婚約お断り令嬢ですわ ~奇行で縁談を潰していたら本命騎士に再会しました~

鍛高譚

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17話

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「――まさか、王族との縁談がここまで早く持ち上がるとは思わなかったわ」

大きな窓から差し込む朝の陽光を背に、私は重いため息をつく。
前の二度の縁談は、どちらも何とか破談に成功したものの、それはそれで世間からは散々な噂が立っているはず。
**『奇行だらけの公爵令嬢』**として、すでに私は王都社交界の有名人となってしまったのだ。

にもかかわらず、新たに舞い込んだ縁談は、なんと王家の末弟――アレクシオス王子。

端正な顔立ち、煌びやかな衣装、そして恐るべきほど高い自己評価。
かねがね噂に聞く限り、アレクシオス殿下は極度のナルシストとして王城の内外を賑わせているらしい。

どうやら、先の破談スキャンダルも「王族の威光であれば、むしろそれを取り込み、好奇の目を集めることなく収められる」と考えている節がある。
なにより、グレイシア公爵家と王族の結びつきは、政治的にも象徴的にもメリットが大きい。

「王族相手に、“奇行で破談”というわけにはそう簡単にはいかないでしょうね……」

私は小声で呟き、侍女のサラと顔を見合わせる。
するとサラも困惑気味に首を振った。

「ええ……前のお二方ならいざ知らず、今度のお相手は王子様です。
 もし何か騒動でも起こったら、公爵家だけでなく国全体に波紋が及ぶかもしれません……」

当たり前のことだが、王家とのトラブルは国家そのものを揺るがしかねない。
あまり軽率な行動は許されない状況だ。

「……とはいえ、私だって困っていますのよ。
 正直、どんな人かも知らないまま婚約なんて、絶対にイヤ。
 だけどそれを穏便に破談に持ち込むには……相手が相手だけに難しそうね」

私はベッドの端に腰掛け、ぼんやりと思案する。
これまでの婚約破談は、**“奇行”**という強引な手段を用いて、相手に愛想を尽かさせるという方法でやり抜いてきた。
だが、あまりにも相手を侮辱するような真似をすれば、下手をすると王家から重大な処罰を受ける可能性さえある。

(どうにかして、うまい形で“あちらから”破談を言い出させる必要がある。
 ……そのためには、まずアレクシオス王子がどんな人物なのか、きちんと把握しなければ)

私は気を引き締め、手元の情報を整理する。

アレクシオス王子――正式にはアレクシオス・アルト・リシュタイン三世。
王国の第四王子で、上に三人の兄姉がいるため、王位継承権は低いとされている。
しかし、当人は「自分こそが最も美しく、王としての器もある」と信じて疑わない性格だとか。

「……まあ、一度お目にかかってみるしかないわね」

彼の傲慢さや自己愛の強さは噂に過ぎないかもしれない。
実際に会ったら意外と物腰が柔らかい――なんてことは……そうそうなさそうだけど。

――そして、その日。
私は王城に招かれ、アレクシオス王子との“初対面”を果たすことになった。
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