、倉子がふと漏らした。
「しかし、今さらなんすけど……なんで私ら、生徒会なんすか?」
「……選挙で選ばれたからだろう?」
「いやいや、そうじゃなくて……生徒会長とかって、普通は3年生がやるものじゃないんすか?」
その問いに、澪がいつもの柔らかい笑みで説明を始めた。
「2年生が新3年生になると、受験に専念するため生徒会は引退するのです。ですので、基本的に“新2年生”が生徒会の中心になります」
「なる」
倉子と真子は同時に、思わず天井を仰いだ。
「……じゃあ、私ら、あと1年……?」
その空気を読まず、澪はさらりと言った。
「そういえば、お二人は受験するわけではないので……来年も継続して副会長をされますか?」
「いやいや、遠慮するわ」 倉子が即答した。
「“永遠の副会長”とか“伝説の生徒会SP”とか言われ始めたら、さすがに気まずいから」
「それ、マジで学園都市伝説になるっすよ……」
そして二人は同時に、つぶやいた。
「せめて……今年で終わらせたい……」
だが、そんな願いが通じるかどうかは──また別の話である。
SP、25歳、先輩はじめました。
卒業式と送る会がようやく終わり、少しは落ち着けるかと思われた翌週――
生徒会室で、澪が開口一番に言った。
「卒業式、卒業生を送る会が終わったばかりでなんですが……早速、新入生歓迎会の企画・運営の相談をしたいのですが」
その言葉に、倉子と真子は机に突っ伏した。
「……意外に……ハードスケジュールっすね……」
「イベントの連投って、芸能人でも辛いやつよ……」
そんなふたりをよそに、澪はにこやかに続ける。
「新入生には“先輩”として接することになりますし、皆さんの存在感はきっと心強いはずです」
「先輩、ね……」
「先輩になるのか……」
倉子がぼそりとつぶやく。
真子も続ける。
「やばいっす……SP、25歳、先輩はじめました……っす」
「いやぁぁぁぁっ!! 25歳、やばっ!!」
ふたりは揃って頭を抱えた。
「新入生に“人生の相談”される年齢よ、これ……」
「むしろ進路指導室にいそうな雰囲気になってきてるっす…… 下手したら担任の人生相談も受けることになりそうっす……ありそうっす。あの先生だと……」と真子がうめいた。」
澪だけが、まったく動じずに頷いた。
「それでも、皆さんがいてくださるだけで、新入生たちは安心できると思います」
「……もしかして澪お嬢様、内心めちゃくちゃ楽しんでる……?」
かくして、まだ春休みにも入っていないうちから、新年度に向けての戦いが始まる。
SP25歳、副会長、そして――“先輩”。
新たな肩書きに、ふたりは震えるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】御刀さまと花婿たち
はーこ
キャラ文芸
【第9回キャラ文芸大賞エントリー中】
刀の神さまを待ち受けていたのは、ひとびとを苦しめるあやかし退治、そして弟と元主と生みの親からの溺愛学園生活!?
現代日本のとある島。神社の蔵で目を覚ました少女・鼓御前(つづみごぜん)は、数百年の時をへて付喪神となった御神刀だった。
鼓御前の使命はひとつ。島にはびこる悪しきあやかしを斬ること。そのためには、刀をふるう覡(かんなぎ)と呼ばれる霊力者の存在が必要不可欠なのだという。
覡とは、あやかしに対抗する武装神職者のこと。しかし鼓御前のもとに集まった三人の覡候補は、かつて同じ刀であった弟、持ち主であった戦国武将、鼓御前を生み出した刀鍛冶が転生した男たちで。
鼓御前は彼らとともに、覡を養成する学び舎へ通うことになる。
ひとと刀は片時も離れず、寄り添うもの。まるで夫婦のように。個性豊かな『花婿候補』たちにかこまれながら、鼓御前は闘い、そしてひとのこころ──恋を知る。
時をこえて想いが花ひらく、現代和風ファンタジー。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体などとは関係ありません。
※他サイトにて公開中の作品を、コンテスト用に大幅改稿したものです。
※掲載しているイラストはすべて自作です。
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる