婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚

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第29話 女王即位

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第29話 女王即位

王都の大聖堂。

普段は祈りの場だが、今日は違った。

貴族。
教会関係者。
騎士団。
商人の代表。

王国の主要人物がすべて集まっている。

大聖堂の中央には、静かな緊張が漂っていた。

理由は一つ。

王の不在。

国王オズヴァルト三世は、すでに退位を宣言した。

そして。

王太子ユリウスは――

まだ王位継承が認められていない。

王国は今。

空位だった。

大聖堂の扉が開く。

ざわめきが広がる。

入ってきたのは、アルヴェーン公爵。

その後ろに――

レティシア。

黒髪を後ろでまとめた女性。

落ち着いた表情。

王宮で何年も宰相として働いてきた人物。

人々は自然に道を開ける。

貴族たちが小声で話す。

「本当に彼女なのか」

「女王に?」

「だが……」

誰もが理解していた。

この王国で。

王宮を動かしていた人物は誰か。

それは――

レティシアだった。

大司教が前へ出る。

「本日」

「王国は新たな統治者を迎える」

静かな声。

大聖堂に響く。

「王国の安定」

「教会の承認」

「貴族評議会の同意」

そして。

「王家の血統」

人々がざわめく。

そう。

レティシアはただの宰相ではない。

アルヴェーン公爵家。

王家の近縁。

王族の血を引く家系。

王位継承資格を持つ血族だった。

大司教は言った。

「よって」

「レティシア・アルヴェーン殿を」

一呼吸。

「王国の統治者として認める」

沈黙。

そして。

大司教は宣言した。

「女王レティシア一世の即位を宣言する」

大聖堂が静まり返る。

次の瞬間。

騎士たちが膝をついた。

貴族たちも続く。

商人たちも頭を下げる。

そして。

教会騎士団長が声を上げた。

「女王陛下に忠誠を!」

大聖堂に声が響く。

「女王陛下万歳!」

「女王陛下万歳!」

歓声が広がる。

レティシアは静かに立っていた。

表情は変わらない。

大司教が王冠を持つ。

そしてゆっくり。

レティシアの頭に乗せた。

その瞬間。

王国は。

新しい王を得た。

レティシアはゆっくり前を見る。

そして静かに言った。

「王国は」

一呼吸。

「止まりません」

その声は穏やかだった。

だが。

誰もが理解していた。

この女王は。

王宮を動かす方法を知っている。

なぜなら。

それを今まで――

一人でやっていたからだ。
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