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10 未来が夢を語る「ファッションを学びたい」
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10 未来が夢を語る「ファッションを学びたい」
修学旅行から帰って数日が経ち、日常が戻ってきた。
学校では文化祭の話題がようやく落ち着き始め、クラスも以前のような落ち着きを取り戻していた。
だが、未来の心はどこかざわついていた。
(そろそろ……言わなきゃ)
隼人との京都での時間が、心に温かな灯を残していたから。
はじめて手をつないだ神社の階段。
夜の中庭で交わした、清らかなファーストキス。
あれが、未来にとっての“勇気の源”だった。
そして今日――未来は意を決して、放課後の図書室に隼人を呼び出した。
「……ありがとう、来てくれて」
「ああ。未来に“話がある”って言われたら、何があっても行くさ」
いつも通りのやさしい笑み。
でも、未来は今までにないほど真剣な顔で、机の上にノートを取り出す。
「私ね、ずっと言えなかったことがあるの」
「……うん」
「結婚のこととか、家のこととか、将来のこと――いろんなことがあって、ずっと自分の気持ちを後回しにしてた。
でも、私……本当は、“夢”があるの」
隼人は未来の目を見て、そっと頷いた。
「……ファッションを学びたい。できれば、デザインの勉強を専門的にして、将来は、自分のブランドを持ちたい」
「……」
「私、服が好き。特に制服とか、ドレスとか……“身にまとうことで気持ちが変わる服”って、すごいと思うの。
小さいころ、服を選ぶのが楽しくて。落ち込んでるときも、お気に入りのスカートをはくだけでちょっと元気になれた」
未来は少し恥ずかしそうに笑って、けれどその笑顔は、どこか凛としていた。
「……でも、うちの父はそういうのを“道楽”だって思ってる。“社長の娘が遊びで服を作るのか”って言われるの、目に見えてるから」
ノートを開くと、中には未来が描いたファッションのスケッチがあった。
制服をアレンジしたもの、シンプルなワンピース、華やかなパーティードレス。
どれもまだ拙くて、でも、夢を詰め込んだような線で描かれていた。
「いつか……ちゃんと、服を通して誰かの気持ちを動かせるようなデザイナーになりたい」
未来は、不安と期待が入り混じるような目で隼人を見た。
「……こんな夢、変ですか?」
隼人はスケッチをそっと手に取り、しばらく静かにページをめくっていた。
そして――彼は、ゆっくりと顔を上げ、未来の目を見つめた。
「変なんかじゃない。……むしろ、すごく、素敵な夢だと思う」
「……!」
「未来の描く服、君らしくて、優しさがにじみ出てる。
僕も、最初に未来と出会ったとき、制服姿の君を見て“眩しい”って思ったよ。
だから、その服に夢を感じるのは、何も不思議じゃない」
未来は胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
「……本当はずっと、自信なかったの。
“結婚したからには家を守らなきゃ”とか、“父の期待に応えなきゃ”って、
どこかで“夢を見ちゃいけない”って思ってた」
「それでも、こうして言ってくれた。……その勇気がすごいよ」
「……ありがとう、隼人さん」
ノートを閉じて、未来はふっと笑った。
「……父に、言おうと思う。“自分の人生を生きたい”って。
きっと怒られるし、呆れられるし、“またくだらんことを”って言われると思うけど」
「でも、それでも言うんだね?」
「うん。今の私は、ただの社長令嬢でも、お飾りの妻でもない。
ちゃんと“自分で考えて、自分の意思で夢を語れる”人間になりたいから」
隼人は静かに頷き、未来の手を取る。
「……未来。君が夢を語ってくれて、本当に嬉しい」
