婚約破棄された幼い公爵令嬢、目覚めたら絶世の美女でした

鍛高譚

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7章

7-3

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 その翌日。早朝の散歩を終えたシルフィーネが、書斎で朝食後のひとときを過ごしていると、侍女の一人が慌てた様子でやってきた。



「お嬢様、王太子閣下からお手紙が届いています!」



「えっ……?」



 驚きながら受け取った封筒には、紺色の封蝋が押されている。紋章はノルディア王家のもの。文字どおり、エドワルドが直々に送ってきた書簡だ。昨日別れたばかりなのに、どうしてこんなに早く……?



 胸の高鳴りを押さえながら封を開けてみると、そこには流麗な筆跡でこう記されていた。



――「シルフィーネ令嬢、昨日は貴重なお時間をありがとうございました。ぜひ、もう少しゆっくりとお話をしたく、本日夕刻に王宮の庭園で催される小さな茶会にお越しいただきたく思います。無理のない範囲で構いません。あなたに負担をかけないよう、静かな場をご用意してお待ちしております」――



 要するに“王宮の庭園”へシルフィーネを招待し、二人きりか、あるいは最小限の随行だけでお茶を楽しもうという趣旨らしい。どうやら公式の行事ではなく、エドワルドが個人的に設けるプライベートな場だと読み取れる。



(あの人……こんな短期間で、二度も三度も私を呼ぼうとしているなんて。本当に積極的)



 書簡の最後には「あなたの健康を最優先に考えますので、もし体調が優れないようなら遠慮なくお断りください」という一文も添えられていた。彼なりの気遣いなのだろうが、そこまで配慮してくれるのかと感激に似た感情が湧き上がる。

 一方で、心のどこかで「これって、まさに“溺愛”の始まりなのでは?」と照れ混じりに思う自分がいる。まさか政略結婚相手から、こんなに直球の好意を示される日が来るとは夢にも思わなかった。



 しかし、同時に少しだけ不安もある。王宮の庭園に一人で出向くというのは、周囲の目があるとはいえ、実質的に“親密さ”を周囲にアピールする形になる。まだ婚約が正式に発表されたわけでもないのに、反発する者が出てくるのではないか――。



 シルフィーネは両親に相談しようと書斎へ向かう。そこではルドルフ公爵とマリア夫人が「今日の午後は面会の予定は入っていないが、夕刻に王宮へ出かけるとなると少々準備が必要だな」などと言い合っているところだった。どうやら既に侍女から報告を受けたらしい。



「シルフィーネ、どう思う? 無理せず断ってもいいんだよ」



 ルドルフ公爵は娘の健康を何より気にかけているから、少しでも負担を減らそうと促している。一方、マリア夫人は「でも、せっかく王太子閣下が私的な茶会に招いてくださっているのだから、あまりに塩対応も……」と迷う様子。



 シルフィーネは一瞬考え込んだ末、深呼吸して答える。



「……行きたいです。大丈夫、まだ歩いたり座ったりするくらいなら問題ないし、閣下も無理をさせるつもりはないって書いてあります。それに、やっぱり彼ともう少しお話してみたいので」



 両親はその決断に多少驚いたが、娘が自ら“積極的に会おうとしている”事実は嬉しく思ったようで、すぐに了承してくれた。あとは時間がないので急いでドレスを選び、夕刻までに王宮へ向かう準備を整えねばならない。

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