婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

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第35話 成功への新たな決意

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第35話 成功への新たな決意

 領地改革は、確かな手応えをもって進み始めていた。

 新たな特産品として育て始めた薬草や染料は、村人たちの間で次第に定着しつつあり、エリオットの提案による事業計画も順調な滑り出しを見せている。
 数字の上でも、わずかながら収入の改善が見え始めていた。

 ――それでも。

(これで満足するわけにはいかない)

 書斎の窓辺に立ち、ヴェルナは静かに領地を見下ろした。
 胸に浮かぶのは達成感よりも、むしろ次の課題だった。

「もっと、私にできることがあるはず……」

 その瞳には、迷いではなく前を見据える強い意志が宿っていた。


---

 その日、ヴェルナは母エリザベスと共に、再び村を訪れた。

 広場には、新設された加工場が立ち並び、薬草を乾燥させる香りと、人々の活気に満ちた声が溢れている。
 以前の静まり返った村の姿を知るヴェルナにとって、その光景は胸が熱くなるほどの変化だった。

「ヴェルナ様、こちらをご覧ください」

 村長が誇らしげに加工場を案内する。

「この施設のおかげで、仕事に困っていた者たちにも役目ができました。本当に……感謝しております」

「私一人の力ではありません」  ヴェルナは穏やかに微笑んだ。 「皆さんが力を合わせてくださったからこそ、ここまで来られたのです」

 加工場の中では、住民たちがそれぞれの持ち場で懸命に働いていた。
 誰もが誇りを持ち、自分の役割を理解している――その姿に、ヴェルナは確かな希望を見た。

(この人たちの努力を、無駄にはしない)

 胸の奥で、静かにそう誓う。


---

 視察を終えた後、ヴェルナはエリオットを招き、次なる計画について話し合いの場を設けた。

「ヴェルナ嬢、特産品事業は順調です」  エリオットは資料を広げながら言った。 「そこで、次の一手として――観光事業を提案したいと考えています」

「観光、ですか?」

 ヴェルナは少しだけ目を丸くする。

「はい。この領地には、豊かな自然と歴史的な建造物があります」 「それらを整備し、外から人を呼び込めば、収入源をさらに広げられるでしょう」

「なるほど……」  ヴェルナは顎に指を当て、考え込んだ。 「それなら、宿や休憩所も必要ね。地元の文化を体験できる催しもあれば、訪れた人の印象にも残るわ」

「流石です」  エリオットは満足そうに頷いた。 「成功の鍵は、村人たちとの連携にあります」


---

 ヴェルナは迷わなかった。

 その日のうちに村人たちを集め、観光事業について率直に意見を求めた。

「私たちの村が……観光地に?」  農民の一人が、驚いたように笑う。 「正直、想像もしていませんでした。でも……面白そうですね」

「領地が良くなるなら、協力します!」 「自分たちの村を誇れる場所にしたいです!」

 次々に上がる前向きな声に、ヴェルナは深く胸を打たれた。

「ありがとうございます」  彼女ははっきりと告げる。 「この領地を、皆さんが誇れる場所にしましょう。私も全力を尽くします」


---

 夜。
 自室の窓辺に立ち、ヴェルナは静かな闇に包まれた領地を見つめていた。

 かつての自分は、父の影に守られ、流されるままに生きていた。
 だが今は違う。

(私が選び、私が決め、私が導く)

「これが……私の使命なのね」

 その声は小さかったが、確かな覚悟を帯びていた。

「もっと強くなる」 「この領地を、誰もが憧れる場所にしてみせる」


---

 その夜、書斎を訪れたエリオットが、静かに口を開いた。

「ヴェルナ嬢。ここまでの成果は、本当に見事です」 「ですが……これから先、反発や困難も増えるでしょう」

「ええ、分かっているわ」  ヴェルナは微笑む。 「でも、もう一人じゃないもの」

 彼女は真っ直ぐに彼を見つめた。

「あなたや、村の皆さんがいる」 「だから、どんな困難でも乗り越えられる」

「……光栄です」  エリオットも、穏やかに微笑んだ。 「これからも、全力でお支えします」

 新たな決意と共に、ヴェルナは次の一歩を踏み出していた。


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