「……!」
「このまま誰の期待にも縛られず、自分の道を歩んでほしい。
君が“やってみたい”って思ったことを、ちゃんと選べる人であってほしい」
未来はその言葉を聞いて、胸の奥に灯がともるような感覚を覚えた。
(この人は、私の“夫”である前に、ちゃんと“私の味方”なんだ)
「……ありがとう」
小さくつぶやいて、未来は彼の手を強く握り返す。
夢はまだ遠い。道のりも険しい。
けれど、こうして“話せた”ことで、確かに一歩を踏み出した気がしていた。
未来が新居である久川家の一室、自分の部屋でスケッチブックをめくりながら、静かにペンを走らせていた。描かれていたのは、彼女がずっと胸の奥に抱えていた夢――自分の手でデザインした服たち。優雅なライン、可憐なフリル、動きやすさと上品さを兼ね備えたシルエット。それらは彼女の理想であり、憧れであり、そして未来そのものだった。
やがて、控えめなノックの音が響く。
「お嬢様、失礼いたします。有川様が……ご来客です」
未来のペンが止まった。その名を聞いた瞬間、空気が少し重くなる。
「……通して」
しばらくして、父・有川重人が執事に案内されて部屋に現れた。変わらずビシッとしたスーツ姿。厳格な雰囲気を纏ったまま、一礼することもなく立ち尽くす。
「未来、話がある」
「なにかしら」
ペンを止めずに答える未来。
「卒業後の進路についてだ。お前が久川家の一員となるとはいえ、有川の血を引く以上、経営の素養を身につけておくべきだ。進学先は、こちらで用意してある」
未来の手が止まった。
「……私はファッションの専門学校に進みたいの」
「は?」
重人はまるで聞き間違えたかのように目を細めた。
「ファッションだと? 服飾か? お前がそんなくだらん夢を語るとはな」
その言葉は、未来の胸に鋭く突き刺さった。
「くだらない……?」
「そうだ。何の役に立つ。家の後継者として経営を学ぶのが当然だろう。服など趣味の範囲でやればいい」
「違うわ。私は、趣味じゃなくて本気でやりたいの。子どもの頃から、ずっと……!」
「夢など、金にも力にもならん。そんなものは現実に押しつぶされるだけだ。君は道具ではないと言うが、逆に問おう。君がこの家に生まれた意味はなんだ? それを自分のためだけに使うのか?」
未来の心が音を立てて軋んだ。
「私の人生を、私以外の誰が決めるの? 私が何を感じて、何を愛して、何を創りたいか、それは私だけのものよ。パパには、それがそんなにも馬鹿げて見えるの?」
重人は黙り込んだ。未来は涙をこらえながら、真正面から父を見据える。
「私は道具じゃない。誰かの夢を叶えるための存在じゃない。私には、私の夢があるの。ファッションを通して、人の心を動かしたい。誰かの一日を彩りたいの」
「未来……」
一瞬だけ、重人の顔に何か言いたげな表情が浮かんだが、彼はすぐに表情を引き締めた。
「勝手にしろ。だが、後悔しても知らんぞ」
そう言って、扉を開けた執事の後について無言で去っていく。
静寂の中、未来は再びスケッチブックに目を落とした。
「後悔なんて、するわけないじゃない……」
新たに描き始めた線は、先ほどよりもずっと力強かった。
久川家の朝は、静かで穏やかだった。使用人たちが忙しなく動く中、未来は食堂の窓際で紅茶をすすりながら、手元のスケッチブックを見つめていた。先ほど描き上げたばかりのデザイン画。けれど、彼女の瞳にはいつもの自信がなかった。
父とのやり取りが、まだ心の奥に刺さったままだ。
「くだらん夢」――あの言葉が、何度も脳裏に反響する。
自分の描く服に、意味はあるのか。誰かの心に届くものを、本当に自分は作れるのか。
紅茶を飲み干し、スケッチブックを閉じかけたそのとき。
「おや、今日は一段と真剣な顔だな」
優しい声が響いた。
振り向けば、隼人がいた。休日らしくネクタイを外したリラックスした姿。それでも凛とした雰囲気は崩れず、彼はいつものように未来の隣に腰を下ろした。
