婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

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第34話 家族の支援と新たな繋がり

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第34話 家族の支援と新たな繋がり

 領地改革に本格的に乗り出してからというもの、ヴェルナの一日は慌ただしく過ぎていった。
 机の上には領地の地図や財務報告書が広げられ、彼女はペンを走らせながら、黙々と現状の整理を続けている。

 その様子を、母エリザベスは廊下の先から静かに見守っていた。

 ――随分と、表情が変わったわね。

 かつては社交界の作法と評判ばかりを気にしていた娘が、今では領地の数字と地図に向き合っている。その姿に、エリザベスは胸の奥が温かくなるのを感じていた。

 やがて、彼女はノックをして部屋に入る。

「ヴェルナ、少しお時間よろしいかしら?」

「もちろんです、お母様」

 顔を上げたヴェルナは、柔らかな笑みを浮かべた。
 エリザベスは娘の隣に腰を下ろし、机の上の資料に目を向ける。

「あなたが領地のために尽力していること、ずっと見ていました」 「何か、私にできることがあれば遠慮しないで」

 その言葉に、ヴェルナは一瞬驚いたように目を見開いた後、深く頭を下げた。

「ありがとうございます、お母様」 「実は……お母様の経験と知識を、お借りしたいと思っていました」

 エリザベスはくすりと微笑む。

「そうね。私も若い頃、あなたのお祖母様と一緒に領地の管理をしていたの」 「その時の話なら、いくらでもしてあげられるわ」


---

 それから二人は、長い時間をかけて語り合った。

「まず大切なのは、住民の声よ」  エリザベスは真剣な眼差しで言う。 「書類の数字だけでは、本当の問題は見えてこないわ」

「……はい」  ヴェルナは何度も頷き、懸命にメモを取った。 「直接、村を訪れて話を聞いてみます」

「それから商人たちとの関係も重要ね」 「敵対するより、協力者にするのよ」

 母の言葉は、どれも実践的で重みがあった。


---

 数日後。
 ヴェルナは実際に領地の村々を訪れ始めた。

「まさか、領主様が直接来られるとは……」

 村長は戸惑いながらも、深く頭を下げる。

「形式的な視察ではありません」  ヴェルナは穏やかに首を振った。 「皆さんの声を、直接聞きたいのです」

 最初は緊張していた住民たちも、彼女の誠実な態度に次第に心を開いていく。

「畑が痩せてきていまして……」 「医者が遠くて、病人が出ると困るのです」

 一つひとつの声を、ヴェルナは決して聞き流さなかった。

(これが、領主としての責任……)

 胸の奥で、確かな覚悟が形を成していく。


---

 一方、屋敷では父アルベルトの心境にも変化が訪れていた。

 ある夕食の席。
 静まり返った食卓で、父が珍しく口を開く。

「ヴェルナ。最近、領地の管理に力を入れているそうだな」

「はい」  ヴェルナは背筋を伸ばして答えた。 「まだ未熟ですが、できることから始めています」

 アルベルトは短く頷く。

「悪くない」 「困ったことがあれば、私にも相談しろ。経験くらいはある」

 それだけの言葉だったが――
 ヴェルナの胸は、じんわりと温かくなった。

「ありがとうございます、お父様」


---

 家族の支援を受け、ヴェルナの歩みは確かなものになっていく。
 彼女の行動は、次第に領地全体へと影響を及ぼしていた。

「本当に、私たちのことを考えてくださっている」 「こんな領主様は初めてだ」

 そんな声が、少しずつ広がっていく。


---

 夕暮れの庭を歩きながら、エリザベスが静かに言った。

「あなたを誇りに思うわ、ヴェルナ」

「……まだ道の途中です」  ヴェルナは微笑んで答える。 「でも、一人じゃないと思えるようになりました」

「それでいいのよ」

 支えられ、支え返し、繋がっていく。
 ヴェルナは今、確かに“領主としての道”を歩み始めていた。

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