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第五話
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侯爵夫人としての初めての社交界
“白い結婚”とはいえ、公爵夫人として最低限の社交は避けられない。
結婚して一週間が経ったある日、私は初めてグランツ家当主夫人として社交界の集まりに顔を出すことになった。
場所は王都イル=フィーレの中央広場に面する、豪奢な舞踏会場。日中から夜にかけて開かれる“昼餐会兼舞踏会”で、名家の面々がこぞって参加すると聞いている。
私の目的は、主催者である伯爵家への挨拶はもちろん、グランツ公爵夫人としてのお披露目。そういう場ではレオンも同伴が必要とされていたが、彼は嫌な顔ひとつせず準備を整えてくれた。
馬車に揺られて到着し、華やかなドレス姿の私はレオンの腕を軽く取りながら会場へ足を踏み入れる。
周囲の貴族たちの視線が集まるのがわかる。実際、ささやき声があちこちで起こっている——
「新しい公爵夫人だそうよ。リシェール侯爵家の娘だったわね」
「噂では“白い結婚”だと聞くけど、真相はどうなのかしら?」
「いやいや、冷徹で有名なレオン公爵がわざわざ結婚するくらいだから、何か事情があるに違いないさ」
私はそのどれもを、上品な微笑みで受け流す。
レオンの方はほとんど表情を変えず、私をエスコートするように歩を進める。その無言の気迫に、周囲も軽々には近寄ってこない。
主催の伯爵夫人が私を見つけて近づいてくるのを見計らい、私は優雅にお辞儀した。
「このたびはお招きいただきありがとうございます。グランツ家のエマールと申します。夫ともども、どうぞよろしくお願いいたします」
すると伯爵夫人は満面の笑みで応じてくれた。
「まあまあ、レオン公爵の奥様というのは初めてお目にかかりますわ。お若くてお美しいわね! 噂どおりの逸材だわ。今後の社交界がますます華やかになりそうですこと」
(……噂どおり、というのはどの噂なんだか)
こういう言葉には裏があることも多い。しかし、表向きの付き合いではあれ、笑顔で返すのが礼儀だ。
「恐れ入ります。私などまだまだ至らぬ身ですが、今後ともご指導いただけますと幸いですわ」
こうして無難に挨拶を交わし、いつの間にか周囲には私やレオンに興味津々の人々が集まってきていた。
貴族社会では、新顔(しかも公爵夫人)への関心は高い。それが“白い結婚”という噂に拍車をかけ、人々の好奇心を刺激しているのだろう。
レオンはやはり口数が少ないまま、時折私の受け答えを補うように最低限の言葉を挟んでくれる。
その淡白な態度が「やっぱり冷徹公爵だ」という周囲の印象を強めている気もするが、実際に私は何の不便も感じていなかった。むしろ過干渉されるよりずっといい。
ただ、一部の貴婦人たちは妙な勘繰りをする。
——“あれは本当に愛のある結婚なのか?”
——“グランツ公爵は夫人に興味がなさそう”
——“可哀想に……奥様は冷たくされているんじゃないかしら”
そんな心ない囁きが耳に入らないわけではない。
けれど私は「(これは当初の予定どおりですし……)」と自分に言い聞かせ、苦笑を浮かべるだけだった。
そう、ここまでは全然問題ない。気にならない。問題が起きたのは、そのあとだ。
“白い結婚”とはいえ、公爵夫人として最低限の社交は避けられない。
結婚して一週間が経ったある日、私は初めてグランツ家当主夫人として社交界の集まりに顔を出すことになった。
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「新しい公爵夫人だそうよ。リシェール侯爵家の娘だったわね」
「噂では“白い結婚”だと聞くけど、真相はどうなのかしら?」
「いやいや、冷徹で有名なレオン公爵がわざわざ結婚するくらいだから、何か事情があるに違いないさ」
私はそのどれもを、上品な微笑みで受け流す。
レオンの方はほとんど表情を変えず、私をエスコートするように歩を進める。その無言の気迫に、周囲も軽々には近寄ってこない。
主催の伯爵夫人が私を見つけて近づいてくるのを見計らい、私は優雅にお辞儀した。
「このたびはお招きいただきありがとうございます。グランツ家のエマールと申します。夫ともども、どうぞよろしくお願いいたします」
すると伯爵夫人は満面の笑みで応じてくれた。
「まあまあ、レオン公爵の奥様というのは初めてお目にかかりますわ。お若くてお美しいわね! 噂どおりの逸材だわ。今後の社交界がますます華やかになりそうですこと」
(……噂どおり、というのはどの噂なんだか)
こういう言葉には裏があることも多い。しかし、表向きの付き合いではあれ、笑顔で返すのが礼儀だ。
「恐れ入ります。私などまだまだ至らぬ身ですが、今後ともご指導いただけますと幸いですわ」
こうして無難に挨拶を交わし、いつの間にか周囲には私やレオンに興味津々の人々が集まってきていた。
貴族社会では、新顔(しかも公爵夫人)への関心は高い。それが“白い結婚”という噂に拍車をかけ、人々の好奇心を刺激しているのだろう。
レオンはやはり口数が少ないまま、時折私の受け答えを補うように最低限の言葉を挟んでくれる。
その淡白な態度が「やっぱり冷徹公爵だ」という周囲の印象を強めている気もするが、実際に私は何の不便も感じていなかった。むしろ過干渉されるよりずっといい。
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そんな心ない囁きが耳に入らないわけではない。
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