「スケッチか?」
「……ええ。でも、ちょっとだけ自信がなくなっちゃって」
未来は苦笑を浮かべ、スケッチブックを胸元で抱えた。
「この前、お父様がいらして……。ファッションなんてくだらない、って言われたの」
「……そうか」
隼人はしばし沈黙し、未来の顔を見つめる。彼女の中で、言葉にできない葛藤が渦巻いていることを、彼はすぐに察した。
「見せてくれるか?」
「え……?」
「そのスケッチ。君が描いた“夢”を、僕にも見せてくれないか?」
未来は戸惑いながらも、スケッチブックを差し出した。ページをめくる手が震える。けれど、それを隼人がしっかりと受け取ってくれたことで、少しだけ心が軽くなった。
隼人はページをゆっくりとめくる。一枚一枚のデザインに、丁寧に目を通していく。
「……これ、すごく良い」
「え……」
「動きやすさと美しさを両立させてる。シルエットも流麗だし、細部の装飾も洗練されてる。何より、着る人の気持ちまで考えて描いてるのが伝わる」
未来の頬がじわりと熱くなった。
「そんなふうに言ってもらえるなんて……初めて」
「きっと、これを着たら誰だって嬉しくなる。笑顔になれる。そういう服を作れる人間は、世界にそう多くはない」
未来の目に、涙がにじんだ。
「……ありがとう。そう言ってもらえるだけで、もう少し頑張れる気がする」
隼人はやわらかく笑い、スケッチブックを未来に返した。
「自分の夢を信じるのは、難しい。だけど、それを形にできるのが君の強さだ。未来、君のその夢、僕は心から応援している」
未来は静かに、スケッチブックを抱きしめた。涙はもう、悲しみのものではなかった。心の奥からじんわりとあふれてくる、温かいものだった。
その日、未来は新しいスケッチに取りかかった。
今度のテーマは、「未来らしさ」。
それはきっと、誰かに言われて描くものではなく、自分の心に従って描くもの。たとえ誰かに否定されても、たとえ遠回りでも、自分の信じる道を進むために。
隼人の一言が、未来の背中を優しく押してくれた。
そして彼女は、再び筆を取り、新しい夢を描き始めた。
久川家の朝は、静かで穏やかだった。使用人たちが忙しなく動く中、未来は食堂の窓際で紅茶をすすりながら、手元のスケッチブックを見つめていた。先ほど描き上げたばかりのデザイン画。けれど、彼女の瞳にはいつもの自信がなかった。
父とのやり取りが、まだ心の奥に刺さったままだ。
「くだらん夢」――あの言葉が、何度も脳裏に反響する。
自分の描く服に、意味はあるのか。誰かの心に届くものを、本当に自分は作れるのか。
紅茶を飲み干し、スケッチブックを閉じかけたそのとき。
「おや、今日は一段と真剣な顔だな」
優しい声が響いた。
振り向けば、隼人がいた。休日らしくネクタイを外したリラックスした姿。それでも凛とした雰囲気は崩れず、彼はいつものように未来の隣に腰を下ろした。
「スケッチか?」
「……ええ。でも、ちょっとだけ自信がなくなっちゃって」
未来は苦笑を浮かべ、スケッチブックを胸元で抱えた。
「この前、お父様がいらして……。ファッションなんてくだらない、って言われたの」
「……そうか」
隼人はしばし沈黙し、未来の顔を見つめる。彼女の中で、言葉にできない葛藤が渦巻いていることを、彼はすぐに察した。
「見せてくれるか?」
「え……?」
「そのスケッチ。君が描いた“夢”を、僕にも見せてくれないか?」
未来は戸惑いながらも、スケッチブックを差し出した。ページをめくる手が震える。けれど、それを隼人がしっかりと受け取ってくれたことで、少しだけ心が軽くなった。
隼人はページをゆっくりとめくる。一枚一枚のデザインに、丁寧に目を通していく。
「……これ、すごく良い」
「え……」
「動きやすさと美しさを両立させてる。シルエットも流麗だし、細部の装飾も洗練されてる。何より、着る人の気持ちまで考えて描いてるのが伝わる」
