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2-3 主婦になろうと意気込むもプロに完敗、「観賞用花嫁…?」と凹む
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2-3 主婦になろうと意気込むもプロに完敗、「観賞用花嫁…?」と凹む
朝。高級ベッドに寝転んだまま、未来は天井を見つめていた。
「……このままで、いいのかなあ」
ヨーロッパでの新婚旅行。
城のような新居。
プロのメイド、シェフ、執事、送迎付き生活。
一見すれば、理想的すぎる生活。
けれど、彼女は思っていた。
(なんか……私、何もしてない)
花嫁らしいことって、なんだろう。
家事? 料理? 家庭的な雰囲気?
どれもこれも、未来の生活には組み込む隙がない。
「……そろそろ、何かしなきゃまずいよね」
誰に言われたわけじゃない。
でも、“してもらってばかり”の生活は、落ち着かなかった。
(私だって、“お嫁さん”としてできること、あるはず……!)
そう思った未来は、ついに立ち上がる。
---
「……というわけで、私、朝ごはんを作ろうと思います!」
「お嬢様?」
メイドたちが同時に首を傾げる。
「今朝のメニューはすでにシェフが……」
「キャンセルして! 今日は私が作るから!」
さすがに“社長令嬢”の命令には逆らえず、メイドたちは戸惑いつつもキッチンを明け渡した。
未来は、エプロンを締めて気合を入れる。
「よし……いける……! 昨日ネットで見た、簡単朝ごはんレシピ……!」
――卵焼き、焼き鮭、お味噌汁、白ごはん。
(初心にかえって、和食だよね!)
手順は頭に入れた。
料理だって、家庭科の授業で何度もやったし、家でもたまに手伝ってた。
でも、プロの厨房は想像以上にハードルが高かった。
鍋の火力が強すぎて、卵焼きがスクランブルになり、
味噌汁は出汁を入れすぎてしょっぱくなり、
焼き鮭は……言うまでもない。
(や、やばい……! プロ仕様の器具、扱いづらすぎる……!)
あわてて盛り付けをしても、お店のような食器とのギャップがすごい。
見た目も、味も、家で作るのより雑になってしまった。
「……ま、まあ……気持ちが大事だよね、うん」
笑顔で無理やり自分を励まし、未来は隼人のもとへ朝食を運んだ。
---
「ふむ」
「ど、どうですか?」
ダイニングで、未来の作った朝ごはんを口にした隼人は、静かに箸を置いた。
「……まずくはない。けれど……やはりプロの味に慣れている分、差は歴然だ」
「う……そりゃそうですけどぉ!」
未来はうなだれる。
「い、一応、気持ちは込めたんですよ!? 頑張ったんですからね!?」
「そこは高く評価する。……だが、未来。君はもっと別の“価値”で、僕にとってかけがえのない存在だ」
「……またそれですか。何もしなくてもいいって、やつ……」
「そうだ」
「……私、観賞用なんですか?」
思わず出たその一言に、隼人の動きが止まる。
「観賞用?」
「だって……掃除も、料理も、洗濯も、プロがやってる。
学校の準備もメイドさんが手伝ってくれて。
わたし……ここで、ただ“いるだけ”になってません?」
それはずっと心のどこかに引っかかっていた違和感だった。
嫁として、なにかしている実感がない。
ただ隼人の横にいて、甘やかされて、褒められて、愛されて――
それって、本当に“夫婦”なのだろうか?
「私、ほんとは……普通に家事したり、買い物行ったり、
一緒にスーパーで何買う?とか、そういうのがしたかっただけで……」
――“お金持ちの嫁”になりたかったわけじゃない。
未来がそうつぶやくと、隼人はゆっくりと立ち上がり、彼女の前まで来て膝をついた。
「未来」
「な、なんですか……?」
「君は“ただいるだけ”じゃない。僕にとって、君がいてくれるだけで……」
「……またそれ……」
「心の底から、嬉しいんだよ」
未来は一瞬、言葉をなくした。
そういうことを、さらっと言う。
冗談でも皮肉でもなく、本気で。
この人はきっと、未来が隣にいるだけで“幸せ”だと本気で思ってる。
だから余計に、困るのだ。
「……だったらせめて、朝ごはんくらい、合格もらえるようにしたいです」
「ふふ。なら、君専用のキッチンを新設しよう。火力は家庭用レベルで、道具も選んでいい。講師もつけようか?」
「そこまでは望んでませんけど!?」
思わずツッコミを入れた未来だったが――
(……それでも、ちゃんと応えてくれるんだよなぁ、この人)
少しだけ、心が軽くなった気がした。
---
そして、その日の夜。
未来は風呂上がりのバスローブ姿で、鏡の前に座っていた。
ドレッサーの引き出しには、高級コスメがぎっしり。
使い方もわからないものばかりだが、少しずつ手を伸ばしてみようと思う。
(……私がこの場所で、わたしなりの“花嫁”になってみせる)
そう決意した未来は、いつか隼人の「完璧な妻」として胸を張って立てるように、
明日もまた、朝ごはんを作るのだった――たとえ、スクランブル卵になっても。
朝。高級ベッドに寝転んだまま、未来は天井を見つめていた。
「……このままで、いいのかなあ」
ヨーロッパでの新婚旅行。
城のような新居。
プロのメイド、シェフ、執事、送迎付き生活。
一見すれば、理想的すぎる生活。
けれど、彼女は思っていた。
(なんか……私、何もしてない)
花嫁らしいことって、なんだろう。
家事? 料理? 家庭的な雰囲気?
