完璧すぎた令嬢ですが、婚約破棄のおかげで幸せを掴みました

鍛高譚

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3-6 新たな孤児院訪問

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新たな孤児院訪問

 晩餐会から数日後、ミアータはカイル・エルネスト侯爵と共に孤児院を訪問することになった。カイルは「お土産に」と大量の教材や子供向けの本を持参し、しかもそれを自ら抱えて馬車を降りる。
 「これだけあれば、子供たちも退屈しないでしょう。読み書きの練習にも使えそうですしね」
 カイルは満面の笑みだ。遠巻きに見ていた子供たちが、最初は「わぁ……誰?」と戸惑い気味だったが、やがて「その箱、なあに?」と興味津々に寄ってくる。
 ミアータも思わず微笑んでしまう。もともとカイルの明るく物怖じしない性格は聞いていたが、ここまで子供たちとすぐに打ち解ける様子を見ると、「彼は本当に人を惹きつける力があるのだな」と実感させられる。
 孤児院の院長も大喜びで、「これはありがたい……! 勉強道具や絵本はとても助かります。お子たちもきっと大事に使います」と礼を述べた。もっとも、この孤児院はまだまだ修繕が追いつかず、建物の老朽化は深刻だ。特に廊下や屋根の痛みは目に余る状態だが、それを直すには大掛かりな資金が必要になる。
 ミアータは院長と話し合いながら、「修繕のための募金活動をどう進めればいいか」をカイルにも相談してみた。
 「私だけの私財で賄うことも不可能ではないのですが、いずれ孤児院の方々が自立し、安定して運営していくためには、外部からの寄付を幅広く募る仕組みづくりが不可欠だと思うのです。でも、私はそのような計画を立てた経験がなくて……」
 ミアータが正直に打ち明けると、カイルは真剣な表情で頷く。
 「確かに、単発の大金だけでは長続きしません。定期的に支援を受けるルートを作り、孤児院側がそれをうまく活用できるようになれば理想的です。自治体や商人ギルドなどの協力も得られれば、さらに効果的でしょう。私の領地でも似たような仕組みを作ったことがありますから、後ほど資料を共有しましょうか」
 「ぜひ……! それはとても助かります」
 ミアータは嬉しそうに答える。彼女の横顔を見つめるカイルの瞳は、どこか温かな光を宿していた。
 その日、二人は孤児院で子供たちと昼食をともにし、簡単な勉強会や遊びを手伝ったあと、まだ手をつけられていない施設部分を視察して回った。カイルは合間合間に的確なアドバイスをくれる。
 「配管や壁の修繕は専門業者に頼まないと危険ですね。費用を押さえたいなら、信頼できる業者の一括見積もりを取るといいかもしれません」
 「これだけの規模だと工期も長くなるでしょうけれど、子供たちの生活空間が安全でないと、大きな事故にも繋がりかねませんよね……」
 話を交わすうちに、ミアータの心にある思いが強くなる。「私が本当に求めていたのは、こういう人との協力や、誰かの役に立つ生き方なのかもしれない」と。彼女は決して足りないものを“与えるだけ”の存在でいたくはない。いっしょに学び、いっしょに成長し、よりよい未来を築く一員として関わりたいのだ。
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