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3-3. 魔女の宣告
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3-3. 魔女の宣告
火刑台の炎がようやく静まると、地面には赤黒い灰だけが無数に散らばっていた。灰が舞い上がる中、聴衆の誰もが息を呑み、ただただその場に立ち尽くしている。死角を埋めるように張り巡らされた十字架は、もはやどの身元も示してはいなかった。しかし、火の中から、ひとりの女が立ち上がる。
リリス──西の森で「善き魔女」と呼ばれ、幾度となく人の命を救ってきた彼女は、全身を焦がすはずの炎をものともせず、黒灰にまみれながらも、凛とした佇まいで火刑台の中央に降り立った。ローブは焦げ跡を残すが、その胸元から足先に至るまで一切の傷ひとつなく、髪は風をまとい、紫紺の瞳は獄炎の赤に染まりながらも、確かな意志を映し出している。
群衆がざわめき、審問官や護衛兵までもが後退する。誰一人、この光景を説明できず、ただ「奇跡だ」「悪魔の仕業だ」と口々に囁くばかりだった。その隙に、リリスはゆっくりと両腕を広げ、燃え尽きた木屑を払い落とすように一礼する。十字架の拘束は跡形もなく消え、縄の痕だけが皮膚にかすかに赤みを帯びて残っていた。
──一筋の沈黙が、広場を支配する。
その沈黙を切り裂くように、リリスの声が響いた。
「どう? 大切なものを奪われる気持ちは?」
鋭く、しかし冷ややかな嘲笑が含まれたその一言は、炎を超えて聴衆の心を震わせる。審問官の顔が土のように青ざめ、護衛兵の手が松明を持つ腕を強く握り締めた。だが誰も、声を返すことはできない。
「あなたたちが、さんざんやってきたことよ。
罪なき人を“魔女”と決めつけ、恐怖に駆られた民衆の命を奪い、
拷問の快楽を味わい、
これが正義だと称して、私は無数の檻に繋がれてきた。
だが、本物の魔女は、人間の手など借りず、
自らの裁きを行う――
あなたたちに、本物の“火刑”を見せてあげる。
天罰? ざまあ見ろって?
ふふ……いい言葉ね。
だけど私の“ざまあ”は、あなたがたの想像をはるかに超えるものよ。」
リリスはゆっくりと足を踏み鳴らし、周囲の灰を散らした。彼女の周りに、かすかな風が起こり、焔の残り火が再び宿り始めたかのようにチロチロと赤い光を放つ。火の粉は空へ舞い上がり、聴衆の顔に降り注ぎ、肌を熱く刺激する。
「あなたたちが信じていた“裁き”は、
偽物だった――
ただの権力と恐怖による見せしめに過ぎん。
無垢の少女を焼き、生きたまま地獄を味わわせたあなたがたが、
今度は同じ苦しみを味わう番よ。」
審問官は弾かれたように後ずさりし、馬蹄が石畳を乱打する音が広場に轟く。護衛兵は指揮官に視線を送り、武器を構える。しかし、誰一人リリスに攻撃できず、硬直したまま立ちすくんでいる。
「裁判? 魔女狩り?
狩られるのも、裁かれるのも――
お前らだ!」
その声が炸裂した瞬間、炎の残滓(ざんし)が一層赤く燃え上がり、広場の人々は驚愕と恐怖で顔を歪めた。火の粉が舞う視界の先、リリスは一歩前へ出ると、胸元から自らの魔力を解放するように手を掲げた。彼女の掌(てのひら)には小さな火の玉がいくつも生じ、焔の雫となって宙を泳ぐ。
少女たち四人は驚きながらも、リリスを取り巻く大きな魔力の渦に包まれ、泣きじゃくる声は次第に静まっていった。彼女たちにはリリス以外、もはや何も見えない。恐怖も、絶望も消え去り、ただリリスの“救い”を待つかのように目を閉じた。
リリスは火の雫をそっと掬い上げ、宙にそっと置くと、炎の雨が群衆へと降り注いだ。赤い光の粒が聴衆の肩や額に触れると――その者は無言で崩れ落ち、燃え盛る苦痛に顔を歪めた。咆哮(ほうこう)と断末魔の叫びが広場に木霊し、かつての「正義」は濁流となって聴衆を飲み込む。
地に倒れ伏した者、火刑台の残骸へ駆け寄る者、逃げ惑う群衆――すべてが“リリスの裁き”にのみ込まれ、王都は混乱と地獄絵図へと変貌した。
炎が完全に沈黙したとき、赤い灰の海の中央に、リリスは再び立っていた。足元には数えきれぬ死々がありながら、彼女は揺るぎなく、そして厳かに宣告を下す。
「これが、あなたたちの罪──
私に“魔女”の烙印を押し、
無実の者を火へ投じた罪の重さよ。
神の御手は、こんな偽りに満ちた裁きを見過ごしたままかしら?
