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第2章 完璧なはずの生活と、夫の変化
10話
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――結果から言えば、カーテンリンゼはレオポルド・ヴァレンシュタイン公爵との契約結婚を受け入れることにした。
王太子との婚約破棄というスキャンダルで微妙な立場にあった彼女にとって、レオポルドからの「愛を求めない、干渉も少ない」という提案は、あまりに魅力的だったと言っていい。加えて、父と母、そしてアルベルト侯爵家にとっても、公爵との結びつきは悪い話ではない。新興の貴族とはいえ、今のレオポルド公爵は絶大な軍事力と財力、そして政治的影響力を握っている。王太子との縁を失いかけているアルベルト家にとって、その後ろ盾は大きな利益をもたらすだろう。
カーテンリンゼ自身もまた、形式的な結婚をするならば、徹底して割り切りたいという思いがあった。これまで周囲から「冷たい」と評されてきた自分ならば、愛のない結婚にも何の抵抗もないと自負していた。少なくとも、“王太子殿下に捨てられた女”というレッテルを覆すには最適の選択肢に思えたのだ。
そして挙式は、思いのほかあっさりした形で執り行われた。
もちろん、公爵夫人になるという大事な儀式である以上、王都の大聖堂を用いた正式な結婚式ではあったが、招待客は最低限。派手な祝宴も控えめで、王族は招かず、親族や親しい友人、あるいは公的に繋がりのある貴族たちのみが顔をそろえる。
「あくまでも、互いが納得する形でいい。私は盛大な式をする気はないし、お前を着飾って見せ物にするつもりもない。静かに、穏やかに、しかし正統な手続きだけはきちんと踏もう」
レオポルドがそう言ってくれたことに、カーテンリンゼは正直ほっとしていた。バラの香りに満ちた華美な披露宴も、きらびやかなドレスを着て何百人もの客人に取り囲まれるような豪華な式典も、彼女にとっては息苦しいだけだからだ。
かくして、カーテンリンゼはヴァレンシュタイン公爵家へと嫁ぐ。公爵夫人となったその日から、彼女は公爵邸の奥方として迎えられた。
そこには夫妻の寝室も用意されていたが、「互いに干渉しない」という契約に基づき、カーテンリンゼは自分専用の部屋を使うことが許可されていた。夫婦として見られる必要がある場面では同席をするものの、普段は別々の生活を送る――それが、二人が結んだ“白い結婚”の本質である。
愛を求めない、ただの契約に過ぎない結婚。だが、そのはずの生活が、のちにカーテンリンゼの心を少しずつ揺らしていくことになるのだと、このときの彼女はまだ知らないでいた。
王太子との婚約破棄というスキャンダルで微妙な立場にあった彼女にとって、レオポルドからの「愛を求めない、干渉も少ない」という提案は、あまりに魅力的だったと言っていい。加えて、父と母、そしてアルベルト侯爵家にとっても、公爵との結びつきは悪い話ではない。新興の貴族とはいえ、今のレオポルド公爵は絶大な軍事力と財力、そして政治的影響力を握っている。王太子との縁を失いかけているアルベルト家にとって、その後ろ盾は大きな利益をもたらすだろう。
カーテンリンゼ自身もまた、形式的な結婚をするならば、徹底して割り切りたいという思いがあった。これまで周囲から「冷たい」と評されてきた自分ならば、愛のない結婚にも何の抵抗もないと自負していた。少なくとも、“王太子殿下に捨てられた女”というレッテルを覆すには最適の選択肢に思えたのだ。
そして挙式は、思いのほかあっさりした形で執り行われた。
もちろん、公爵夫人になるという大事な儀式である以上、王都の大聖堂を用いた正式な結婚式ではあったが、招待客は最低限。派手な祝宴も控えめで、王族は招かず、親族や親しい友人、あるいは公的に繋がりのある貴族たちのみが顔をそろえる。
「あくまでも、互いが納得する形でいい。私は盛大な式をする気はないし、お前を着飾って見せ物にするつもりもない。静かに、穏やかに、しかし正統な手続きだけはきちんと踏もう」
レオポルドがそう言ってくれたことに、カーテンリンゼは正直ほっとしていた。バラの香りに満ちた華美な披露宴も、きらびやかなドレスを着て何百人もの客人に取り囲まれるような豪華な式典も、彼女にとっては息苦しいだけだからだ。
かくして、カーテンリンゼはヴァレンシュタイン公爵家へと嫁ぐ。公爵夫人となったその日から、彼女は公爵邸の奥方として迎えられた。
そこには夫妻の寝室も用意されていたが、「互いに干渉しない」という契約に基づき、カーテンリンゼは自分専用の部屋を使うことが許可されていた。夫婦として見られる必要がある場面では同席をするものの、普段は別々の生活を送る――それが、二人が結んだ“白い結婚”の本質である。
愛を求めない、ただの契約に過ぎない結婚。だが、そのはずの生活が、のちにカーテンリンゼの心を少しずつ揺らしていくことになるのだと、このときの彼女はまだ知らないでいた。
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