未来の頬がじわりと熱くなった。
「そんなふうに言ってもらえるなんて……初めて」
「きっと、これを着たら誰だって嬉しくなる。笑顔になれる。そういう服を作れる人間は、世界にそう多くはない」
未来の目に、涙がにじんだ。
「……ありがとう。そう言ってもらえるだけで、もう少し頑張れる気がする」
隼人はやわらかく笑い、スケッチブックを未来に返した。
「自分の夢を信じるのは、難しい。だけど、それを形にできるのが君の強さだ。未来、君のその夢、僕は心から応援している」
未来は静かに、スケッチブックを抱きしめた。涙はもう、悲しみのものではなかった。心の奥からじんわりとあふれてくる、温かいものだった。
その日、未来は新しいスケッチに取りかかった。
今度のテーマは、「未来らしさ」。
それはきっと、誰かに言われて描くものではなく、自分の心に従って描くもの。たとえ誰かに否定されても、たとえ遠回りでも、自分の信じる道を進むために。
隼人の一言が、未来の背中を優しく押してくれた。
そして彼女は、再び筆を取り、新しい夢を描き始めた。
---
日が暮れかけた頃、久川家の書斎には柔らかなオレンジ色の光が差し込んでいた。
隼人は書類に目を通していたが、ふと視線を上げて窓の外を見やった。校庭から聞こえてくる子供たちの笑い声が、静かな部屋にやさしく響いていた。
その音に耳を傾ける彼の表情は、穏やかでどこか感傷的だった。
コンコン、と控えめなノックがあった。
「どうぞ」
扉が開き、未来がスケッチブックを抱えて入ってきた。
「お忙しいところ、ごめんなさい」
「いや、構わないよ。どうしたんだ?」
未来は小さく息を吸い込んで、一歩踏み出した。
「もう一度、見てほしくて。……私の夢」
そう言って、スケッチブックを差し出す。
「昨日の続き。あのあと描いたの」
隼人は静かに頷いてそれを受け取り、ページを開いた。
そこには、今までよりもずっと明確な意志を感じさせるデザイン画が並んでいた。
柔らかい素材感、流れるようなライン、細部に込められた意味。たとえば袖のレースには「人と人を繋ぐ糸」、襟元のカットには「自信をもって前を向く強さ」――そんな物語を感じる衣装ばかりだった。
一枚、また一枚とページをめくるたびに、隼人の表情が変わっていく。
それは、驚き、感動、そして深い感銘。
「……すごいな」
未来がはっと顔を上げる。
「この服には……“誰かを想う気持ち”が宿ってる。単なる装飾じゃない。着る人を想像して、どうしたらその人が輝くか、考えて描いてる」
未来はそっと頷いた。
「私は、自分の描く服で、誰かの一日を明るくしたいの。たとえば、大切な日のドレス。たとえば、普段使いの制服。それを着た人が、少しでも幸せになれるようにって、そんな気持ちでデザインしてる」
隼人は、スケッチブックをそっと閉じた。そして、深く息をつき、未来を見つめる。
「……ありがとう、未来」
「え?」
「君の夢を、見せてくれてありがとう」
その声には、感情がこもっていた。
「君が何を大切にしてるのか、ようやくわかった気がする。……そして、こんな素晴らしい夢を持ってる君が、僕の隣にいることが……誇らしい」
未来の瞳に、涙が浮かぶ。
「私……、いつかきっと、自分のブランドを持ちたいの。世界中の人に届けられるような、優しさと強さを纏った服を作るのが夢」
隼人は微笑み、彼女の頭をそっと撫でた。
「叶えよう。……君のその夢。僕は、全力で支える」
未来の頬を、温かな涙が伝う。
「ありがとう……隼人さん……」
その言葉には、決意と、感謝と、未来への希望が詰まっていた。
夢はまだ始まったばかり。
でも、誰かが信じてくれるなら。
愛する人が支えてくれるなら。
未来は、きっとその夢を叶えられる。
そしてその夜、スケッチブックの最後のページに、未来はそっと小さな文字を書き加えた。
