完璧すぎた令嬢ですが、婚約破棄のおかげで幸せを掴みました

鍛高譚

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2-6 子供たちとの触れ合い

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子供たちとの触れ合い

 薄暗い廊下を進むと、奥の部屋から笑い声が聞こえてくる。覗いてみると、十人ほどの子供たちが簡素なテーブルや椅子に腰掛けたり、床に座ったりしながら楽しそうに遊んでいた。ボロボロの人形や色褪せた絵本が彼らのおもちゃであり、決して恵まれた環境とは言えない。
 しかし、子供たちの笑顔は輝いていた。ミアータは少し驚きながらも、その笑顔に引き込まれるように部屋へ一歩足を踏み入れる。すると、一人の小さな男の子が彼女に気づき、目を丸くして叫んだ。
 「わぁ……綺麗なお姉ちゃんだ!」
 その声に釣られるように、子供たち全員がミアータの方を振り返る。やがて一人、また一人と近づいてきて、まるで物珍しいものを見るように彼女をじっと見つめた。
 「本当に綺麗……。お城のお姫様みたい……」
 「お姉ちゃん、どこからきたの?」
 次々と素朴な疑問が飛んでくる。ミアータは慌てながらも、微笑みを忘れない。
 「こんにちは、はじめまして。私はミアータっていうの。公爵家というところのおうちに住んでいるのだけど、今日はみんなに会いに来たの」
 すると、子供たちは興味津々といった様子で「みんなに会いに?」「やったー!」「何してくれるの?」と口々に喜びの声を上げる。無邪気に瞳を輝かせる姿に、ミアータの胸が温かくなった。
 「実は私、初めてここへ来たから、いろいろ教えてほしいの。みんなは毎日、どんなことをして過ごしてるの?」
 ミアータが問いかけると、子供たちは嬉しそうに自分たちの生活を話し始めた。朝起きてからの簡単な仕事、お昼ご飯の時間、手作りのおもちゃで遊ぶ時間、そして夜には院長やお手伝いの人に教えてもらう読み書きの練習――どれも質素な内容だが、彼らはそれを楽しんでいるようだった。
 そんな会話をしているうちに、院長が申し訳なさそうに近づいてきた。
 「子供たちが騒がしくてすみません。狭い場所しかなく、ご覧のとおり物資も乏しくて……」
 「いえ、そんなことはありません。皆さんが元気で楽しそうに暮らしているのが伝わってきます」
 ミアータは笑顔でそう答える。確かに、環境は決して良くない。建物の老朽化も進んでおり、暖房設備も十分とはいえない。このままでは冬を越すのも一苦労だろう。食料や衣服、学用品などの支援も必要だと思われる。
 「とはいえ、資金面で厳しいのは本当なんでしょうね。何か私にもできることがあれば協力したいのですが……」
 ミアータがそう申し出ると、院長は少し躊躇した様子を見せたが、正直に言葉を続けた。
 「ありがたいお話です。実は、維持費の工面が本当に難しくて。王国からの補助金だけでは子供たちを養うのがやっとで、建物の修繕などは後回しにするしかなくて……」
 院長の言葉を聞きながら、ミアータは自分の置かれている状況を改めて考える。公爵家の娘として、多少の資金や物資を援助することは難しくない。だが、それはあくまで“形だけ”の支援になる恐れもある。大事なのは、これからどうこの孤児院と関わっていくか、ということだ。
 「もしよろしければ、今後も定期的にこちらへ伺ってみたいのです。私自身が何ができるか、実際に見て考えたいと思います」
 「そんな……私どもからすれば、願ってもないことですが、本当に大丈夫なのですか?」
 院長が遠慮がちに問いかけるが、ミアータははっきりと頷いた。
 「ええ。貴族令嬢だからこそ、こんなときにこそ力をお貸しするべきだと思うんです。私にできることは限られているかもしれませんが、まずは子供たちと一緒にいる時間を増やしたいです」
 院長はその言葉に深々と頭を下げ、「ありがとうございます、ミアータ様」と感謝の念を滲ませた。その姿を見て、ミアータはむしろ「こうした反応をされるのは少し恥ずかしい」と思いつつも、「これでいいのだろうか」と不安も感じていた。自分がここへ来ることが本当に彼らのためになるのか、まだ確信は持てない。だが、少なくとも自分の目で現実を見て、そして何かをしたい――その気持ちは本物だった。
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