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第1章 転生の先で出会う“異世界経済”
9話
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前世の記憶と“FX”への情熱
夜。部屋の窓からは、白い月光が射し込んでいる。わたしは机に向かい、紙とペンを取り出した。この世界にはノートパソコンどころか電気もないけれど、記録をつけることは重要だ。
まず、王国金貨の価値。王都では金貨1枚が銀貨10枚相当とされているが、領地によっては銀貨12枚でも交換しているケースがあるらしい。なぜなら、銀貨が不足している地域では相対的に銀貨の価値が上がるからだ。
「つまり、王都で金貨を銀貨10枚に換えて、それを銀貨不足の地域に持ち込めば、金貨1枚相当の銀貨を12枚に増やせる可能性がある。そこからもう一度、金貨に戻せば……」
わたしは頭の中で計算をしてみる。仮に金貨1枚を銀貨10枚に両替し、それを地方で銀貨12枚分の金貨に戻せるなら、金貨1.2枚に増えることになる。これはわずかな手間で1.2倍に増える投資だ。もちろん、実際には手数料や移動コストもかかるだろうが、それらを加味しても十分な利益が見込める。
「これって、まさに為替差益……アービトラージ(裁定取引)じゃないの。」
前世ならアルゴリズムや高速取引システムがひしめく最先端のFX市場。けれどここではそんなシステムは存在しない。わたしが頭と足を使えば、だれよりも速く利益を出せる余地がある。
さらに、帝国銀貨や公爵領銅貨などを絡めれば、もっと複雑な裁定取引もできそうだ。わたしの目論見は膨らむ一方だ。
「まずは小さくてもいいから、資金を動かしてみたい。金貨何枚かを試しにやってみるか……」
目の奥が熱くなる。前世のわたしは、ディーラーとして多額の資金を動かしてきた。瞬時の判断を迫られる世界で生きてきた。そして、そのプレッシャーに負けて過労で倒れた。だけど、今度は違う。こっちの世界では、わたしのやり方で市場を動かすことができるかもしれない。
「不安はあるけど、わくわくしてる。まさか、異世界転生でこんな風に燃え上がるなんてね……」
そう呟いて、わたしは少し笑ってしまった。日本でのわたしは、過労とストレスで疲弊しきっていたはずなのに、なぜかこの世界に来てからは活力がみなぎっている。
まだ伯爵家の令嬢としての義務や慣習には戸惑いがあるし、周囲からは「いい家に嫁ぐために舞踏会に参加するべき」というプレッシャーもある。だが、それすらもわたしにとっては“小さな問題”にすぎない。
夜。部屋の窓からは、白い月光が射し込んでいる。わたしは机に向かい、紙とペンを取り出した。この世界にはノートパソコンどころか電気もないけれど、記録をつけることは重要だ。
まず、王国金貨の価値。王都では金貨1枚が銀貨10枚相当とされているが、領地によっては銀貨12枚でも交換しているケースがあるらしい。なぜなら、銀貨が不足している地域では相対的に銀貨の価値が上がるからだ。
「つまり、王都で金貨を銀貨10枚に換えて、それを銀貨不足の地域に持ち込めば、金貨1枚相当の銀貨を12枚に増やせる可能性がある。そこからもう一度、金貨に戻せば……」
わたしは頭の中で計算をしてみる。仮に金貨1枚を銀貨10枚に両替し、それを地方で銀貨12枚分の金貨に戻せるなら、金貨1.2枚に増えることになる。これはわずかな手間で1.2倍に増える投資だ。もちろん、実際には手数料や移動コストもかかるだろうが、それらを加味しても十分な利益が見込める。
「これって、まさに為替差益……アービトラージ(裁定取引)じゃないの。」
前世ならアルゴリズムや高速取引システムがひしめく最先端のFX市場。けれどここではそんなシステムは存在しない。わたしが頭と足を使えば、だれよりも速く利益を出せる余地がある。
さらに、帝国銀貨や公爵領銅貨などを絡めれば、もっと複雑な裁定取引もできそうだ。わたしの目論見は膨らむ一方だ。
「まずは小さくてもいいから、資金を動かしてみたい。金貨何枚かを試しにやってみるか……」
目の奥が熱くなる。前世のわたしは、ディーラーとして多額の資金を動かしてきた。瞬時の判断を迫られる世界で生きてきた。そして、そのプレッシャーに負けて過労で倒れた。だけど、今度は違う。こっちの世界では、わたしのやり方で市場を動かすことができるかもしれない。
「不安はあるけど、わくわくしてる。まさか、異世界転生でこんな風に燃え上がるなんてね……」
そう呟いて、わたしは少し笑ってしまった。日本でのわたしは、過労とストレスで疲弊しきっていたはずなのに、なぜかこの世界に来てからは活力がみなぎっている。
まだ伯爵家の令嬢としての義務や慣習には戸惑いがあるし、周囲からは「いい家に嫁ぐために舞踏会に参加するべき」というプレッシャーもある。だが、それすらもわたしにとっては“小さな問題”にすぎない。
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