『無関係ですって言ってるのに! ~婚約破棄の次の標的にされたので、王都から逃げました~』

鍛高譚

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9話

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山道というのは、想像以上に過酷なものだった。

 

 わたし、ミラージュ・ダッソーは今、馬車に揺られながら、未舗装の岩だらけの道を進んでいる。
 お供は雇っている御者だけ。護衛などはおらず、それこそ徒歩の旅人が一人か二人、たまたま同じ道を行くのを見かけるくらいで、ほとんど誰もいない。

 

 夜に入れば冷え込みが厳しく、昼は山の天気が急に変わりやすい。
 霧が出たり、突然の雨に見舞われたりと、心配事が絶えない。
 この辺りは盗賊も多いと聞くし、万一、荷車の車輪が壊れたら立ち往生だ。
 けれど、わたしは王家の捜索網を避けるため、あえてこの険しいルートを選ぶしかなかった。

 

 あの王子ボルドーの無茶な“婚約宣言”を振り切り、“反逆者”と呼ばれても構わないと逃げ出してから、もうどれくらい経っただろう。
 まだ日数としてはそれほどでもないはずなのに、あまりに多くの出来事がありすぎて、ひどく長い時間が経過したように感じる。

 

 これまでは、途中で立ち寄った村や町で、いろんなトラブルに首を突っ込んでしまった。
 実は積極的に首を突っ込んだつもりはなくて、ただ目の前で困っている人を放っておけなかっただけだ。
 結果的に盗賊を撃退したり、詐欺師を暴いたりして、頼りになるお嬢さんだと妙に評判になってしまった。
 ……目立ちたくないのに、どうしてこうなるのだろう。

 

 「お嬢さん、もう少しで峠のふもとに着きますが、そこで休憩にしましょうか?」
 御者が、がらがらと揺れる馬車の前方から振り返って声をかける。

 

「そうですね。できれば安全な場所がいいのですが……峠のふもとって、人家はあるんですか?」
「いやあ、たしか昔は小さな山小屋があったんですけど、今は使われてないかもしれません。とにかく道沿いにちょっとした広場のようになってる平地があるんで、そこで野宿する方も多いらしいですよ」

 

 野宿か……この辺りは盗賊の出没情報も多い。油断は禁物だ。
 とはいえ、今日は朝からずっと馬車を走らせているし、さすがに馬も人も休憩が必要だろう。
 少なくとも、無理に峠を夜中に越えようとするのは危険すぎる。暗闇に足元を取られたら、崖から転落しかねない。

 

「わかりました。その広場まで行きましょう。少し周囲を見て、安全そうなら夜を過ごすことにしますね」
「はい、そうしましょう」

 

 こうして馬車は、夕刻が迫る中、ゆっくりと坂を上っていく。
 途中、視界の先には険しい山々が連なり、すでに頂上付近は深い雲に覆われている。日の落ちる速度が、平野より早い。
 冷たい風が吹き抜け、わたしは思わず薄手のコートをきゅっと閉じた。これ以上暗くなる前に、何とか平坦な場所に着きたい。

 

 ――やがて、ほんの少しだけ開けた場所に到着する。
 岩肌の間に草地が広がり、小さな広場のようになっている。ほかの旅人らしき姿は見えない。
 人間が休めそうなスペースはあるが、周囲を見渡しても建物などは見当たらない。かつて小屋があった痕跡らしき古い木片が散乱しているのみだ。

 

「ここがその場所ですか?」
「ええ、恐らくそうですね。痕跡を見るに、昔は休憩所みたいな小屋があったようです。今はもう朽ち果ててしまってますねえ……」

 

 御者が馬車を止め、まずは馬を繋いで休ませる。わたしは魔力探知の感覚を研ぎ澄ませながら、あたりを歩いて警戒する。
 別段、モンスターの気配や人が潜んでいる兆候はないようだ。盗賊が待ち伏せしている様子も、今のところ感じられない。

 

「大丈夫そうですね。ただ、夜中に誰か来る可能性はあるので、交代で見張りを立てましょう。わたしも起きていられますから」
「助かります、お嬢さん。じゃあ今のうちにテントを張っちゃいましょうか」

 

 わたしと御者は簡易テントと寝袋を取り出し、馬車のそばに設置する。
 ついでに小さな焚き火を起こすために、周囲の木片や枯れ枝を拾い集める。
 山の夜は冷えるが、焚き火と毛布さえあれば、なんとかしのげるだろう。

 

 やがて、パチパチと薪の燃える音が暗がりに響き始めた。
 夕闇が完全に山を包み、空には無数の星が瞬いている。
 暖かいと感じるより先に、冷気が肌を刺す。明日の朝は霜が降りるかもしれない。

 