『最初の一着は、あなたのために』
修学旅行から帰って数日が経ち、日常が戻ってきた。
学校では文化祭の話題がようやく落ち着き始め、クラスも以前のような落ち着きを取り戻していた。
だが、未来の心はどこかざわついていた。
(そろそろ……言わなきゃ)
隼人との京都での時間が、心に温かな灯を残していたから。
はじめて手をつないだ神社の階段。
夜の中庭で交わした、清らかなファーストキス。
あれが、未来にとっての“勇気の源”だった。
そして今日――未来は意を決して、放課後の図書室に隼人を呼び出した。
「……ありがとう、来てくれて」
「ああ。未来に“話がある”って言われたら、何があっても行くさ」
いつも通りのやさしい笑み。
でも、未来は今までにないほど真剣な顔で、机の上にノートを取り出す。
「私ね、ずっと言えなかったことがあるの」
「……うん」
「結婚のこととか、家のこととか、将来のこと――いろんなことがあって、ずっと自分の気持ちを後回しにしてた。
でも、私……本当は、“夢”があるの」
隼人は未来の目を見て、そっと頷いた。
「……ファッションを学びたい。できれば、デザインの勉強を専門的にして、将来は、自分のブランドを持ちたい」
「……」
「私、服が好き。特に制服とか、ドレスとか……“身にまとうことで気持ちが変わる服”って、すごいと思うの。
小さいころ、服を選ぶのが楽しくて。落ち込んでるときも、お気に入りのスカートをはくだけでちょっと元気になれた」
未来は少し恥ずかしそうに笑って、けれどその笑顔は、どこか凛としていた。
「……でも、うちの父はそういうのを“道楽”だって思ってる。“社長の娘が遊びで服を作るのか”って言われるの、目に見えてるから」
ノートを開くと、中には未来が描いたファッションのスケッチがあった。
制服をアレンジしたもの、シンプルなワンピース、華やかなパーティードレス。
どれもまだ拙くて、でも、夢を詰め込んだような線で描かれていた。
「いつか……ちゃんと、服を通して誰かの気持ちを動かせるようなデザイナーになりたい」
未来は、不安と期待が入り混じるような目で隼人を見た。
「……こんな夢、変ですか?」
隼人はスケッチをそっと手に取り、しばらく静かにページをめくっていた。
そして――彼は、ゆっくりと顔を上げ、未来の目を見つめた。
「変なんかじゃない。……むしろ、すごく、素敵な夢だと思う」
「……!」
「未来の描く服、君らしくて、優しさがにじみ出てる。
僕も、最初に未来と出会ったとき、制服姿の君を見て“眩しい”って思ったよ。
だから、その服に夢を感じるのは、何も不思議じゃない」
未来は胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
「……本当はずっと、自信なかったの。
“結婚したからには家を守らなきゃ”とか、“父の期待に応えなきゃ”って、
どこかで“夢を見ちゃいけない”って思ってた」
「それでも、こうして言ってくれた。……その勇気がすごいよ」
「……ありがとう、隼人さん」
ノートを閉じて、未来はふっと笑った。
「……父に、言おうと思う。“自分の人生を生きたい”って。
きっと怒られるし、呆れられるし、“またくだらんことを”って言われると思うけど」
「でも、それでも言うんだね?」
「うん。今の私は、ただの社長令嬢でも、お飾りの妻でもない。
ちゃんと“自分で考えて、自分の意思で夢を語れる”人間になりたいから」
隼人は静かに頷き、未来の手を取る。
「……未来。君が夢を語ってくれて、本当に嬉しい」
「……!」
「このまま誰の期待にも縛られず、自分の道を歩んでほしい。
君が“やってみたい”って思ったことを、ちゃんと選べる人であってほしい」
未来はその言葉を聞いて、胸の奥に灯がともるような感覚を覚えた。
(この人は、私の“夫”である前に、ちゃんと“私の味方”なんだ)
