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第2章:偽りの仮面と真実の愛
セクション2-1:偽りの仮面と訪問の始まり
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セクション1:偽りの仮面と訪問の始まり
エドワード・クラレンス侯爵が初めて私の屋敷を訪れてから、わずか数日後。私は父に伴われて、クラレンス侯爵家の領地へと出向くことになった。家同士の正式な顔合わせはすでに済ませたとはいえ、これから嫁ぐ先を自分の目で確かめ、領民や使用人との対面を経て、できる限り不安を拭っておきたいというのが父の考えだった。
もっとも、私は不安が拭えるどころか、この訪問によって新たな緊張が増すのではないかと思っている。なにしろ、相手は“冷酷”や“非情な策略家”と噂される若き侯爵──エドワード・クラレンスなのだ。初対面の日こそ穏やかな物腰だったものの、それが彼の本質なのかどうかは分からない。礼儀正しい仮面の下に何を隠しているのか、私にはまだ何一つ読み取れなかった。
それでも、彼は私のことを「とても知的で美しいお嬢様だ」と褒めそやし、「あなた個人の夢や目標を応援したい」と言ってくれた。そんな甘い言葉を政略結婚の道具として使う人もいるだろうし、逆に本当にそう思っている場合だってある。私はその真意を見極めることができないまま、馬車の窓をぼんやりと眺めていた。
今日は春の陽気が穏やかに広がり、空には雲一つない。旅日和とも言えるだろう。ローウェル家の領地を出て、一時間ほど揺られた頃だろうか。果てしなく続く草原や森を抜け、道が緩やかな坂道に差しかかったあたりで、突然父が口を開いた。
「……アマンダ。お前の心配は分かるが、今回の訪問では失礼のないようにふるまえ。どんなに疑問があろうとも、クラレンス侯爵家は我々にとって大切な相手だ。軽率な態度は慎むのだぞ」
「はい、分かっています」
そっけない返事になってしまったが、私も承知の上だ。エドワード個人を信用しきれないからといって、礼儀を欠くような真似をしてはならない。そんなことは、貴族としての最低限のマナーを叩き込まれてきた私が、一番心得ているつもりだ。
馬車がさらに進むと、大きく拓けた視界の先に白亜の尖塔が見え始める。高くそびえる城郭のような建造物は、さすが侯爵家の本拠地というだけあって圧巻の佇まいだ。周囲には広大な庭園らしき緑が広がり、遠目にも手入れが行き届いているのが分かる。
「クラレンス領……噂には聞いていましたが、実際に目にすると想像以上に大きいですね」
思わず感嘆の声を漏らすと、父は淡々とした口調でうなずく。
「そうだな。あそこに見える白い屋敷が、クラレンスの本邸だ。城塞のように外壁が巡らされていて、かつ庭園の美しさにも定評があると聞く。かつては敵国との最前線だった歴史を持ち、国王からも特別な信頼を得ている名門だ。……恐れ多い相手だぞ、アマンダ」
「……はい」
父の言葉に混ざる僅かな畏怖が、私の胸にもズシリとのしかかる。たとえ表面上どれだけ穏やかに接してくれようとも、そこにあるのは強大な権力と莫大な富を誇る名門貴族。何かあれば、こちらは一瞬で呑み込まれる立場だ。それを思うと、さらに緊張が高まってくる。
やがて馬車は門前で停まり、クラレンス家の使用人らしき者がこちらを出迎えてくれた。皆きびきびと整然としていて、どこか軍隊のような印象を受ける。迎賓用の広い馬車停留場には既に数台の馬車が整然と並べられており、この領地の繁栄ぶりが嫌でも目に入ってきた。
エドワード・クラレンス侯爵が初めて私の屋敷を訪れてから、わずか数日後。私は父に伴われて、クラレンス侯爵家の領地へと出向くことになった。家同士の正式な顔合わせはすでに済ませたとはいえ、これから嫁ぐ先を自分の目で確かめ、領民や使用人との対面を経て、できる限り不安を拭っておきたいというのが父の考えだった。
もっとも、私は不安が拭えるどころか、この訪問によって新たな緊張が増すのではないかと思っている。なにしろ、相手は“冷酷”や“非情な策略家”と噂される若き侯爵──エドワード・クラレンスなのだ。初対面の日こそ穏やかな物腰だったものの、それが彼の本質なのかどうかは分からない。礼儀正しい仮面の下に何を隠しているのか、私にはまだ何一つ読み取れなかった。
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今日は春の陽気が穏やかに広がり、空には雲一つない。旅日和とも言えるだろう。ローウェル家の領地を出て、一時間ほど揺られた頃だろうか。果てしなく続く草原や森を抜け、道が緩やかな坂道に差しかかったあたりで、突然父が口を開いた。
「……アマンダ。お前の心配は分かるが、今回の訪問では失礼のないようにふるまえ。どんなに疑問があろうとも、クラレンス侯爵家は我々にとって大切な相手だ。軽率な態度は慎むのだぞ」
「はい、分かっています」
そっけない返事になってしまったが、私も承知の上だ。エドワード個人を信用しきれないからといって、礼儀を欠くような真似をしてはならない。そんなことは、貴族としての最低限のマナーを叩き込まれてきた私が、一番心得ているつもりだ。
馬車がさらに進むと、大きく拓けた視界の先に白亜の尖塔が見え始める。高くそびえる城郭のような建造物は、さすが侯爵家の本拠地というだけあって圧巻の佇まいだ。周囲には広大な庭園らしき緑が広がり、遠目にも手入れが行き届いているのが分かる。
「クラレンス領……噂には聞いていましたが、実際に目にすると想像以上に大きいですね」
思わず感嘆の声を漏らすと、父は淡々とした口調でうなずく。
「そうだな。あそこに見える白い屋敷が、クラレンスの本邸だ。城塞のように外壁が巡らされていて、かつ庭園の美しさにも定評があると聞く。かつては敵国との最前線だった歴史を持ち、国王からも特別な信頼を得ている名門だ。……恐れ多い相手だぞ、アマンダ」
「……はい」
父の言葉に混ざる僅かな畏怖が、私の胸にもズシリとのしかかる。たとえ表面上どれだけ穏やかに接してくれようとも、そこにあるのは強大な権力と莫大な富を誇る名門貴族。何かあれば、こちらは一瞬で呑み込まれる立場だ。それを思うと、さらに緊張が高まってくる。
やがて馬車は門前で停まり、クラレンス家の使用人らしき者がこちらを出迎えてくれた。皆きびきびと整然としていて、どこか軍隊のような印象を受ける。迎賓用の広い馬車停留場には既に数台の馬車が整然と並べられており、この領地の繁栄ぶりが嫌でも目に入ってきた。
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