 さて、簡単な食事を済ませ、交互に睡眠をとることになる。
 「お嬢さん、先に寝てくださいよ。自分はこのまま火の番をしてますから」
 御者はそう言ってくれるが、ひとりに任せるわけにはいかない。
 わたしは「じゃあ、半分ずつで」と提案し、彼が疲れそうになる頃を見計らって交代することにした。

 

 数時間後、夜も更けたころ。
 わたしは焚き火のそばで、多少の眠気と戦いながら周囲を警戒していた。御者は先に寝袋にくるまって休んでいる。
 ときどき風の音が唸るように響き、木々や岩がざわめいているようにも聞こえる。魔物が近づいたりしていないか、耳を澄ませてしまう。

 

 すると、そのときだった――かすかに馬の蹄の音らしきものが聞こえてきた。遠くから、石を踏みしめるカツカツという音。
 人が来るのだろうか、それとも通り過ぎるだけか。こんな夜更けに山道を行くのは、よほどの事情があるはずだ。
 わたしは焚き火の光量を少し絞り、身を低くして様子を窺う。万が一、賊か騎士団の手先だったら厄介だ。

 

 闇の中からゆっくりと姿を現したのは、黒いマントを羽織った人影。馬にまたがってはいるが、速度はあまり出していない。
 馬の歩み方も危なげな様子はなく、荷物も見える。旅人か商人か――それとも王宮の誰か?
 一人のようにも見えるが、用心しなければ。わたしは杖を握りしめ、いつでも魔法を放てるように緊張を高める。

 

 相手は焚き火の光に気づいたのか、馬を止めたようだ。そして、数秒の間を置いてから、ゆるやかにこちらへ近づいてくる。
 焚き火の周囲はまだ暗いが、相手がどう出るのか不安で仕方ない。
 ――しかし、やがてその人影から聞こえてきたのは、震えるような、どこか申し訳なさそうな声だった。

 

「す、すみません……。こんな深夜に人がいるとは思わなかったのですが……少しだけ、火を分けてもらえませんか。寒くて……もう馬の脚も限界で……」

 

 どうやら敵意はなさそうだ。盗賊や騎士団の強面という感じでもない。声も若い女性のものに聞こえる。
 わたしは少しだけ警戒を解き、そっと灯りをかざす。
「あなたは……旅の方ですか?」
「はい……そうです。峠を越えようと思っていたのですが、思ったより道が険しくて、夜になっても抜けられなかったんです……」

 

 マントのフードを外したその人は、確かに若い女性だった。髪は淡い栗色で肩下くらいの長さ。顔立ちは可憐だが、どこかやつれたようにも見える。
 馬からは疲労のためか白い息が上がり、彼女自身も小刻みに震えている。
 この気温では、野営の備えがなければ体調を崩してもおかしくない。

 

「もちろん、火ぐらいおすそ分けしますよ。よかったら、一緒に温まりませんか? テントは狭いですが、風よけくらいにはなるかと」
 ここで追い払ったら、彼女が危険な目に遭うかもしれない。どう見ても過酷な夜を越す装備は持っていない様子だ。
 ――ただ、わたしも用心は怠らない。突然襲われる可能性も考え、杖を手放さずに言葉をかける。

 

「ありがとうございます……助かります……」
 彼女は安堵したように馬を近くの岩へ繋ぎ、とぼとぼと歩いてくる。
 焚き火の光が彼女の姿を照らす。荒れた山道を旅している割には、けっこう上質な生地の服を着ている。ボロボロではないものの、袖や裾は土埃で汚れている。
 荷物はあまり多くなさそうだ。大型の革鞄ひとつだけ。旅慣れていない貴族令嬢か、あるいは商家の娘なのだろうか。

 

「どうぞ、こちらへ。火のそばなら少しは暖かいですよ」
「は、はい。すみません、本当に……」
 彼女は焚き火の前に膝をつき、両手をかざして熱を受ける。ほっとしたように息を吐き、少し目を細める。
 わたしは熱いお茶でもあればよかったが、今のところ水と簡易スープの素くらいしかない。
 でも飲み物を与えるだけでも体力の回復に役立つだろう。さっと小鍋に水を張り、スープを用意する。

 

 彼女がじっと火を見つめている間、わたしは改めて名乗りを上げるべきか迷う。
 ……余計な情報は与えたくない。わたしは「ミラージュ・ダッソー」という名であることを伏せて旅をしてきた。
 だから、まずは「旅の者です。あなたは?」と訊ねるのが無難だろう。

 

「よろしければ、お名前を伺っても?」
 そう尋ねると、彼女はどこか警戒を解かず、少し口ごもる素振りを見せた。
 その反応に、わたしも「互いに似たような立場かもしれないな」と感じる。つまり、“何らかの理由で逃げてきた”可能性が高いということだ。