「……ありがとう」
小さくつぶやいて、未来は彼の手を強く握り返す。
夢はまだ遠い。道のりも険しい。
けれど、こうして“話せた”ことで、確かに一歩を踏み出した気がしていた。
未来が新居である久川家の一室、自分の部屋でスケッチブックをめくりながら、静かにペンを走らせていた。描かれていたのは、彼女がずっと胸の奥に抱えていた夢――自分の手でデザインした服たち。優雅なライン、可憐なフリル、動きやすさと上品さを兼ね備えたシルエット。それらは彼女の理想であり、憧れであり、そして未来そのものだった。
やがて、控えめなノックの音が響く。
「お嬢様、失礼いたします。有川様が……ご来客です」
未来のペンが止まった。その名を聞いた瞬間、空気が少し重くなる。
「……通して」
しばらくして、父・有川重人が執事に案内されて部屋に現れた。変わらずビシッとしたスーツ姿。厳格な雰囲気を纏ったまま、一礼することもなく立ち尽くす。
「未来、話がある」
「なにかしら」
ペンを止めずに答える未来。
「卒業後の進路についてだ。お前が久川家の一員となるとはいえ、有川の血を引く以上、経営の素養を身につけておくべきだ。進学先は、こちらで用意してある」
未来の手が止まった。
「……私はファッションの専門学校に進みたいの」
「は?」
重人はまるで聞き間違えたかのように目を細めた。
「ファッションだと? 服飾か? お前がそんなくだらん夢を語るとはな」
その言葉は、未来の胸に鋭く突き刺さった。
「くだらない……?」
「そうだ。何の役に立つ。家の後継者として経営を学ぶのが当然だろう。服など趣味の範囲でやればいい」
「違うわ。私は、趣味じゃなくて本気でやりたいの。子どもの頃から、ずっと……!」
「夢など、金にも力にもならん。そんなものは現実に押しつぶされるだけだ。君は道具ではないと言うが、逆に問おう。君がこの家に生まれた意味はなんだ? それを自分のためだけに使うのか?」
未来の心が音を立てて軋んだ。
「私の人生を、私以外の誰が決めるの? 私が何を感じて、何を愛して、何を創りたいか、それは私だけのものよ。パパには、それがそんなにも馬鹿げて見えるの?」
重人は黙り込んだ。未来は涙をこらえながら、真正面から父を見据える。
「私は道具じゃない。誰かの夢を叶えるための存在じゃない。私には、私の夢があるの。ファッションを通して、人の心を動かしたい。誰かの一日を彩りたいの」
「未来……」
一瞬だけ、重人の顔に何か言いたげな表情が浮かんだが、彼はすぐに表情を引き締めた。
「勝手にしろ。だが、後悔しても知らんぞ」
そう言って、扉を開けた執事の後について無言で去っていく。
静寂の中、未来は再びスケッチブックに目を落とした。
「後悔なんて、するわけないじゃない……」
新たに描き始めた線は、先ほどよりもずっと力強かった。
久川家の朝は、静かで穏やかだった。使用人たちが忙しなく動く中、未来は食堂の窓際で紅茶をすすりながら、手元のスケッチブックを見つめていた。先ほど描き上げたばかりのデザイン画。けれど、彼女の瞳にはいつもの自信がなかった。
父とのやり取りが、まだ心の奥に刺さったままだ。
「くだらん夢」――あの言葉が、何度も脳裏に反響する。
自分の描く服に、意味はあるのか。誰かの心に届くものを、本当に自分は作れるのか。
紅茶を飲み干し、スケッチブックを閉じかけたそのとき。
「おや、今日は一段と真剣な顔だな」
優しい声が響いた。
振り向けば、隼人がいた。休日らしくネクタイを外したリラックスした姿。それでも凛とした雰囲気は崩れず、彼はいつものように未来の隣に腰を下ろした。
「スケッチか?」
「……ええ。でも、ちょっとだけ自信がなくなっちゃって」
未来は苦笑を浮かべ、スケッチブックを胸元で抱えた。
「この前、お父様がいらして……。ファッションなんてくだらない、って言われたの」
「……そうか」
