SP24歳 女子高生始めました。

鍛高譚

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第42話 澪のクリスマスパーティー

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「クリスマスパーティー……? 全員、招待?」



その言葉に、教室の空気が一瞬、静まり返った。11月下旬、そろそろ受験ムードが漂う中で、澪が突然、クラスメイト全員に封筒を配り始めたのだ。しかも、それは澪の自宅でのクリスマスパーティーの招待状だった。



「え、本気で言ってるの? 全員? 自宅で?」 「えーと、これって…ほんとの招待状だよね? すごく丁寧だし、金箔印刷って…」 「澪って、もしかしてすごいお嬢様だったり?」



ざわめくクラス。



配り終えた澪は、教卓の前に立つと、少し緊張した様子で話し始めた。



「えっと……私、この学校で過ごした三年間、本当に楽しかったの。だから、卒業前に、何か思い出を残したくて……」



少し頬を染めながら、続ける。



「受験も近いし、忙しいのも分かってる。でも……この冬だけは、皆で笑い合えたらなって。だから、お願い。来てくれると嬉しい」



その真摯な声に、教室の空気がふわっとやわらかくなった。



「行こうぜ、俺、行くわ。こういうの、学生最後って感じするじゃん」 「パーティードレス着ていこうかなー」「それは浮くって! 制服で行きなよ!」



それぞれの反応が飛び交い、次第に場は明るい雰囲気へと変わっていく。



その中で、真子と倉子は最後列で顔を見合わせていた。



「……今年で3回目っすね、澪のプライベートクリスマスパーティー」



「ええ、でも今回は、クラス全員。……予想以上に大ごとになったわね」



「それでも、澪らしいっす。あの子、誰よりもこのクラスを大事にしてたっすから」



倉子は、ふっと微笑むと、静かに窓の外へ視線を移した。遠くに見える冬の雲は、雪を運んできそうな気配。



(高校生活、最後の冬——その始まりに、ふさわしい幕開けかもしれないわね)



澪の想いが詰まったその招待状は、たしかに皆の心に届いていた



:開幕、特別な一夜の始まり



「……これ、ほんとに澪の家?」



玄関前に立ち尽くすクラスメイトたちから、そんな呟きが漏れる。



ライトアップされた白亜の邸宅は、まるで童話の中のお城。冬の夜を彩るイルミネーションが庭木に施され、雪の結晶を模したオーナメントが風に揺れていた。



玄関ホールでは、メイドたちがドレス姿でお出迎え。「本日はようこそお越しくださいました」と深々とお辞儀をするその所作に、男子も女子も固まってしまう。



「きょ、緊張する……」 「なんか、パーティー会場ってより、式場って感じ……」



そう口にする生徒もいたが、受付の隣に設置されたクロークでは、上着やカバンを預ける生徒たちの表情が徐々にほころんでいく。



「やっぱすごいな、澪ん家……」



ホールから吹き抜けの広間に案内されると、そこには煌びやかなシャンデリア、氷の彫刻のようなツリー、そして彩り豊かなビュッフェが並ぶ。



「ねえ、ほんとにこれ、高校生のパーティーなの?」



そんな声に、澪が笑顔で現れた。



「ようこそ。今夜は楽しんでいってね」



緊張をほぐすようなその柔らかな声に、生徒たちの間に安堵の空気が広がる。



そのとき——



「おー、みんなもう集まってるー?」



入り口からひときわ目を引く二人が現れる。真子と倉子。プライベートでの参加とは思えない、洗練されたドレス姿に、生徒たちの視線が一斉に集まった。



「真子先輩だ……!」 「えっ、倉子先輩まで!? あの二人、やっぱモデルだよね……」



「まあまあ、今夜はゲストだよ。よろしくね?」と真子が笑い、倉子は「目立ちたくないから端っこにいるつもりだったんだけど」と呟きながらも、照れたように微笑む。



全員がそろったところで、澪がマイクを手に取る。



「えっと……今日は、私のわがままに付き合ってくれてありがとう」



一瞬の静寂。



「このクラスで過ごした時間は、私にとって本当に宝物です。卒業までもう少しだけど、最後にこうして思い出を作れることが、すごく嬉しいです」



ぱちぱち、と温かな拍手が会場に広がる。



「それじゃ、乾杯しましょう!」



ノンアルコールのグラスが配られ、澪の合図でみんながグラスを掲げる。



「メリークリスマス!」



歓声とともに、パーティーは正式に幕を開けた。



ビュッフェテーブルでは、豪華な料理やスイーツが並び、生徒たちは笑いながら皿を手に取る。



「うわ、ローストビーフだ!」「チョコファウンテンって本当にあるんだ!」



スマホを構えて写真を撮る者、テーブルに座って談笑する者。中には、ツリーの前で集合写真を撮るグループも現れ始める。



その光景を見守る澪は、どこかほっとしたように微笑んでいた。



——特別な一夜が、静かに華やかに、動き出していた。



:ひとときの笑顔と、卒業前の静寂



澪の乾杯の音頭とともに、パーティーは本格的にスタートした。豪華なシャンデリアが煌めく広間には、煌びやかなドレスを纏った生徒たちが思い思いに集まり、料理のテーブルや撮影スポット、談笑の輪に吸い寄せられていく。



