17 / 43
2-6 子供たちとの触れ合い
しおりを挟む
子供たちとの触れ合い
薄暗い廊下を進むと、奥の部屋から笑い声が聞こえてくる。覗いてみると、十人ほどの子供たちが簡素なテーブルや椅子に腰掛けたり、床に座ったりしながら楽しそうに遊んでいた。ボロボロの人形や色褪せた絵本が彼らのおもちゃであり、決して恵まれた環境とは言えない。
しかし、子供たちの笑顔は輝いていた。ミアータは少し驚きながらも、その笑顔に引き込まれるように部屋へ一歩足を踏み入れる。すると、一人の小さな男の子が彼女に気づき、目を丸くして叫んだ。
「わぁ……綺麗なお姉ちゃんだ!」
その声に釣られるように、子供たち全員がミアータの方を振り返る。やがて一人、また一人と近づいてきて、まるで物珍しいものを見るように彼女をじっと見つめた。
「本当に綺麗……。お城のお姫様みたい……」
「お姉ちゃん、どこからきたの?」
次々と素朴な疑問が飛んでくる。ミアータは慌てながらも、微笑みを忘れない。
「こんにちは、はじめまして。私はミアータっていうの。公爵家というところのおうちに住んでいるのだけど、今日はみんなに会いに来たの」
すると、子供たちは興味津々といった様子で「みんなに会いに?」「やったー!」「何してくれるの?」と口々に喜びの声を上げる。無邪気に瞳を輝かせる姿に、ミアータの胸が温かくなった。
「実は私、初めてここへ来たから、いろいろ教えてほしいの。みんなは毎日、どんなことをして過ごしてるの?」
ミアータが問いかけると、子供たちは嬉しそうに自分たちの生活を話し始めた。朝起きてからの簡単な仕事、お昼ご飯の時間、手作りのおもちゃで遊ぶ時間、そして夜には院長やお手伝いの人に教えてもらう読み書きの練習――どれも質素な内容だが、彼らはそれを楽しんでいるようだった。
そんな会話をしているうちに、院長が申し訳なさそうに近づいてきた。
「子供たちが騒がしくてすみません。狭い場所しかなく、ご覧のとおり物資も乏しくて……」
「いえ、そんなことはありません。皆さんが元気で楽しそうに暮らしているのが伝わってきます」
ミアータは笑顔でそう答える。確かに、環境は決して良くない。建物の老朽化も進んでおり、暖房設備も十分とはいえない。このままでは冬を越すのも一苦労だろう。食料や衣服、学用品などの支援も必要だと思われる。
「とはいえ、資金面で厳しいのは本当なんでしょうね。何か私にもできることがあれば協力したいのですが……」
ミアータがそう申し出ると、院長は少し躊躇した様子を見せたが、正直に言葉を続けた。
「ありがたいお話です。実は、維持費の工面が本当に難しくて。王国からの補助金だけでは子供たちを養うのがやっとで、建物の修繕などは後回しにするしかなくて……」
院長の言葉を聞きながら、ミアータは自分の置かれている状況を改めて考える。公爵家の娘として、多少の資金や物資を援助することは難しくない。だが、それはあくまで“形だけ”の支援になる恐れもある。大事なのは、これからどうこの孤児院と関わっていくか、ということだ。
「もしよろしければ、今後も定期的にこちらへ伺ってみたいのです。私自身が何ができるか、実際に見て考えたいと思います」
「そんな……私どもからすれば、願ってもないことですが、本当に大丈夫なのですか?」
院長が遠慮がちに問いかけるが、ミアータははっきりと頷いた。
「ええ。貴族令嬢だからこそ、こんなときにこそ力をお貸しするべきだと思うんです。私にできることは限られているかもしれませんが、まずは子供たちと一緒にいる時間を増やしたいです」
院長はその言葉に深々と頭を下げ、「ありがとうございます、ミアータ様」と感謝の念を滲ませた。その姿を見て、ミアータはむしろ「こうした反応をされるのは少し恥ずかしい」と思いつつも、「これでいいのだろうか」と不安も感じていた。自分がここへ来ることが本当に彼らのためになるのか、まだ確信は持てない。だが、少なくとも自分の目で現実を見て、そして何かをしたい――その気持ちは本物だった。
薄暗い廊下を進むと、奥の部屋から笑い声が聞こえてくる。覗いてみると、十人ほどの子供たちが簡素なテーブルや椅子に腰掛けたり、床に座ったりしながら楽しそうに遊んでいた。ボロボロの人形や色褪せた絵本が彼らのおもちゃであり、決して恵まれた環境とは言えない。
しかし、子供たちの笑顔は輝いていた。ミアータは少し驚きながらも、その笑顔に引き込まれるように部屋へ一歩足を踏み入れる。すると、一人の小さな男の子が彼女に気づき、目を丸くして叫んだ。
「わぁ……綺麗なお姉ちゃんだ!」
その声に釣られるように、子供たち全員がミアータの方を振り返る。やがて一人、また一人と近づいてきて、まるで物珍しいものを見るように彼女をじっと見つめた。
「本当に綺麗……。お城のお姫様みたい……」
「お姉ちゃん、どこからきたの?」
次々と素朴な疑問が飛んでくる。ミアータは慌てながらも、微笑みを忘れない。
「こんにちは、はじめまして。私はミアータっていうの。公爵家というところのおうちに住んでいるのだけど、今日はみんなに会いに来たの」
すると、子供たちは興味津々といった様子で「みんなに会いに?」「やったー!」「何してくれるの?」と口々に喜びの声を上げる。無邪気に瞳を輝かせる姿に、ミアータの胸が温かくなった。
「実は私、初めてここへ来たから、いろいろ教えてほしいの。みんなは毎日、どんなことをして過ごしてるの?」