 

「わ、わたしは……リラ、と申します。商家の出で……少し、事情があって家を飛び出してきてしまって……」
 それはわたしと似たような境遇というか、逃げているという点では同じように見える。
 が、わたしはあえてそれ以上は深く突っ込まない。向こうも聞かないでほしいだろうし、こちらとしても詮索するつもりはないからだ。

 

「リラさん、よろしければこのスープをどうぞ。少し体が温まりますよ」
「ありがとう……優しいんですね」
「いいえ、ただの旅人です。こんな山中で助け合わなかったらお互い大変でしょう?」

 

 リラは「そうですね」と弱々しく笑い、両手でカップを持ち、一口含んでほっと息をつく。
 この姿を見ていると、本当に何もわからないまま飛び出してきたように思える。装備の不備、そしてあからさまに孤独そうな雰囲気。
 ――わたしも似たようなものだけれど、最低限の備えはしている。彼女は“備え”という概念すらなかったのかもしれない。

 

 それから少しの間、わたしたちは焚き火の弾ける音を聞きながら、言葉少なに過ごす。
 火の光に照らされたリラの瞳には、うっすらと涙の跡のようなものが残っていた。
 尋ねたい気持ちもあるが、立ち入っていいかどうかは別の話だ。山の夜は長い。無理に聞き出す必要はないだろう。

 

 やがて、リラが自ら口を開いた。
「……わたし、実はお見合い話があって……それが嫌で逃げ出してきたんです。家の者はきっと激怒しているでしょうね。特に、わたしの婚約者候補の家なんかは……とても権力がある家らしくて……」
「そうでしたか……」
 まさにわたしも「婚約話から逃げた」身だ。親近感を覚えないでもない。
 リラは微笑みとも苦笑いともつかない表情を浮かべ、続ける。
「商家に生まれたからには、有利な縁談を結ぶのが当たり前。そう言われて育ちました。でも……どうしても、それがわたしには耐えられなかったんです」

 

 わたしは小さく頷きながら、彼女の話に耳を傾ける。
 婚約話の相手が、とても傲慢な人間だったのだとか。彼女の父親は財政的にその家に借りがあり、逆らえない立場だったのだとか。
 聞けば聞くほど、リラはどこかで聞いたような“巻き込まれ型”の運命を背負わされているようだ。

 

「わたし、こう見えても勉強が好きで、家の商売を継ぐのなら経理や商品管理をしっかり学びたいと思っていたんです。でも……お嫁に行って、ただ家庭を守り子どもを産めと言われて……。嫌で嫌で……」
「そうですか……それは……大変でしたね」
「もし、契約を破談にしたら、父は破産に追い込まれるかもしれない。でも、わたし自身が幸せとは思えなくて……。結局、父にも話せず、こうして逃げてきました……馬鹿でしょう? 娘として最低ですよね……」

 

 リラの声は震えている。
 わたしは否定するどころか、むしろ応援したくなってしまう。自分を守るために家を飛び出すという選択は、確かに周囲を困らせるかもしれないが、少なくとも自分の意思を持つことは悪いことじゃない。
 ……わたしが王子の無茶な求婚から逃げたのと、ある意味で同じだ。

 

「最低なんかじゃないですよ。自分の人生を守るためなんだから……。もちろん、ご家族もつらいかもしれないけど、それはリラさん一人だけが責められることじゃないんじゃないでしょうか」
「ミラ……さん、ありがとう……」
 いけない、思わず口走りかけた自分の本名を途中で切り替えた。
 「ミラ」くらいまでしか言わなかったが、リラはそれに気づかない様子だ。
 気まずさを紛らわすように、わたしは「どういたしまして」と微笑む。

 

 その後、再び沈黙の時間が訪れる。
 リラは疲労しきっているのだろう。温かいスープを飲んだあと、まるで力が抜けたように、少しずつうとうとし始めた。
 「もしよかったら、もう少し火のそばで休んでいていいですよ。わたしが見張りを続けるので」
 そう告げると、彼女はわずかに頭を下げて、眠気に逆らわず体を横たえた。

 

 わたし自身も眠いが、御者の代わりに番をしている以上、そうそう寝落ちするわけにはいかない。
 それに、リラを加えた三人旅になるかどうかはまだわからないが、ひとまず彼女が回復するまでは面倒を見ることになりそうだ。
 別に義務感があるわけではない。でも、このまま放っておけば、リラが今にも倒れてしまいそうだから。

 

 そんなことを考えながら、夜はゆっくりと過ぎていった。
 朝が来る頃には、わたしの方がへとへとになっていたが、御者が起きて交替してくれたおかげで、少しだけ仮眠をとることができた。
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