どれもこれも、未来の生活には組み込む隙がない。
「……そろそろ、何かしなきゃまずいよね」
誰に言われたわけじゃない。
でも、“してもらってばかり”の生活は、落ち着かなかった。
(私だって、“お嫁さん”としてできること、あるはず……!)
そう思った未来は、ついに立ち上がる。
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「……というわけで、私、朝ごはんを作ろうと思います!」
「お嬢様?」
メイドたちが同時に首を傾げる。
「今朝のメニューはすでにシェフが……」
「キャンセルして! 今日は私が作るから!」
さすがに“社長令嬢”の命令には逆らえず、メイドたちは戸惑いつつもキッチンを明け渡した。
未来は、エプロンを締めて気合を入れる。
「よし……いける……! 昨日ネットで見た、簡単朝ごはんレシピ……!」
――卵焼き、焼き鮭、お味噌汁、白ごはん。
(初心にかえって、和食だよね!)
手順は頭に入れた。
料理だって、家庭科の授業で何度もやったし、家でもたまに手伝ってた。
でも、プロの厨房は想像以上にハードルが高かった。
鍋の火力が強すぎて、卵焼きがスクランブルになり、
味噌汁は出汁を入れすぎてしょっぱくなり、
焼き鮭は……言うまでもない。
(や、やばい……! プロ仕様の器具、扱いづらすぎる……!)
あわてて盛り付けをしても、お店のような食器とのギャップがすごい。
見た目も、味も、家で作るのより雑になってしまった。
「……ま、まあ……気持ちが大事だよね、うん」
笑顔で無理やり自分を励まし、未来は隼人のもとへ朝食を運んだ。
---
「ふむ」
「ど、どうですか?」
ダイニングで、未来の作った朝ごはんを口にした隼人は、静かに箸を置いた。
「……まずくはない。けれど……やはりプロの味に慣れている分、差は歴然だ」
「う……そりゃそうですけどぉ!」
未来はうなだれる。
「い、一応、気持ちは込めたんですよ!? 頑張ったんですからね!?」
「そこは高く評価する。……だが、未来。君はもっと別の“価値”で、僕にとってかけがえのない存在だ」
「……またそれですか。何もしなくてもいいって、やつ……」
「そうだ」
「……私、観賞用なんですか?」
思わず出たその一言に、隼人の動きが止まる。
「観賞用?」
「だって……掃除も、料理も、洗濯も、プロがやってる。
学校の準備もメイドさんが手伝ってくれて。
わたし……ここで、ただ“いるだけ”になってません?」
それはずっと心のどこかに引っかかっていた違和感だった。
嫁として、なにかしている実感がない。
ただ隼人の横にいて、甘やかされて、褒められて、愛されて――
それって、本当に“夫婦”なのだろうか?
「私、ほんとは……普通に家事したり、買い物行ったり、
一緒にスーパーで何買う?とか、そういうのがしたかっただけで……」
――“お金持ちの嫁”になりたかったわけじゃない。
未来がそうつぶやくと、隼人はゆっくりと立ち上がり、彼女の前まで来て膝をついた。
「未来」
「な、なんですか……?」
「君は“ただいるだけ”じゃない。僕にとって、君がいてくれるだけで……」
「……またそれ……」
「心の底から、嬉しいんだよ」
未来は一瞬、言葉をなくした。
そういうことを、さらっと言う。
冗談でも皮肉でもなく、本気で。
この人はきっと、未来が隣にいるだけで“幸せ”だと本気で思ってる。
だから余計に、困るのだ。
「……だったらせめて、朝ごはんくらい、合格もらえるようにしたいです」
「ふふ。なら、君専用のキッチンを新設しよう。火力は家庭用レベルで、道具も選んでいい。講師もつけようか?」
「そこまでは望んでませんけど!?」
思わずツッコミを入れた未来だったが――
(……それでも、ちゃんと応えてくれるんだよなぁ、この人)
少しだけ、心が軽くなった気がした。
---
そして、その日の夜。
未来は風呂上がりのバスローブ姿で、鏡の前に座っていた。
ドレッサーの引き出しには、高級コスメがぎっしり。
使い方もわからないものばかりだが、少しずつ手を伸ばしてみようと思う。
(……私がこの場所で、わたしなりの“花嫁”になってみせる)
そう決意した未来は、いつか隼人の「完璧な妻」として胸を張って立てるように、
明日もまた、朝ごはんを作るのだった――たとえ、スクランブル卵になっても。
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