「このローストビーフ、ホテル並じゃない?」 「ねぇ、デザートのビュッフェ、三回目だけど全然飽きない…」



会場の至る所で、驚きと感動が飛び交っていた。普段は制服姿で見慣れた同級生たちが、きらびやかな装いに包まれ、それぞれが非日常の空間を楽しんでいる。



そんな中、澪は一歩引いた場所から全体を見渡していた。会場の端で控えているスタッフやメイドたちに軽く目配せを送り、何か問題がないかを確認する。



「……うん、みんな楽しんでくれてる」



澪の目元に、ほっとした笑みが浮かぶ。今日は主催者としてだけでなく、クラスの一員として、みんなと最後の思い出を作りたいという思いが強かった。



やがて、パーティーは中盤に差し掛かり、会場中央に設けられた小さなステージでくじ引き大会が始まった。



「次の番号は……23番!」



「やったー!」



歓声と拍手が広がる中、当選者にはちょっとしたプレゼントが贈られ、会場はますます盛り上がっていく。



「なんか、くじ引きでこんなに盛り上がるなんて思わなかったな」



「うちら、三回目だよね? この季節に澪と一緒のクリスマスパーティーって」



ドレス姿の真子が、隣にいた倉子に肩を寄せながら微笑む。



「そうね。一年生のときはホテルのラウンジ、去年は演習後の控え室でケーキだけ、そして今年は……澪邸。グレード上がりすぎじゃない?」



「てかさ、こういうパーティーにいると改めて思うけど……うちら、完全に浮いてない?」



「男子たちの目が痛いくらいだから、ある意味正解なんじゃない?」



少し離れた場所では、男子生徒たちが真子と倉子の姿に釘付けになっていた。



「……あれ、なんていうか……」



「大人だ……あれはもう、同級生って感じじゃない……」



「麗人って言葉、初めてリアルで思い浮かんだ……」



倉子はそんな視線にも慣れた様子で、視線だけで「見すぎ」と威嚇しつつも、グラスを軽く揺らしていた。



そんな彼女たちの姿を遠くから見つめていた澪は、心の中で小さく笑った。



「真子さん、倉子さん……変わらないな、あの感じ」



だがその一方で、心のどこかで「この時間もあと少しで終わるのだ」とも感じていた。



「卒業まで、あと……」



口に出すことはなかったが、その想いは確かに胸にあった。



会場には今もなお、笑い声と音楽が満ちている。くじ引きが終われば、次はミニゲーム。そして——思いもよらぬサプライズが待っていることを、今はまだ誰も知らなかった。



:ラストサプライズと、感謝の言葉



会場の照明が少しだけ落ち、優しいクラシックの生演奏が始まった。 パーティーは終盤に差し掛かり、生徒たちはそれぞれリラックスした様子で歓談を楽しんでいる。



澪は会場の端からそっとその様子を見つめ、目を細めた。 「……みんな、楽しんでくれてるかな」



その時だった。



「はーい、みんなーっ! 聞いてるかーっ!」



突然、会場のドアが勢いよく開かれ、派手な赤と白の衣装に身を包んだ人物が現れた。



「……水無瀬先生!?」



どよめく生徒たちの視線の先にいたのは、ミニスカサンタ姿の水無瀬先生だった。 フリル付きの赤いミニスカートに、白いファーのケープ。そして頭にはトナカイのカチューシャ。



「ちょっと、ほんとに来たんだ……」 「え、先生ノリノリじゃない?」 「やば、写真撮っていいかな……」



携帯を構える生徒たちに囲まれながら、先生はマイクを取った。



「みんなー! メリークリスマス! 今夜は特別に、先生から“宿題プレゼント”があるよー!」



「ええええええーーーっ!!」



悲鳴とも叫びともつかない声が会場に響く。



「せ、先生……この空気、読んで……」



「宿題出すのはレッドカードです!」と生徒Aの鋭いツッコミが入る。



爆笑が巻き起こる中、倉子が冷静に呟いた。 「高スペック新卒の無駄遣いね……」



真子が肩を震わせながら小声で返す。 「……でも、場の盛り上げ方としては完璧だよね、あれ」



澪は、そんなやり取りを見ながらマイクを引き継ぎ、笑顔で壇上へと上がった。



「えー……改めまして、今日は皆さん来てくれてありがとう」



会場が静まり返る。



「高校最後の冬、こうしてクラスのみんなで集まれたこと、本当に嬉しく思っています。あと少しで卒業だけど、今日のこと、きっと忘れない思い出になると思います」



澪は一瞬間を置き、優しく続けた。



「たくさん悩んで、笑って、支え合ったこのクラスが、大好きです」



小さな拍手が自然と広がり、やがて会場を包む。



「それでは、そろそろ集合写真の準備に入りましょう。写真は制服で撮ります。今日は思いっきり楽しんでくれてありがとう」



照明が再び明るくなり、スタッフたちがさりげなく制服の準備を整える。



こうして、澪の高校生活最後のクリスマスパーティーは、笑顔と余韻を残しながら、次のページへと進んでいくのだった。

































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