溺愛政略結婚 花嫁は女子高生

鍛高譚

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2-2 新居生活スタート → メイド、シェフ、執事勢揃い

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2-2 新居生活スタート → メイド、シェフ、執事勢揃い

 

ヨーロッパでの“新婚旅行”から戻ってきた未来は、数日ぶりの日本の空気を深く吸い込んでいた。

 

「……やっぱり、米の匂いって落ち着くわ……」

 

パリの街並みやイタリアの景色、美術館やワイナリー巡り。
どれも非日常で夢のようだったけれど、それと同じくらい、どこか自分の居場所ではない感覚もあった。

 

――そう。どこまでいっても、未来はまだ16歳の女子高生。
制服を着て学校へ通う“普通の生活”が、何よりも“自分らしい”と感じてしまう。

 

そして、旅行から帰ってきたその足で向かったのは――

 

「……いや、やっぱりこれは“家”じゃないよね?」

 

思わずそう呟いてしまうほどの、城のような自宅だった。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様。旦那様」

 

重厚な玄関扉が静かに開くと、整列したメイド三名と執事一名が丁寧に一礼して迎え入れてきた。

 

メイドたちはおそろいの深緑の制服に、白いエプロン。
執事は銀縁メガネの落ち着いた中年男性で、まるで洋画の中からそのまま抜け出してきたような人物だった。

 

「は、はい……ただいま……?」

 

思わず敬語になってしまう未来。
だって、彼女たちの方が年上に見えるし、なにより雰囲気がプロすぎる。

 

「お部屋の空調はご希望通りに整えてあります。お荷物もすでにお部屋へ運び入れてございます」

 

「ご入浴の準備も整っております。お好みに合わせてハーブバスをご用意いたしました」

 

「お夕食は19時より、ダイニングにてご用意いたします」

 

矢継ぎ早に説明される生活環境。
でも、未来の脳は途中で処理を放棄した。

 

(……すごすぎて、逆にもうなにも考えられない)

 

旅行の疲れが抜けきっていない身体に、プロ仕様のもてなしが襲いかかる。
高級ホテルよりも広く、快適で、完璧な空間――それが、彼女の“新しい日常”だった。

 

「ここが……わたしの住むところ……」

 

玄関ホールから続く長い廊下。
すれ違っただけでふんわり香るアロマ。
その先に待っていたのは、想像を遥かに超えたプライベートルームだった。

 

「……うわ、ひろっ」

 

淡いピンクと白で統一された室内。
シャンデリアの光が、天井の鏡面仕上げに反射して柔らかく揺れる。

 

クローゼットにはすでに私服や制服がぴったりと並んでおり、ドレッサーには最新のコスメがずらり。

 

「これ、私の……部屋……?」

 

「君の趣味を調べて、可能な限り反映してもらった」

 

隼人が背後から何気なく言ってのける。

 

「し、調べた!? なんでそんなストーカーまがいのことを……!」

 

「事前準備だ。君に心地よく暮らしてもらうための、ね」

 

その言い方がさらっとしすぎてて、逆に怖い。

 

「……わたし、趣味って……ネットでたまにレースとかカップケーキ見るだけですけど……」

 

「そういうところも含めて、可愛いと思ってる」

 

さらっと甘い言葉を混ぜてくるから、本当に油断できない。

 

未来はベッドにどさりと倒れ込み、もふもふのクッションを抱えながら大きなため息をついた。

 

「……夢みたいだけど、これが現実なんだなぁ……」

 


---

 

数日後。

 

生活にも少しずつ慣れてきた頃。
未来はふと、自分の役割について考え始めた。

 

(わたし、花嫁ってことになってるけど……やること……ない)

 

掃除はメイドが完璧にこなしている。
料理はシェフが作ってくれるし、洗濯も自動&プロ任せ。
学校の準備も全自動で整っていて、未来がやることといえば――

 

「お嬢様、朝食のお時間です」
「お嬢様、本日のお洋服は、こちらをご用意しております」
「お嬢様、本日は学校に送迎いたします」

 

――完全に“される側”。

 

「これ……まさか……」

 

未来は震える声で呟いた。

 

「観賞用……!? わたし……高級ペットみたいな扱いされてない……!?」

 

当然ながら、そんなことを言ったところで、誰も否定してくれなかった。

 

隼人に相談してみても――

 

「主婦っぽいこと、なにかさせてください!お弁当とか、洗濯とか!」

 

「無理だ。危ない」

 

「ちょっと!なんで“料理=危険”みたいな扱いなの!? 何か失敗してませんからね!?」

 

「プロに勝てない以上、君がやる必要はない。……君は、ただいてくれるだけでいいんだよ」

 

「そ、それじゃただの空気じゃないですか!」

 

「いや。空気は生きてないが、君は可愛い。可愛い存在は、いるだけで価値がある」

 

「うるさい!! 詭弁!!」

 

隼人の甘すぎる過保護スタイルに、未来は精神的にも“こってり”していく日々だった。

 


---

 

「はあああ……主婦って、何したらいいの?」

 

ある日、未来は自室のソファで、レース編みの動画を眺めながらボヤいた。

 

やることがない。
だから何かしようとすれば、全部“もうやってある”で片づけられる。

 

このままじゃ、自分は「花嫁」じゃなくて「ぬいぐるみ」になってしまうのでは?
そんな不安と葛藤を抱える未来に、そろそろ次なる展開が迫っていた――

 

そう、登校再開という試練が。

 

未来の「普通でいたい」気持ちと、隼人の「過保護愛」が、ついにぶつかり合う時が近づいていたのだった。

 

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