隼人はしばし沈黙し、未来の顔を見つめる。彼女の中で、言葉にできない葛藤が渦巻いていることを、彼はすぐに察した。
「見せてくれるか?」
「え……?」
「そのスケッチ。君が描いた“夢”を、僕にも見せてくれないか?」
未来は戸惑いながらも、スケッチブックを差し出した。ページをめくる手が震える。けれど、それを隼人がしっかりと受け取ってくれたことで、少しだけ心が軽くなった。
隼人はページをゆっくりとめくる。一枚一枚のデザインに、丁寧に目を通していく。
「……これ、すごく良い」
「え……」
「動きやすさと美しさを両立させてる。シルエットも流麗だし、細部の装飾も洗練されてる。何より、着る人の気持ちまで考えて描いてるのが伝わる」
未来の頬がじわりと熱くなった。
「そんなふうに言ってもらえるなんて……初めて」
「きっと、これを着たら誰だって嬉しくなる。笑顔になれる。そういう服を作れる人間は、世界にそう多くはない」
未来の目に、涙がにじんだ。
「……ありがとう。そう言ってもらえるだけで、もう少し頑張れる気がする」
隼人はやわらかく笑い、スケッチブックを未来に返した。
「自分の夢を信じるのは、難しい。だけど、それを形にできるのが君の強さだ。未来、君のその夢、僕は心から応援している」
未来は静かに、スケッチブックを抱きしめた。涙はもう、悲しみのものではなかった。心の奥からじんわりとあふれてくる、温かいものだった。
その日、未来は新しいスケッチに取りかかった。
今度のテーマは、「未来らしさ」。
それはきっと、誰かに言われて描くものではなく、自分の心に従って描くもの。たとえ誰かに否定されても、たとえ遠回りでも、自分の信じる道を進むために。
隼人の一言が、未来の背中を優しく押してくれた。
そして彼女は、再び筆を取り、新しい夢を描き始めた。
久川家の朝は、静かで穏やかだった。使用人たちが忙しなく動く中、未来は食堂の窓際で紅茶をすすりながら、手元のスケッチブックを見つめていた。先ほど描き上げたばかりのデザイン画。けれど、彼女の瞳にはいつもの自信がなかった。
父とのやり取りが、まだ心の奥に刺さったままだ。
「くだらん夢」――あの言葉が、何度も脳裏に反響する。
自分の描く服に、意味はあるのか。誰かの心に届くものを、本当に自分は作れるのか。
紅茶を飲み干し、スケッチブックを閉じかけたそのとき。
「おや、今日は一段と真剣な顔だな」
優しい声が響いた。
振り向けば、隼人がいた。休日らしくネクタイを外したリラックスした姿。それでも凛とした雰囲気は崩れず、彼はいつものように未来の隣に腰を下ろした。
「スケッチか?」
「……ええ。でも、ちょっとだけ自信がなくなっちゃって」
未来は苦笑を浮かべ、スケッチブックを胸元で抱えた。
「この前、お父様がいらして……。ファッションなんてくだらない、って言われたの」
「……そうか」
隼人はしばし沈黙し、未来の顔を見つめる。彼女の中で、言葉にできない葛藤が渦巻いていることを、彼はすぐに察した。
「見せてくれるか?」
「え……?」
「そのスケッチ。君が描いた“夢”を、僕にも見せてくれないか?」
未来は戸惑いながらも、スケッチブックを差し出した。ページをめくる手が震える。けれど、それを隼人がしっかりと受け取ってくれたことで、少しだけ心が軽くなった。
隼人はページをゆっくりとめくる。一枚一枚のデザインに、丁寧に目を通していく。
「……これ、すごく良い」
「え……」
「動きやすさと美しさを両立させてる。シルエットも流麗だし、細部の装飾も洗練されてる。何より、着る人の気持ちまで考えて描いてるのが伝わる」
未来の頬がじわりと熱くなった。
「そんなふうに言ってもらえるなんて……初めて」
「きっと、これを着たら誰だって嬉しくなる。笑顔になれる。そういう服を作れる人間は、世界にそう多くはない」
未来の目に、涙がにじんだ。