ミアータが問いかけると、子供たちは嬉しそうに自分たちの生活を話し始めた。朝起きてからの簡単な仕事、お昼ご飯の時間、手作りのおもちゃで遊ぶ時間、そして夜には院長やお手伝いの人に教えてもらう読み書きの練習――どれも質素な内容だが、彼らはそれを楽しんでいるようだった。
そんな会話をしているうちに、院長が申し訳なさそうに近づいてきた。
「子供たちが騒がしくてすみません。狭い場所しかなく、ご覧のとおり物資も乏しくて……」
「いえ、そんなことはありません。皆さんが元気で楽しそうに暮らしているのが伝わってきます」
ミアータは笑顔でそう答える。確かに、環境は決して良くない。建物の老朽化も進んでおり、暖房設備も十分とはいえない。このままでは冬を越すのも一苦労だろう。食料や衣服、学用品などの支援も必要だと思われる。
「とはいえ、資金面で厳しいのは本当なんでしょうね。何か私にもできることがあれば協力したいのですが……」
ミアータがそう申し出ると、院長は少し躊躇した様子を見せたが、正直に言葉を続けた。
「ありがたいお話です。実は、維持費の工面が本当に難しくて。王国からの補助金だけでは子供たちを養うのがやっとで、建物の修繕などは後回しにするしかなくて……」
院長の言葉を聞きながら、ミアータは自分の置かれている状況を改めて考える。公爵家の娘として、多少の資金や物資を援助することは難しくない。だが、それはあくまで“形だけ”の支援になる恐れもある。大事なのは、これからどうこの孤児院と関わっていくか、ということだ。
「もしよろしければ、今後も定期的にこちらへ伺ってみたいのです。私自身が何ができるか、実際に見て考えたいと思います」
「そんな……私どもからすれば、願ってもないことですが、本当に大丈夫なのですか?」
院長が遠慮がちに問いかけるが、ミアータははっきりと頷いた。
「ええ。貴族令嬢だからこそ、こんなときにこそ力をお貸しするべきだと思うんです。私にできることは限られているかもしれませんが、まずは子供たちと一緒にいる時間を増やしたいです」
院長はその言葉に深々と頭を下げ、「ありがとうございます、ミアータ様」と感謝の念を滲ませた。その姿を見て、ミアータはむしろ「こうした反応をされるのは少し恥ずかしい」と思いつつも、「これでいいのだろうか」と不安も感じていた。自分がここへ来ることが本当に彼らのためになるのか、まだ確信は持てない。だが、少なくとも自分の目で現実を見て、そして何かをしたい――その気持ちは本物だった。
0
あなたにおすすめの小説
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
兄の婚約解消による支払うべき代償【本編完結】
美麗
恋愛
アスターテ皇国
皇帝 ヨハン=シュトラウス=アスターテ
アスターテ皇国は周辺国との関係も良く、落ち着いた治世が続いていた。貴族も平民も良く働き、平和で豊かな暮らしをおくっている。
皇帝ヨハンには
皇妃に男の子が一人
妾妃に女の子が一人
二人の子どもがある。
皇妃の産んだ男の子が皇太子となり
妾妃の産んだ女の子は降嫁することが決まっている。
その皇女様の降嫁先だった侯爵家の
とばっちりを受けた妹のお話。
始まります。
よろしくお願いします。
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました
鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」
そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。
王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。
私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。
けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。
華やかな王宮。
厳しい王妃許育。
揺らぐ王家の威信。
そして――王子の重大な過ち。
王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。
離縁を望んでも叶わない義妹。
肩書きを失ってなお歩き直す王子。
そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。
ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。
婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。
【完結】私を捨てた国のその後を見守ってみた。
satomi
恋愛
侯爵令嬢のレナは公然の場でというか、卒業パーティーで王太子殿下イズライールに婚約破棄をされた挙句、王太子殿下は男爵令嬢のラーラと婚約を宣言。
殿下は陛下や王妃様がいないときを狙ったんでしょうね。
レナの父はアルロジラ王国の宰相です。実家にはレナの兄が4名いますがみんなそろいもそろって優秀。
長男は領地経営、次男は貿易商、3男は情報屋、4男は…オカマバー経営。
レナは殿下に愛想をつかして、アルロジラ王国の行く末を見守ろうと決意するのです。
次男監修により、国交の断絶しているエミューダ帝国にて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる