婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

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第30話 社交界からの追放

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第30話 社交界からの追放

 広間は、怒りと失望のざわめきに満ちていた。

 リリアンの不正、そしてセザールの関与――
 それらが白日の下に晒された今、もはや誰一人として二人を庇おうとする者はいない。

「どう弁解するつもりです?」 「これだけの証拠を前に、まだ言い逃れを?」

 非難の声が、冷たく突き刺さる。

 ヴェルナは一歩前に進み、広間の中心に立った。
 その背筋は伸び、瞳には迷いがない。

 ――これ以上、逃げ道は必要ない。


---

 リリアンは床に膝をつき、泣き崩れていた。

「わ、私は……そんなこと……」  声は震え、言葉は途切れる。

 だが、その必死な否定に、応じる声はなかった。

「では、この記録をどう説明なさるのですか」

 ヴェルナの声は静かで、冷静だった。

「あなた名義で行われた資金の流用」 「そして、セザール様と共謀して行われた数々の行為」 「――これらすべてが“間違い”だと?」

 リリアンは顔を上げることすらできず、ただ嗚咽を漏らすだけだった。

 セザールもまた、視線を落としたまま沈黙している。


---

「もう十分だ」

 誰かがそう呟いた。

「彼らは、この社交界に相応しくない」 「即刻、追放すべきだ」

 次々に上がる声。

 そして――
 静かに、しかし決定的な存在感を放ちながら、ルシャール侯爵が立ち上がった。

「リリアン嬢、セザール様」

 低く、重い声。

「あなた方の行いは、貴族としての品位を著しく損なうものです」 「社交界への裏切りと断じても、過言ではない」

 一拍置き、告げる。

「この場をもって、両名の社交界からの追放を提案します」

 沈黙――そして。

「賛成だ!」 「異論はない!」 「追放を!」

 広間は、満場一致だった。


---

 セザールは、ゆっくりと立ち上がった。

「……分かりました」

 低く、かすれた声。

「私はこの場を去ります」  そして、最後に付け加える。

「だが――これで終わりだとは思わないことだ」

 その言葉を残し、彼はリリアンの腕を取った。

 二人が広間を後にすると、
 一瞬の静寂が訪れ――やがて、拍手が湧き起こった。

 それは歓喜ではなく、決着への安堵の音だった。


---

 ヴェルナは、そっと息を吐いた。

 長い戦いが、ひとつ終わった。

 その肩に、そっと影が差す。

「見事でした、ヴェルナ嬢」

 エリオットだった。
 その声には、偽りのない敬意が宿っている。

「あなたは、誰も傷つけずに真実だけを突きつけた」 「それが、最も難しい勝利です」

「ありがとう、エリオット」

 ヴェルナは小さく微笑む。

「でも、これで全てが終わったわけじゃないわ」 「社交界には……まだ、歪みが残っているもの」

「ええ」  彼も頷いた。 「ですが、今夜のあなたの姿は、多くの人に希望を与えました」


---

 その夜。

 ヴェルナは自室の窓辺に立ち、月明かりに照らされた庭を見下ろしていた。

「……一歩、前に進めたわね」

 呟きは、静かな決意を帯びている。

「でも、私はまだ足りない」 「もっと強く、もっと賢くならなければ」

 社交界は変わり始めた。
 だが、それを守り、導く者が必要だ。

 ヴェルナは、ゆっくりと拳を握った。

 ――これは終わりではない。
 彼女が選び取った、新たな始まりだった。


---
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