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17話
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ざまぁの結末
季節がひとつ巡り、王都にも秋の風が吹き始めた頃。私はすでにセイルとの交際を両親に報告し、驚かれながらも何とか認めてもらう方向へ動いている。ただし、正式な婚約はまだ先。セイルが「きちんと叙任されるまで待ってほしい」と言うからだ。
それでも私は以前のように退屈することなく、彼と会うたびにささやかな幸せを感じている。ひとりで読む本もお茶もいいけれど、大切な人がいる生活というのは、こんなにも心を豊かにしてくれるのだと思い知った。
そんなある日、私は父から呼び出され、「王宮から、こんな報告書が届いたぞ」と渡された。
そこには、かつて第二王子リオネル殿下だった人物の“近況”が、簡素に記されていた。軍事漏洩の責任を負わされ、辺境の地へ“派遣”という名目で送られた殿下は、近頃では荒れ果てた土地の開墾や警備に追われ、まともな衣食住も得られずに苦労しているらしい。
さらに、殿下に付き従っていた人間の多くは逃げ出し、今はわずかな兵だけを率いて荒野で奮闘しているとか。平民出身のリナも、国外追放の際に行方知れずとなり、殿下と再会できた様子は全くない。つまり、殿下は独りぼっちも同然ということだ。
「……まあ、ざまあというべきかしらね」
私は書類を淡々と読み終え、紅茶を啜る。昔なら「かわいそう」と思ったかもしれないが、今はただ「あれだけリナに優しくしていたのに、最終的に何も守れず、自分だけ泥を被らされているのか」と感じるばかりだ。
もちろん、殿下自身も権力闘争の犠牲者ではあるのだろう。愛する女性を守ることもできず、今は極限の地で苦悶している。私の胸に小さな痛みが走らないわけではないが——しかし、彼が招いた結果なのだから仕方ない。政治の世界に足を踏み入れた以上、それが責任というものだ。
「昔の私なら、この結末を聞いて“まあいい気味”と笑い飛ばせたかもしれない。でも、今はもう……わりとどうでもいいわね」
ただの感想を呟いて、私は茶菓子を口に運ぶ。もう私はあの人に振り回されることもない。
あの日々の喧噪が嘘のように、私は新しい日常を生きている。リナのことは今でも心の片隅で気にかかるけれど、いつかどこかで生き延びていて、あの子の笑顔を取り戻していてくれたらと祈るばかりだ。
そして今、私には守りたい人がいる。愛する人と、穏やかな未来を築いていくために、私は自分らしく生きよう。もう、“白い結婚”に縛られる必要はないのだ。
---
エピローグ
夕暮れの空がオレンジ色に染まる。私は屋敷のバルコニーに出て、遠く見える王都の街並みを眺めていた。そんな私のそばに、セイルが静かに寄り添う。
騎士団で日々鍛えられている彼は、少し逞しくなったようで、その存在感が頼もしい。いつの間にか、ごく自然に私の横に立つようになった。
「ルージュ。明日は非番だ……どこかに行きたい場所はあるかい? 前に話していた、あの丘にある小さなパン屋へ行ってもいいし、ちょっと遠くまで馬車で行くのもいい」
「そうね……じゃあ、パン屋さんに行こうかしら。そこで焼きたてを買って、丘の上で一緒に食べるってのも楽しそう」
「うん。楽しみだね」
セイルが優しく微笑むのを見て、私も自然と表情が緩む。王都には美味しいお菓子やスイーツも多いが、最近はこんなふうに一緒に食べる機会のほうが楽しみだった。
風が少し冷たくなってきたので、私はバルコニーをあとにし、セイルと並んで屋内へ戻る。夜が来る前に、温かな食事を囲み、家族のようなひとときを過ごす。そんな当たり前の時間が、私にはかけがえのない幸福になりつつあった。
(結局、私は自分で思っていたよりも“誰かとの結びつき”を望んでいたのかもしれないわ)
リオネル殿下との政略婚を経て、私はようやく気づいた。かつての私が追い求めていた“自由”は、確かに大切だけれど、孤独な世界に閉じこもることとイコールではない。
今、私はセイルの愛を受け入れ、私も彼のために何かをしてあげたいと心から思っている。彼が遠征に行くときは心配になるし、帰ってきたら喜んで迎えたい。そういう自然な感情に身を任せる心地よさを知ってしまったのだ。
そして、いずれは——父や母の了承を得て、本物の婚姻を結ぶ日が来るだろう。そのとき、私は悔いのない選択だと胸を張れるはずだ。
「お嬢様、セイル様。夕食の準備が整いました。ダイニングへどうぞ」
シューネの淡々とした声が廊下を満たす。私はセイルと目を合わせ、小さく微笑んで一緒に足を進めた。
かつての白い結婚の夢は、もう過去。これから先、私は“本当の恋”を糧に、私自身の意志で幸せを掴んでいく。リナとの思い出も、リオネル殿下との波乱も、すべてこの一歩につながる道程だったのだと信じて。
こうして、私の新たな人生が本当の意味で幕を開ける。
——自由と、本当の恋を手に入れる、私の物語はまだ続いていくのだから。
