溺愛政略結婚 花嫁は女子高生

鍛高譚

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1-3 そして本人登場――まさかの迎えに

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1-3 そして本人登場――まさかの迎えに

 

「――お嬢さま、お迎えに上がりました」

 

そう言って現れたのは、黒塗りの大型高級車。
そのドアが滑らかに開き、中から現れたのは――

 

「……また本人……!?」

 

久川隼人。
昨日、突然家に来て婚約相手宣言をしてきた男。
今朝、玄関に現れた彼は、当然のようにスーツを着こなし、当然のように運転手付きの車で現れ、当然のように未来を連れ出そうとしていた。

 

「まだ話、終わってないんですけど!? というか、なんで今日も来てるんですか!?」

 

「お迎えに来ただけです。少しでも早く未来さんに“奥様としての生活”に慣れていただきたくて」

 

「その“奥様”って呼び方やめてください!! 高校生ですから!!」

 

未来は制服姿のまま玄関前に立ち尽くしていた。
鞄を持ち、ローファーを履き、明らかに“学校へ行く準備”をしているのに――

 

その彼女を、社長が自宅から迎えに来る。
どう考えても絵面が異常すぎる。

 

「今日は通学です! 私、登校するんです! ふつーに電車で行きます!!」

 

「電車……痴漢が多いと聞きますね。防犯的にもおすすめできません」

 

「防犯とかそういう話じゃなくてですね!?」

 

母は楽しそうに後ろから見守っている。
父は新聞を片手にコーヒーをすすりながら「もう行ってこい」という目で頷いてくる。

 

完全に退路を断たれた感があった。

 

「……で、どこに行くつもりなんですか。昨日“新居”とか言ってましたけど」

 

「はい。まずは荷物の確認と部屋の案内を。家具類も一通り揃えてあります」

 

「え……もう……? 住むこと前提で進んでる感じ……?」

 

「当然です。準備を怠るわけにはいきませんから」

 

(うわ……この人、マジで抜かりない……)

 

未来は観念して車に乗り込んだ。

 

運転手が静かにドアを閉め、車はスムーズに発進する。
窓の外には通学路。制服姿の生徒たちが、友達と楽しそうに歩いている。

 

(……ああいうの、私もするはずだったんだけどな)

 

ぼんやりと車窓を眺めていた。

 

「ちなみに……新居って、どのへんに?」

 

「都心です。セキュリティを最優先に考えて、警備付きのレジデンス内にあります。今は空調と温度管理も調整済みです。ペットはいませんが、希望があれば」

 

「いや、希望じゃなくて! そもそも“住む”っていう前提が――」

 

「荷物はあとでまとめてお送りします。制服や教材もこちらで対応できます。明日からはこちらから学校へ送迎します」

 

「勝手に段取り組まないでくださいぃぃぃ!」

 

未来の叫びは、ふかふかの座席に吸い込まれていった。

 

車はやがて、とある高層マンションの地下駐車場に入っていく。
地下とは思えないほど清潔で明るく、セキュリティゲートには顔認証と指紋認証までついている。

 

「……ほんとに、社長って感じですね……」

 

「はい。社長ですので」

 

「いや、返しがストレートすぎる……」

 

エレベーターで上階へ。
扉が開くと、そこは広々とした一室――**というより、ワンフロア全体が“家”**になっていた。

 

「ひ、広っ……!?」

 

天井が高く、シャンデリアが下がり、大理石の床がつやつやと光っている。

 

「こちらがリビングです。ソファはイタリア製。寝室は二部屋ご用意しましたが、どちらに寝ていただくかは未来さんのご希望で」

 

「えっ!? そ、それは……えっと……」

 

「ちなみに、キッチンはプロ仕様ですが、使う必要はありません。専属のシェフが常駐していますので」

 

「使わせてください!! 主婦的立場ください!!」

 

「掃除はメイドが三名います。ランドリーサービスも契約済です」

 

「出番ゼロじゃないですか!!」

 

未来は頭を抱えた。

 

「私、花嫁っていうより、観賞用のお飾りみたいじゃないですか……!」

 

「そんなことはありません。未来さんがここにいてくれるだけで、僕にとっては十分です」

 

「えっ……」

 

真顔でそんなことを言われて、未来は思わず顔をそむける。

 

心臓が、ほんの少しだけバクン、と跳ねた。

 

「……えっと、これって、“奥様扱い”なんですか?」

 

「はい。当然です。君は、僕の妻になる人ですから」

 

「……」

 

一応、「事実婚」ってことになってる。
まだ正式な夫婦じゃない。
なのにこの人は、最初から最後まで、一切ブレずに“夫婦”として接してくる。

 

――本気で、逃げ場がない。

 

未来はソファに腰を下ろし、ぐったりとしながら思った。

 

(この人……本気で、私のこと、大事にするつもりなんだな……)

 

(……でも、まだ心の準備が……できてません……)

 

視線の先には、どこか嬉しそうに部屋の説明を続ける久川隼人の姿。

 

その背中を見ながら、未来は小さく呟いた。

 

「……この人に、振り回される未来が……もう見えてるんだけどなぁ……」

 

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