いや……この世界には、私がいる。
これが“本物の裁き”だと、
今一度、世界に示してあげる──」
その声は、余韻とともに静かに消えていった。灰と煙が宙に漂う中、王都の上空には最初の陽光が差し込み、赤黒い灰が金色に煌めく。新たな朝の訪れとともに、“真の魔女裁判”は終わり、世界は未曾有の震撼を刻み込まれたのだった。
火刑台の炎がようやく静まると、地面には赤黒い灰だけが無数に散らばっていた。灰が舞い上がる中、聴衆の誰もが息を呑み、ただただその場に立ち尽くしている。死角を埋めるように張り巡らされた十字架は、もはやどの身元も示してはいなかった。しかし、火の中から、ひとりの女が立ち上がる。
リリス──西の森で「善き魔女」と呼ばれ、幾度となく人の命を救ってきた彼女は、全身を焦がすはずの炎をものともせず、黒灰にまみれながらも、凛とした佇まいで火刑台の中央に降り立った。ローブは焦げ跡を残すが、その胸元から足先に至るまで一切の傷ひとつなく、髪は風をまとい、紫紺の瞳は獄炎の赤に染まりながらも、確かな意志を映し出している。
群衆がざわめき、審問官や護衛兵までもが後退する。誰一人、この光景を説明できず、ただ「奇跡だ」「悪魔の仕業だ」と口々に囁くばかりだった。その隙に、リリスはゆっくりと両腕を広げ、燃え尽きた木屑を払い落とすように一礼する。十字架の拘束は跡形もなく消え、縄の痕だけが皮膚にかすかに赤みを帯びて残っていた。
──一筋の沈黙が、広場を支配する。
その沈黙を切り裂くように、リリスの声が響いた。
「どう? 大切なものを奪われる気持ちは?」
鋭く、しかし冷ややかな嘲笑が含まれたその一言は、炎を超えて聴衆の心を震わせる。審問官の顔が土のように青ざめ、護衛兵の手が松明を持つ腕を強く握り締めた。だが誰も、声を返すことはできない。
「あなたたちが、さんざんやってきたことよ。
罪なき人を“魔女”と決めつけ、恐怖に駆られた民衆の命を奪い、
拷問の快楽を味わい、
これが正義だと称して、私は無数の檻に繋がれてきた。
だが、本物の魔女は、人間の手など借りず、
自らの裁きを行う――
あなたたちに、本物の“火刑”を見せてあげる。
天罰? ざまあ見ろって?
ふふ……いい言葉ね。
だけど私の“ざまあ”は、あなたがたの想像をはるかに超えるものよ。」
リリスはゆっくりと足を踏み鳴らし、周囲の灰を散らした。彼女の周りに、かすかな風が起こり、焔の残り火が再び宿り始めたかのようにチロチロと赤い光を放つ。火の粉は空へ舞い上がり、聴衆の顔に降り注ぎ、肌を熱く刺激する。
「あなたたちが信じていた“裁き”は、
偽物だった――
ただの権力と恐怖による見せしめに過ぎん。
無垢の少女を焼き、生きたまま地獄を味わわせたあなたがたが、
今度は同じ苦しみを味わう番よ。」
審問官は弾かれたように後ずさりし、馬蹄が石畳を乱打する音が広場に轟く。護衛兵は指揮官に視線を送り、武器を構える。しかし、誰一人リリスに攻撃できず、硬直したまま立ちすくんでいる。
「裁判? 魔女狩り?
狩られるのも、裁かれるのも――
お前らだ!」
その声が炸裂した瞬間、炎の残滓(ざんし)が一層赤く燃え上がり、広場の人々は驚愕と恐怖で顔を歪めた。火の粉が舞う視界の先、リリスは一歩前へ出ると、胸元から自らの魔力を解放するように手を掲げた。彼女の掌(てのひら)には小さな火の玉がいくつも生じ、焔の雫となって宙を泳ぐ。
少女たち四人は驚きながらも、リリスを取り巻く大きな魔力の渦に包まれ、泣きじゃくる声は次第に静まっていった。彼女たちにはリリス以外、もはや何も見えない。恐怖も、絶望も消え去り、ただリリスの“救い”を待つかのように目を閉じた。
リリスは火の雫をそっと掬い上げ、宙にそっと置くと、炎の雨が群衆へと降り注いだ。赤い光の粒が聴衆の肩や額に触れると――その者は無言で崩れ落ち、燃え盛る苦痛に顔を歪めた。咆哮(ほうこう)と断末魔の叫びが広場に木霊し、かつての「正義」は濁流となって聴衆を飲み込む。
地に倒れ伏した者、火刑台の残骸へ駆け寄る者、逃げ惑う群衆――すべてが“リリスの裁き”にのみ込まれ、王都は混乱と地獄絵図へと変貌した。
炎が完全に沈黙したとき、赤い灰の海の中央に、リリスは再び立っていた。足元には数えきれぬ死々がありながら、彼女は揺るぎなく、そして厳かに宣告を下す。
「これが、あなたたちの罪──
私に“魔女”の烙印を押し、
無実の者を火へ投じた罪の重さよ。
神の御手は、こんな偽りに満ちた裁きを見過ごしたままかしら?
いや……この世界には、私がいる。
これが“本物の裁き”だと、
今一度、世界に示してあげる──」
その声は、余韻とともに静かに消えていった。灰と煙が宙に漂う中、王都の上空には最初の陽光が差し込み、赤黒い灰が金色に煌めく。新たな朝の訪れとともに、“真の魔女裁判”は終わり、世界は未曾有の震撼を刻み込まれたのだった。
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