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第15話 完成の朝、審判の午後
しおりを挟むカリナ・ステラリアが、描きかけのキャンバスに本格的に向き合い始めてから、数日が過ぎた。
伯爵ハロルドはというと、
「週末までに作品を見せろ」
とだけ告げたきり、ギャラリー準備の総指揮として屋敷中を飛び回っている。
画商、有力貴族、出資者――名のある者たちを次々と招き入れては、交渉と威圧を繰り返す日々だ。
屋敷の出入り口は、もはや小さな社交場のように賑わっていた。
使用人や侍女たちも皆、盆や書類を抱えたまま走り続けている。
「申し訳ございません、お嬢様、今は少し……!」
「後ほど改めて……!」
誰もが多忙を極め、落ち着いて会話を交わす余裕すらない。
だが、その慌ただしさは、カリナにとってはむしろ追い風だった。
誰もが“自分のことで手一杯”だからこそ。
カリナは、昼間のほんの短い空き時間と、深夜の静寂を縫うようにして、絵筆を握り続けることができたのだ。
昼下がりの庭を描いた絵も。
夜明けの花を描いた絵も。
どちらも、いよいよ最終段階――「あともう一押しで完成」と胸を張って言えるところまできていた。
そんなある日の午後。西日にわずかに黄金色が混ざり始めたころ。
カリナの部屋の扉が、控えめに「コツ、コツ」と叩かれた。
机の上には、スケッチブックと絵具、洗いかけの筆。それらがほとんど占領している。
(ま、まずい……!)
カリナは慌てて道具を端へ寄せ、布をかぶせ、扉の方へ振り向いた。
「はい……どなたですか?」
できる限り落ち着いた声色で問いかける。
返ってきたのは、聞き慣れた柔らかな声だった。
「私よ、カリナ。入ってもいいかしら?」
「……お母様?」
ここ数日、カリナの母は、伯爵の目を盗むようにして娘の様子をよく見に来ていた。
裏庭であの会話を交わした朝から――彼女は明らかに変わった。
ただ夫の後ろに立つ“伯爵夫人”ではなく、積極的に娘の味方になろうとする“母”の顔を、少しずつ見せ始めていたのだ。
「どうぞ」
カリナがそう答えると、母はそっと扉を開け、周囲を一瞬うかがってから静かに部屋へ入ってきた。
そして、誰かに見られていないか確認するような目つきで扉を閉める。
「お父様は、まだ来賓のお相手をしていて、しばらく戻らないでしょう」
そう前置きしてから、母は視線をカリナへ移した。
「……もしかして、絵を描いていたのね?」
その視線が、娘の目の動きを追って机の端へと移る。
布に隠されたスケッチブック、筆洗いの器、かすかに色が残る筆先。
母の瞳には、優しさと、どこか懐かしさのようなものが宿っていた。
「ごめんなさい、こんなことばかりしていて……」
カリナは思わず謝ってしまう。
「でも、どうしても仕上げたいの。父様に“週末まで”と言われてから、ずっと……焦っていて……」
不安混じりにそう告げると、母はそっと首を振った。
ふわりと、春の風のように微笑む。
「謝る必要なんて、どこにもないわ」
母の声は、驚くほど穏やかだった。
「むしろ、誇らしいくらいよ。こんなにも真剣に何かに打ち込んでいるあなたの姿を見たのは、もしかしたら初めてかもしれないもの」
それは、伯爵夫人として長く生きてきた彼女の、本心からの言葉だった。
社交の場で“理想の妻”を演じ続けてきた女性が、ふと漏らした素顔の感想。
――かつて母も、何か夢や望みを抱いていたことがあったのだろうか。
そんな思いがよぎり、カリナの胸は少しだけ、きゅっと痛む。
母はふと表情を和らげると、小さな包みを懐から取り出し、娘へ差し出した。
「これ、奥の物置で見つけたの。昔あなたが使っていた古い筆よ」
「……私の?」
「ええ。新しい筆に比べたら、少し使いにくいかもしれないけれど……もし必要なら、使ってちょうだい」
包みをそっと開くと、淡い青色の柄をした筆が、布にくるまれて数本入っていた。
毛先は少し傷んでいるが――見覚えがある。幼いころ、夢中でキャンバスに向かっていた時に、いちばんよく使っていた、お気に入りの筆だ。
指でそっと柄をなぞる。
その感触に、幼い自分の笑い声や、絵具まみれの手、叱りながらも見守ってくれていた母の姿が、淡く蘇ってくるようだった。
