溺愛政略結婚 花嫁は女子高生

鍛高譚

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3-2 通学中、周囲の視線、盗撮・SNS投稿などが始まり、トラブルの兆し

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3-2 通学中、周囲の視線、盗撮・SNS投稿などが始まり、トラブルの兆し

 

「……私、なんか、めちゃくちゃ見られてない……?」

 

その疑問が、確信へと変わるのに時間はかからなかった。

 

未来は、朝の電車の中で、周囲の視線が何度も自分に刺さるのを感じていた。
あきらかに“チラ見”では済まされないガン見。
視線が合えば、慌ててスマホに目を戻す乗客。
小声で何かを話す声。
そして、時折“カシャッ”と聞こえるシャッター音――

 

「え、やば……今のって……」

 

制服のポケットに手をやり、スマホを取り出す。
指先が汗ばむのを感じながら、SNSを開いた。
不安を感じながら、“久川隼人”の名前を検索。

 

そこで、未来は息をのんだ。

 

「……っ」

 

――#久川隼人 #社長の隣の女子高生――

 

いくつもの写真が、投稿されていた。
その中には、空港で隼人と一緒にいる自分の姿。
街角で隼人の隣を歩く制服姿の自分の背中。
駅のホーム、コンビニの前、そして――

 

『今日、○○駅で見たんだけど、久川隼人と女子高生!?』

『制服着てたけど、どう見ても恋人っぽい雰囲気……既婚者?』

『あれ、有川学園の制服じゃね? うちの近くの学校じゃん』

 

「うそ……でしょ……?」

 

手が震えた。
それは恐怖というより、“世界の目”という現実が、自分を覆いかぶさってきたからだった。

 

(……隼人さん……わたしのこと、誰にも言ってないって言ってたのに……)

 

たしかに、本人が公表したわけじゃない。
でも、彼は目立つ存在すぎた。
どこへ行っても注目を集め、撮られ、噂される。
そしてその隣にいた未来も、自然と巻き込まれていたのだ。

 


---

 

その日、学校に着くころには、もう“空気”が変わっていた。

 

「おはよう、未来ちゃん……あのさ、聞いてもいい?」

 

「う、うん……なに?」

 

「未来ちゃんってさ……ほんとに、社長の……奥さん、なの?」

 

「えっ」

 

完全に油断していた未来は、飲んでいた紙パックのミルクティーを吹きそうになった。

 

「な、なんで……?」

 

「なんかね、SNSですっごい話題になってるよ。
 久川隼人と並んでる女の子が、“制服姿で有川学園の生徒じゃないか”って」

 

「そ、そんなわけ……!」

 

「……未来ちゃん、夏休み明けからすっごい髪サラサラになったし、靴もブランド品じゃない?
 バッグも新しいし、何か……変わったっていうか……」

 

「そ、それは……そ、そんなことないってば!」

 

焦れば焦るほど、言葉は空回りする。
むしろ、動揺すればするほど、「やましいことがある」と思われかねない。

 

未来は教室の隅で、ひとり頭を抱えた。

 

(どうしよう……どうしたらいいの……)

 

“普通の生活”を望んでいた。
“普通の女子高生”として学校に通って、友達と笑って、部活して、お弁当食べて――

 

そんな当たり前が、どんどん崩れていく。

 

(お願いだから……もう、見ないで……)

 

でも、現実は残酷だった。

 

休み時間。
廊下で、スマホの画面を見せ合う他クラスの生徒たち。
図書室では「社長の嫁ってマジ?」と小声で囁き合うグループ。
職員室では、担任と教頭が困った顔で書類をめくっているのが見えた。

 

「未来さん、ちょっと来てくれる?」

 

昼休み前、担任に呼ばれた。

 

案内されたのは、生徒指導室。
だが、叱られるというより、“扱いに困っている”空気が漂っていた。

 

「えっと……未来さん。SNSの件だけどね、学校としても対応を考えなきゃいけなくて」

 

「……わ、わたしは何もしてません。勝手に撮られただけで……」

 

「うん、それは分かってる。でも、たとえば……通学中に付き添いがあるとか、
 プライベートで目立つ行動を控えるとか、学校として配慮してもらえたらって……」

 

「……はい……」

 

未来はうなだれるしかなかった。

 

(配慮……? 私が……悪いの……?)

 

その言葉は、じわじわと胸の奥に染み込んでくる。

 

「今はまだ騒ぎが小さいけれど、これからも続くようなら……その……別室登校も検討することになるかもしれないから」

 

「え……!?」

 

「もちろん強制じゃないよ? でも、状況によっては……って話だからね?」

 

未来はもう、何も言えなかった。

 


---

 

帰り道。
電車の中で、彼女は何度もスマホを確認した。
“タグ”も、“画像”も、“噂”も――何ひとつ消えていない。

 

むしろ、時間が経つごとに広がっていっている。

 

その夜。
未来は隼人の帰宅を待たず、布団にもぐり込んで声を殺して泣いた。

 

(……どうして……普通でいたいだけなのに)

 

あの人の隣にいたら、自分は“普通”でいられない。
分かっていたはずなのに――
それでも、こうして涙が止まらないのは、どうしてだろう。

 
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