「……ありがとう。そう言ってもらえるだけで、もう少し頑張れる気がする」
隼人はやわらかく笑い、スケッチブックを未来に返した。
「自分の夢を信じるのは、難しい。だけど、それを形にできるのが君の強さだ。未来、君のその夢、僕は心から応援している」
未来は静かに、スケッチブックを抱きしめた。涙はもう、悲しみのものではなかった。心の奥からじんわりとあふれてくる、温かいものだった。
その日、未来は新しいスケッチに取りかかった。
今度のテーマは、「未来らしさ」。
それはきっと、誰かに言われて描くものではなく、自分の心に従って描くもの。たとえ誰かに否定されても、たとえ遠回りでも、自分の信じる道を進むために。
隼人の一言が、未来の背中を優しく押してくれた。
そして彼女は、再び筆を取り、新しい夢を描き始めた。
---
日が暮れかけた頃、久川家の書斎には柔らかなオレンジ色の光が差し込んでいた。
隼人は書類に目を通していたが、ふと視線を上げて窓の外を見やった。校庭から聞こえてくる子供たちの笑い声が、静かな部屋にやさしく響いていた。
その音に耳を傾ける彼の表情は、穏やかでどこか感傷的だった。
コンコン、と控えめなノックがあった。
「どうぞ」
扉が開き、未来がスケッチブックを抱えて入ってきた。
「お忙しいところ、ごめんなさい」
「いや、構わないよ。どうしたんだ?」
未来は小さく息を吸い込んで、一歩踏み出した。
「もう一度、見てほしくて。……私の夢」
そう言って、スケッチブックを差し出す。
「昨日の続き。あのあと描いたの」
隼人は静かに頷いてそれを受け取り、ページを開いた。
そこには、今までよりもずっと明確な意志を感じさせるデザイン画が並んでいた。
柔らかい素材感、流れるようなライン、細部に込められた意味。たとえば袖のレースには「人と人を繋ぐ糸」、襟元のカットには「自信をもって前を向く強さ」――そんな物語を感じる衣装ばかりだった。
一枚、また一枚とページをめくるたびに、隼人の表情が変わっていく。
それは、驚き、感動、そして深い感銘。
「……すごいな」
未来がはっと顔を上げる。
「この服には……“誰かを想う気持ち”が宿ってる。単なる装飾じゃない。着る人を想像して、どうしたらその人が輝くか、考えて描いてる」
未来はそっと頷いた。
「私は、自分の描く服で、誰かの一日を明るくしたいの。たとえば、大切な日のドレス。たとえば、普段使いの制服。それを着た人が、少しでも幸せになれるようにって、そんな気持ちでデザインしてる」
隼人は、スケッチブックをそっと閉じた。そして、深く息をつき、未来を見つめる。
「……ありがとう、未来」
「え?」
「君の夢を、見せてくれてありがとう」
その声には、感情がこもっていた。
「君が何を大切にしてるのか、ようやくわかった気がする。……そして、こんな素晴らしい夢を持ってる君が、僕の隣にいることが……誇らしい」
未来の瞳に、涙が浮かぶ。
「私……、いつかきっと、自分のブランドを持ちたいの。世界中の人に届けられるような、優しさと強さを纏った服を作るのが夢」
隼人は微笑み、彼女の頭をそっと撫でた。
「叶えよう。……君のその夢。僕は、全力で支える」
未来の頬を、温かな涙が伝う。
「ありがとう……隼人さん……」
その言葉には、決意と、感謝と、未来への希望が詰まっていた。
夢はまだ始まったばかり。
でも、誰かが信じてくれるなら。
愛する人が支えてくれるなら。
未来は、きっとその夢を叶えられる。
そしてその夜、スケッチブックの最後のページに、未来はそっと小さな文字を書き加えた。
『最初の一着は、あなたのために』
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両片思いのすれ違いのお話です。
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