『無関係ですって言ってるのに! ~婚約破棄の次の標的にされたので、王都から逃げました~』

鍛高譚

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12話

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――夜。
 わたしは割り当てられた簡易テントの中で、御者のオットーとリラの三人で話し合いをしていた。
 「盗賊退治に協力するか、あるいは断ってこのままこっそり国境を越えるか」。選択肢は大きく二つだ。

 

 オットーは「お嬢さんの決めるとおりにしますよ」と言うだけ。そもそも彼は雇われの身だから、そこまで深くは干渉しない。
 リラは少し申し訳なさそうに、「でも、ここを出ていっても行くあてがないし、わたしは正直、グレイシャ公国の滞在許可証がもらえるならとてもありがたい……」と呟く。

 

「わたしとしても、国境を越えたあとに“逃亡者”扱いされるのは嫌です。いずれ王子の手が伸びてくるかもしれませんし……。でも、盗賊退治に加わるなんて危険ですよね」
「まあ、確かに危ないっちゃあ危ないです。だけど、あの騎士団の連中もそこそこ精鋭みたいですし、共同作戦でうまくやれば、危険を最小限に抑えられるかもしれませんねえ」
 オットーは肩をすくめてそう言う。
 リラは顔を曇らせながらも、「わたしは戦力になれそうにありませんが……ミラさんが戦えるなら、わたしも少しは手伝いを……」と申し訳なさそうだ。

 

 ……どうする?
 目立ちたくないのは山々だが、公国の滞在許可と安全が保証されるなら悪い条件ではない。いっそ、わたしが戦力として手柄を立て、何かの形で身を隠す手助けを得ることができるなら、王子に見つかるリスクも減らせるかもしれない。


 翌朝、わたしはアレクセイ隊長に盗賊退治への協力を申し出る。
 隊長は「助かる!」と強く頷き、「では、まずは計画を立てよう」と部下を集めた。
 こちらとしても、彼らの作戦に同行する形になるので、時間をかけて打ち合わせを進めることに。

 

 あちらも、わたしが魔法を使えると知ると、「どんな魔法が得意だ?」「攻撃魔法は何種類ある?」などと矢継ぎ早に訊ねてくるが、わたしはそのすべてに答えたくはない。過度に情報を与えるのは危険だ。
 なので「光や氷の魔法で足止めができます」とだけ伝える。隊長は「十分だ。追い詰めるには最適だな」と満足そうだ。

 

 作戦はこうだ。
 まず、隊長たちは峠の周辺で盗賊の拠点を探る。何らかの形で偵察を行い、位置を突き止める。
 わたしたちはその偵察隊に同行し、もし盗賊が出てきたら魔法で攪乱し、隊員たちが一斉に制圧する。
 大規模な戦いになる可能性が高いが、団員は十数名いるし、わたしもサポート役としてなら動けるだろう。リラとオットーは後方待機でサポートしてもらう。

 

 準備には数日かかりそうだ。補給や偵察、周辺住民への聞き込みが必要だから。
 その間、わたしたちは騎士団の野営地や、付近の村の拠点を移動しながら、結局のところ“助っ人”として駆り出される形になる。
 大丈夫なのか、と自問することもあるが、ここまで来たらやるしかない。

 

 ――こうして、わたしの逃亡生活は思わぬ方向へと転がっていった。
 もともと王都の喧騒から逃れ、“誰にも巻き込まれずに”生きていきたかっただけなのに。
 今や、隣国の騎士団と連携して盗賊退治に臨もうとしている。
 わたしはこの先、果たして“平穏”を得ることができるのだろうか。
 王子ボルドーの影は、まだどこかで迫っているかもしれない。ミレディアの暗躍があるやもしれない。
 それでも、わたしは前に進むしかないのだ。

 

 ――そう決意を固めながら、夜の野営地のランプの灯の下、わたしは魔法の復習をする。
 いざという時に備えて、氷属性や光属性以外の簡易魔法の練習をしておこう。
 これ以上は絶対に巻き込まれないように……と祈りたいところだけれど、もう十分に巻き込まれている気がする。


 

「……わたし、決めました。協力しましょう」
 リラはホッとしたように笑みを浮かべ、オットーも「了解しました」と一礼する。
 どうなるかわからないが、ここで決断しないと先に進めない。わたしは自分を奮い立たせることにした。
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