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第1章 婚約破棄と白い結婚の提案
2話
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しかし、そんな彼女の淡々とした態度に、ある日エドワルドは耐えられなくなったのだろう。
「カーテンリンゼ。俺はお前との結婚を考え直させてもらう」
王宮に招かれた席で、彼はそう言い放った。まるで優しい表情を模した仮面を脱ぎ捨てるかのように、その声にはわずかな苛立ちが滲んでいた。
突然の婚約破棄宣言に、周囲の侍女たちがどよめく。しかし、カーテンリンゼ本人は冷静そのものだった。むしろ「ようやくきたか」とでも言わんばかりに、ほんの少し眉をひそめた程度である。
「私は、これまでに王太子殿下に何か不快な思いをさせてしまったのでしょうか」
問いかける声は落ち着いていた。だが、王太子の返答もまた、遠回しではあるがはっきりとした拒絶であった。
「お前の態度はまるで人形のようだ。優美ではあるが、心がまったく伴っていない。俺は王太子として、表向きは完璧に取り繕うことができる相手を求めていた。だが、いざお前と顔を合わせ、言葉を交わせば交わすほど、その空虚さに耐えられなくなる。……俺は、形だけの結婚を望んでいるわけじゃない」
冷ややかな美貌を持つカーテンリンゼに対し、多くの者は“高嶺の花”として憧れを抱く。一方で、彼女の内面に近づこうとする者は、そこに暖かさを見いだせずに戸惑う。まるで深い湖の底を覗き込もうとしても、表面の鏡のような水面に自分が映るばかりで、内側が見えてこない。
エドワルドはそれに耐えられなくなったのだろう。王太子とはいえ、一人の若き男性だ。将来を共にする女性には、自分を必要とし、自分に心を開いてほしい――そう思うのは自然なことかもしれない。
「ですが、カーテンリンゼ。お前自身はどうなんだ? 俺との婚約に、何か感じるものはあったか? 嬉しさでも、不安でも、恐怖でもいい。何か、こう……心の底から湧きあがるものが、少しでもあったのか?」
エドワルドの問いかけに、カーテンリンゼは言葉を詰まらせる。まさに、彼の言う通りだった。喜びも不安も、心を震わすような感情も、彼女の中には存在しなかった。たとえ相手が国の王太子であっても、愛を求める情熱を抱くことはできなかった。
「私は……」
どこか申し訳なさそうに言葉を切ると、カーテンリンゼはかすかに瞳を伏せた。
それだけで、彼女の答えはわかる。
「そっか。やっぱり、そうなんだな」
エドワルドは静かにうなずいた。仮面の優しさを捨てた姿は、いつもよりも人間味を帯びているように思える。
「だから、もういい。俺はお前のように冷淡な女と結婚して、これからの人生を灰色に染めるわけにはいかない。形だけの婚姻は、王太子妃の座を演じ切れる相手なら誰でもいいってわけでもないんだ。……俺は、愛する者と結ばれたい。お前にそれを求めるのは無理そうだ」
そう言って、エドワルドは正式に婚約破棄を言い渡した。
「カーテンリンゼ。俺はお前との結婚を考え直させてもらう」
王宮に招かれた席で、彼はそう言い放った。まるで優しい表情を模した仮面を脱ぎ捨てるかのように、その声にはわずかな苛立ちが滲んでいた。
突然の婚約破棄宣言に、周囲の侍女たちがどよめく。しかし、カーテンリンゼ本人は冷静そのものだった。むしろ「ようやくきたか」とでも言わんばかりに、ほんの少し眉をひそめた程度である。
「私は、これまでに王太子殿下に何か不快な思いをさせてしまったのでしょうか」
問いかける声は落ち着いていた。だが、王太子の返答もまた、遠回しではあるがはっきりとした拒絶であった。
「お前の態度はまるで人形のようだ。優美ではあるが、心がまったく伴っていない。俺は王太子として、表向きは完璧に取り繕うことができる相手を求めていた。だが、いざお前と顔を合わせ、言葉を交わせば交わすほど、その空虚さに耐えられなくなる。……俺は、形だけの結婚を望んでいるわけじゃない」
冷ややかな美貌を持つカーテンリンゼに対し、多くの者は“高嶺の花”として憧れを抱く。一方で、彼女の内面に近づこうとする者は、そこに暖かさを見いだせずに戸惑う。まるで深い湖の底を覗き込もうとしても、表面の鏡のような水面に自分が映るばかりで、内側が見えてこない。
エドワルドはそれに耐えられなくなったのだろう。王太子とはいえ、一人の若き男性だ。将来を共にする女性には、自分を必要とし、自分に心を開いてほしい――そう思うのは自然なことかもしれない。
「ですが、カーテンリンゼ。お前自身はどうなんだ? 俺との婚約に、何か感じるものはあったか? 嬉しさでも、不安でも、恐怖でもいい。何か、こう……心の底から湧きあがるものが、少しでもあったのか?」
エドワルドの問いかけに、カーテンリンゼは言葉を詰まらせる。まさに、彼の言う通りだった。喜びも不安も、心を震わすような感情も、彼女の中には存在しなかった。たとえ相手が国の王太子であっても、愛を求める情熱を抱くことはできなかった。
「私は……」
どこか申し訳なさそうに言葉を切ると、カーテンリンゼはかすかに瞳を伏せた。
それだけで、彼女の答えはわかる。
「そっか。やっぱり、そうなんだな」
エドワルドは静かにうなずいた。仮面の優しさを捨てた姿は、いつもよりも人間味を帯びているように思える。
「だから、もういい。俺はお前のように冷淡な女と結婚して、これからの人生を灰色に染めるわけにはいかない。形だけの婚姻は、王太子妃の座を演じ切れる相手なら誰でもいいってわけでもないんだ。……俺は、愛する者と結ばれたい。お前にそれを求めるのは無理そうだ」
そう言って、エドワルドは正式に婚約破棄を言い渡した。
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