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2-4 新たな感触
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新たな感触
ミアータはショールを椅子の背もたれにかけ、ドレスの裾が汚れないように軽くたくし上げてから膝をつく。視線の先には柔らかな土が広がり、風に乗って花の香りが鼻腔をくすぐる。
「この苗はローズマリー、こちらはラベンダー……。ハーブ類もいくつかあるんですね」
ラドリーが苗の説明をしてくれながら、それぞれの植え付け方法や土の状態を教えてくれる。ミアータは真剣に聞き入っていた。かつて花壇づくりを手伝ったときの感覚が蘇ってくるが、正直なところ細かい手順は忘れてしまっている部分も多い。
「そうそう、ラベンダーは水はけの良い土を好むので、植え付けの際にはあまり根を詰めすぎず、少しふんわりさせてあげるといいですよ」
「なるほど……。けっこう繊細なのですね」
ミアータは軍手越しに土の感触を確かめる。しっとりとした湿り気の中に、微かな温かさと生命力がある。指先に伝わるざらりとした粒子の感覚は、華やかな舞踏会のフロアや絹のドレスとはまるで違う世界だ。
「昔はずいぶん花壇づくりが楽しくて、ラドリーにいっぱい教わったのを覚えているわ」
「お嬢様、私などの話を熱心に聞いてくださって。あの頃、お嬢様はまだ7つや8つだったでしょうかね。今はもうこんなにお美しく成長されて……」
ラドリーが懐かしそうに目を細める。その言葉に、ミアータは「少し複雑よ」と思いつつも、微笑みで返した。成長したがゆえに、貴族令嬢としての責務と体裁を求められ、結果として「完璧すぎる」と婚約者に退かれた――そんな皮肉を思い出すと、胸に痛みが走るからだ。
しかし、それでも彼女は手を止めない。土を軽くほぐし、苗をやさしく包み込むように植え付けながら、「こんな時間が、自分には必要だったのかもしれない」と思う。息苦しいドレスやマナー、誰かの視線を意識することなく、ただ無心で土に触れる。言葉にはできない安堵感がじんわりと体を包んでいく。
作業を始めてしばらくすると、額に汗が滲み、軽く息が上がってきた。屋外で体を動かすことなど、社交界に忙殺されている間はほとんどなかったことを思えば、これだけでも新鮮な体験だ。
「お嬢様、無理はしないでくださいね」
「ええ、大丈夫よ。少し疲れるけれど、楽しいわ」
ラドリーの気遣いに応えつつ、ミアータは苗を一つ、また一つと丁寧に植えていく。彼女の心は、ゆっくりと解放され始めていた。
ミアータはショールを椅子の背もたれにかけ、ドレスの裾が汚れないように軽くたくし上げてから膝をつく。視線の先には柔らかな土が広がり、風に乗って花の香りが鼻腔をくすぐる。
「この苗はローズマリー、こちらはラベンダー……。ハーブ類もいくつかあるんですね」
ラドリーが苗の説明をしてくれながら、それぞれの植え付け方法や土の状態を教えてくれる。ミアータは真剣に聞き入っていた。かつて花壇づくりを手伝ったときの感覚が蘇ってくるが、正直なところ細かい手順は忘れてしまっている部分も多い。
「そうそう、ラベンダーは水はけの良い土を好むので、植え付けの際にはあまり根を詰めすぎず、少しふんわりさせてあげるといいですよ」
「なるほど……。けっこう繊細なのですね」
ミアータは軍手越しに土の感触を確かめる。しっとりとした湿り気の中に、微かな温かさと生命力がある。指先に伝わるざらりとした粒子の感覚は、華やかな舞踏会のフロアや絹のドレスとはまるで違う世界だ。
「昔はずいぶん花壇づくりが楽しくて、ラドリーにいっぱい教わったのを覚えているわ」
「お嬢様、私などの話を熱心に聞いてくださって。あの頃、お嬢様はまだ7つや8つだったでしょうかね。今はもうこんなにお美しく成長されて……」
ラドリーが懐かしそうに目を細める。その言葉に、ミアータは「少し複雑よ」と思いつつも、微笑みで返した。成長したがゆえに、貴族令嬢としての責務と体裁を求められ、結果として「完璧すぎる」と婚約者に退かれた――そんな皮肉を思い出すと、胸に痛みが走るからだ。
しかし、それでも彼女は手を止めない。土を軽くほぐし、苗をやさしく包み込むように植え付けながら、「こんな時間が、自分には必要だったのかもしれない」と思う。息苦しいドレスやマナー、誰かの視線を意識することなく、ただ無心で土に触れる。言葉にはできない安堵感がじんわりと体を包んでいく。
作業を始めてしばらくすると、額に汗が滲み、軽く息が上がってきた。屋外で体を動かすことなど、社交界に忙殺されている間はほとんどなかったことを思えば、これだけでも新鮮な体験だ。
「お嬢様、無理はしないでくださいね」
「ええ、大丈夫よ。少し疲れるけれど、楽しいわ」
ラドリーの気遣いに応えつつ、ミアータは苗を一つ、また一つと丁寧に植えていく。彼女の心は、ゆっくりと解放され始めていた。
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