「ありがとう……お母様」
カリナが小さく呟くと、母はうなずき――そっと娘の手を取る。
その手つきには、どこか「これだけは渡しておきたかったの」という決意のようなものが滲んでいた。
「あなたが仕上げた絵、私も早く見てみたいわ」
母は柔らかな口調のまま続ける。
「伯爵が何と言おうと、私はあなたを応援しているの。
あの人も、“もし失敗したら娘の責任”なんて言い方をしているけれど……内心はどうなのかしらね」
遠い目をして、どこか呆れたようでもあり、慣れきった諦めのようでもある表情を浮かべる。
長い時間を“夫の妻”として生きてきたからこそ知っている、ハロルドという男の複雑さ。
「きっと父様は、心から私を応援しているわけじゃないと思うわ」
カリナは淡々と告げた。
「家の面子を損なわない程度に、私を“利用できればそれでいい”。……そんな感じじゃないかしら」
口にしてみれば、その言葉はひどく冷めて聞こえる。
だが、現実を直視しなければ、何も守れないことも、彼女はもう知っていた。
「それでも、あなたは諦めないんでしょう?」
母の問いかけに、カリナは迷いなくうなずく。
「ええ。もう、引き返せないもの」
自身の中で燃え続ける小さな炎を確かめるように、言葉を紡ぐ。
「リースも、“必ず飾る”って言ってくれているわ。お母様も応援してくれている。だったら私、失敗を恐れて立ち止まるわけにはいかないの」
その表情を見て、母は静かに微笑んだ。
まるで、「それでこそ、私の娘」とでも言いたげに。
「お父様が戻る前に部屋を出るわね」
短い会話を終えると、母はそう告げて立ち上がる。
扉の前で一度だけ振り返り、何かを言いたげに口を開きかけ――結局、何も言わずにそっと出て行った。
戸が閉まり、足音が遠ざかる。
再び部屋には、カリナひとり。
彼女は手の中の古い筆を見つめ、静かに息を吐いた。
(今の私には、迷っている時間なんてない)
(描きたいものを描いて、伯爵を――そしてヴェイル家を――納得させるしかないんだわ)
その夜。
寝室の天井灯を落とし、机の上のランプだけを点す。
柔らかな光の円の中に、キャンバスと筆と絵具だけが浮かび上がる。
一枚目――夜明けの花は、ほとんど完成している。
今日仕上げるべきは、二枚目。
昼下がりの庭を描いた一枚だ。
父が区切った“週末”は、もう目の前。
本当に使える時間は、あとわずかしか残されていないだろう。
緊張で手のひらに汗がにじみ、筆が少し滑りそうになる。
それでも、筆先をキャンバスに触れさせるたび、余計な雑念はスッと遠のいていく。
――まだ誰にも見せていない、“私だけの世界”。
その一番奥の光景に、ようやく手を伸ばせるような感覚だった。
葉の輪郭線を、ほんの少しだけ鮮明に。
木漏れ日の差し込む角度を思い描きながら、影の落ち方をわずかに調整する。
筆先に載せる絵具の量を慎重に見極め、一度塗った緑の上から、薄く金色を重ねていく。
すると、キャンバスの上に――
ふっと柔らかな光が浮かび上がった。
まるで、本物の陽だまりがそこに宿ったように。
(……こんなにも)
カリナは思わず息を止める。
(こんなにも、美しいものを、自分の手で生み出せるんだ)
胸の奥で、何かが震えた。
誰かに褒められる前に、誰かに認められる前に。
まず、自分自身がこの光景を「綺麗だ」と思えたことが、何より嬉しかった。
深夜。時計の針がほとんど一周を終えるころ。
ようやくカリナは、ゆっくりと筆を置いた。
キャンバスいっぱいに広がる、昼の庭の一瞬。
枝葉の隙間から差し込む光。揺れる影。空気のぬくもりまで閉じ込めたような風景。
静かなのに、確かな生命力がある。
「ああ……」
小さく、感嘆の息が漏れる。
満足感が胸に広がると同時に、「これで終わり」と完全に区切ってしまうのが惜しくも感じた。
(明日の朝、もう一度だけ見直そう)
そう決めて、カリナは慎重に筆や絵具を片付け、キャンバスに布をかけた。
ランプを消し、ベッドに横になる頃には、東の空がうっすらと明るみ始めていた。
そして翌朝。
夜が本格的に明けきる前の、薄い青さを残した時間。
カリナは半ば飛び起きるようにしてベッドから抜け出し、真っ先に机へ向かった。
