完璧すぎた令嬢ですが、婚約破棄のおかげで幸せを掴みました

鍛高譚

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3-4 若き侯爵カイルの存在

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若き侯爵カイルの存 在

 ミアータが大広間を出て、息を整えながら廊下を歩いていると、後ろから軽やかな足音が近づいてきた。
 「ミアータ様、先ほどは大丈夫でしたか?」
 声の主は、前章でも登場したカイル・エルネスト侯爵である。若いながらも立派な侯爵領を受け継ぎ、経営手腕や人望に優れていると評判の人物だ。
 ミアータは驚きながらも、「ああ、カイル様……。お気遣いありがとうございます」と少し硬い笑みを返す。
 「やはり、アレン殿たちにお会いになりましたね。お二人が会場にいらしたのを見て、ミアータ様がどんなお気持ちか気になっていたのです。無理に心配するようで失礼かもしれませんが……」
 彼の声には本心からの優しさが滲んでいる。そこには下心のようなものは感じられず、ただ純粋に彼女の状況を案じているようだった。
 「お気にかけてくださり、恐縮です。大丈夫ですよ。もう、あの方とは終わったことですから」
 ミアータはそっと胸に手を当て、深呼吸をする。実際、アレンに会ったことで多少心が揺れたのは事実だが、彼女は自分の心を必死に立て直していた。
 「そうでしたか。よかった。もし何か辛いことがあれば、私に相談していただいても構いませんよ。いつでも協力を惜しみませんから」
 カイルは笑みを浮かべる。その穏やかな表情を見て、ミアータは「なんと話しやすい人なのだろう」と感じた。婚約破棄以来、彼は公爵家を訪ねる機会が増え、時々「孤児院支援の件で力になれませんか」と声をかけてくれることもあった。
 「ありがとうございます。本当にそうおっしゃっていただけると心強いわ。ところで、今度また孤児院へ行く予定があるのですが、もしよろしければカイル様もご一緒にいかがですか?」
 思い切って誘ってみたのは、純粋に支援活動の参考意見がほしかったからだ。カイルは貴族でありながら領地経営に長け、地域住民の生活を向上させる施策を進めていると噂で聞く。それならば、孤児院や貧困層の問題にも、何か的確なアドバイスをくれるかもしれない。
 「ええ、ぜひ。お誘いいただけるなんて嬉しいです。具体的な日程を決めてご連絡いただければ、都合のつく限り同行させていただきますよ」
 カイルは快諾した。そのときの笑顔は、先ほどのアレンの曖昧な表情とは対照的に、どこまでも澄んでいて頼もしかった。ミアータはその笑顔にほんの少しだけ癒される思いがした。
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