季節がひとつ巡り、王都にも秋の風が吹き始めた頃。私はすでにセイルとの交際を両親に報告し、驚かれながらも何とか認めてもらう方向へ動いている。ただし、正式な婚約はまだ先。セイルが「きちんと叙任されるまで待ってほしい」と言うからだ。
それでも私は以前のように退屈することなく、彼と会うたびにささやかな幸せを感じている。ひとりで読む本もお茶もいいけれど、大切な人がいる生活というのは、こんなにも心を豊かにしてくれるのだと思い知った。
そんなある日、私は父から呼び出され、「王宮から、こんな報告書が届いたぞ」と渡された。
そこには、かつて第二王子リオネル殿下だった人物の“近況”が、簡素に記されていた。軍事漏洩の責任を負わされ、辺境の地へ“派遣”という名目で送られた殿下は、近頃では荒れ果てた土地の開墾や警備に追われ、まともな衣食住も得られずに苦労しているらしい。
さらに、殿下に付き従っていた人間の多くは逃げ出し、今はわずかな兵だけを率いて荒野で奮闘しているとか。平民出身のリナも、国外追放の際に行方知れずとなり、殿下と再会できた様子は全くない。つまり、殿下は独りぼっちも同然ということだ。
「……まあ、ざまあというべきかしらね」
私は書類を淡々と読み終え、紅茶を啜る。昔なら「かわいそう」と思ったかもしれないが、今はただ「あれだけリナに優しくしていたのに、最終的に何も守れず、自分だけ泥を被らされているのか」と感じるばかりだ。
もちろん、殿下自身も権力闘争の犠牲者ではあるのだろう。愛する女性を守ることもできず、今は極限の地で苦悶している。私の胸に小さな痛みが走らないわけではないが——しかし、彼が招いた結果なのだから仕方ない。政治の世界に足を踏み入れた以上、それが責任というものだ。
「昔の私なら、この結末を聞いて“まあいい気味”と笑い飛ばせたかもしれない。でも、今はもう……わりとどうでもいいわね」
ただの感想を呟いて、私は茶菓子を口に運ぶ。もう私はあの人に振り回されることもない。
あの日々の喧噪が嘘のように、私は新しい日常を生きている。リナのことは今でも心の片隅で気にかかるけれど、いつかどこかで生き延びていて、あの子の笑顔を取り戻していてくれたらと祈るばかりだ。
そして今、私には守りたい人がいる。愛する人と、穏やかな未来を築いていくために、私は自分らしく生きよう。もう、“白い結婚”に縛られる必要はないのだ。
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エピローグ
夕暮れの空がオレンジ色に染まる。私は屋敷のバルコニーに出て、遠く見える王都の街並みを眺めていた。そんな私のそばに、セイルが静かに寄り添う。
騎士団で日々鍛えられている彼は、少し逞しくなったようで、その存在感が頼もしい。いつの間にか、ごく自然に私の横に立つようになった。
「ルージュ。明日は非番だ……どこかに行きたい場所はあるかい? 前に話していた、あの丘にある小さなパン屋へ行ってもいいし、ちょっと遠くまで馬車で行くのもいい」
「そうね……じゃあ、パン屋さんに行こうかしら。そこで焼きたてを買って、丘の上で一緒に食べるってのも楽しそう」
「うん。楽しみだね」
セイルが優しく微笑むのを見て、私も自然と表情が緩む。王都には美味しいお菓子やスイーツも多いが、最近はこんなふうに一緒に食べる機会のほうが楽しみだった。
風が少し冷たくなってきたので、私はバルコニーをあとにし、セイルと並んで屋内へ戻る。夜が来る前に、温かな食事を囲み、家族のようなひとときを過ごす。そんな当たり前の時間が、私にはかけがえのない幸福になりつつあった。
(結局、私は自分で思っていたよりも“誰かとの結びつき”を望んでいたのかもしれないわ)
リオネル殿下との政略婚を経て、私はようやく気づいた。かつての私が追い求めていた“自由”は、確かに大切だけれど、孤独な世界に閉じこもることとイコールではない。
今、私はセイルの愛を受け入れ、私も彼のために何かをしてあげたいと心から思っている。彼が遠征に行くときは心配になるし、帰ってきたら喜んで迎えたい。そういう自然な感情に身を任せる心地よさを知ってしまったのだ。
そして、いずれは——父や母の了承を得て、本物の婚姻を結ぶ日が来るだろう。そのとき、私は悔いのない選択だと胸を張れるはずだ。
「お嬢様、セイル様。夕食の準備が整いました。ダイニングへどうぞ」
シューネの淡々とした声が廊下を満たす。私はセイルと目を合わせ、小さく微笑んで一緒に足を進めた。
かつての白い結婚の夢は、もう過去。これから先、私は“本当の恋”を糧に、私自身の意志で幸せを掴んでいく。リナとの思い出も、リオネル殿下との波乱も、すべてこの一歩につながる道程だったのだと信じて。
こうして、私の新たな人生が本当の意味で幕を開ける。
——自由と、本当の恋を手に入れる、私の物語はまだ続いていくのだから。
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