布をめくり、キャンバスと正面から向き合う。
数時間前の自分が描いた世界が、そこにある。
「……うん」
軽く息を整え、最後の確認として、ほんの数か所だけ色を乗せる。
葉の端に、光を示す小さな一筆。
花びらの影の、きわのわずかな濃淡。
それだけで、絵はぐっと“決定的な輝き”をまとった。
「これで……完成」
実感を込めて呟いた瞬間――部屋の外から、侍女たちの声と足音が近づいてきた。
「お嬢様、朝食のご用意が整いました」
「ただいま、行きます」
カリナは慌ててキャンバスに布をかけ直し、鏡の前で身支度を始める。
ドレスを着替え、髪を結い上げるあいだも、胸の鼓動は落ち着かない。
今日、父は言ったのだ。
『今日の午後、画商どもが揃う。そこでお前の作品を見せてもらおう』
その言葉の続きを思い出し、奥歯をかみしめる。
『もし陳腐な代物だったら、母親がどうかばおうが関係ない。即刻却下だ』
(いいわ――)
扉に手をかけながら、カリナは心の中でつぶやく。
(どんな言葉を浴びせられても、この絵だけは私が守る)
食堂に入ると、すでに伯爵は席についていた。
表情は相変わらず読みにくい。機嫌が良いのか悪いのか、まるで分からない。
「……座れ」
短い言葉に従い、カリナは向かいの席につく。
焼きたてのパンとスープの香りが広がる中、伯爵が静かに口を開いた。
「今日の午後、画商どもが揃う。そこでお前の作品を見せてもらおう」
昨日と同じ台詞を繰り返し、
「もし陳腐な代物だったら――」
切り捨てるように続けた。
「母親がどうかばおうが関係ない。即刻却下だ。よいな」
食堂の空気が、すっと冷える。
ナイフとフォークの触れ合う微かな音さえ、ひどく遠く聞こえた。
「……かしこまりました」
カリナは逃げない。
視線を逸らすことなく、静かに言葉を返す。
「午後にお見せします。ご判断は、お父様にお任せします」
少しだけ、息を吸って。
「ですが――これは、私が全力で描いた絵です。それだけは、どうか信じていただきたいと思っています」
伯爵は答えなかった。
ただ無言でナプキンを置き、椅子を引くと、足早に食堂を後にする。
広い空間に残されたのは、カリナと母と、給仕の使用人たちだけ。
母はそっと娘を見やり、小さくうなずいた。
それだけで、十分だった。
(ここからが正念場ね)
カリナは胸の奥で呟く。
(もう、どんな結果になろうと、逃げることはできない)
朝食を終え、自室へ戻ると。
彼女は真っ先に、キャンバスの布を静かにめくった。
夜明けの花。
昼下がりの庭。
二枚の絵は、カリナにとって“夢”と“決意”を詰め込んだ、かけがえのない分身だ。
もし伯爵が「展示に値しない」と言えば、この企画は水の泡に終わるかもしれない。
けれど――ここまで絵に注いできた想いを、「なかったこと」にすることはできない。
たとえギャラリーの壁に掛けられなくとも。
カリナはもう二度と、絵筆を捨てはしないだろう。
(お父様は何と言うのかしら)
(リースは、どんなふうに支えてくれる?)
(お母様は、どんな顔で見守ってくれるの?)
(そして――エドリック様は?)
さまざまな顔が脳裏をよぎる。
その全てを振り払うように、カリナは一つひとつ丁寧に、絵を梱包する準備を始めた。
まもなく、画商と出資者たちが集う「審判の場」が訪れる。
ステラリア家の長い廊下には、朝の光が静かに差し込み、行き交う人々の足音が反響している。
その雑踏の中心へと、二枚の絵を抱えて踏み出すこと。
それは、決して容易なことではない。
――けれど、もう足を止めることはできない。
カリナは自分にそう言い聞かせ、扉の取っ手に手をかけた。
こうして、カリナが大切に育ててきた二枚の絵は――
いよいよ、世に出る時を迎えようとしている。
伯爵はどんな評価を下すのか。
画商たちはその色彩に何を見出すのか。
そして、冷たい婚礼の相手となる男は、この絵の前でどんな顔をするのか。
たとえ誰に何を言われようと、カリナの決意は揺らがない。
薄暗い婚礼の道を照らす、“自分だけの光”を掴み取るために――。
彼女は静かに、しかし確かに、その身を前へと押し出していくのだった。
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