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第32話 リオナ、初めての自覚。これは…恋?
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第32話 リオナ、初めての自覚。これは…恋?
カイルとふたりきりの夜会が終わり、控え室から王城の廊下へ出たとき。
リオナの胸は、どくんどくんと落ち着かず、小さな動悸が続いていた。
先ほどまで泣いていた自分とは思えないほど、心が温かい。
隣を歩くカイルは、どこかぎこちなく、それでも優しい笑みを見せていた。
「送っていくよ、リオナ。馬車の場所、案内する」
「うん…ありがとう」
何度も言ってしまう言葉。
でも、どうしても口からこぼれてしまう。
廊下を歩くたびに、カイルの影が自分に寄り添うように伸びる。
それだけで胸が締め付けられた。
(どうしてこんなに…落ち着かないんだろう?)
いつものカイルなのに。
いつもの距離なのに。
どうして、こんなに意識してしまうのだろう。
控え室で言われたことが、何度もよみがえる。
リオナ。君を守りたい。
その言葉だけで胸が熱くなる自分がいた。
「リオナ? 歩くの遅いけど、大丈夫か?」
「え? あっ、ごめん…!」
ぼんやりしていたせいで、少しつまずきそうになった瞬間、
カイルがそっと腕を取って支えてくれた。
その温もりに、リオナは息を呑む。
「危ないだろ。ほら、こっち」
「う…うん…」
手はつないでいないのに、指先が触れただけで、体全体が熱くなる。
(これ…おかしいよ…私どうしちゃったの?)
胸が、ずっと苦しい。
でも、それは嫌な苦しさじゃなくて、もっと甘い、くすぐったい痛みだった。
カイルは気づいていないのか、いつもと同じ落ち着いた口調で話す。
「さっき泣いていた時、手が震えてた。もう大丈夫か?」
「あ、うん。カイルが迎えに来てくれたから…」
言った瞬間、言葉の意味に気づき、顔が真っ赤になる。
(だめ! なに言ってるの私!)
カイルは少し驚いた顔をしたが、すぐに柔らかく笑った。
「…そう言ってもらえると、俺も救われるよ」
その表情は、まるで自分だけに向けられたようで。
リオナの心は一気に跳ねた。
胸の奥がぎゅっと締めつけられ、呼吸が少しだけ乱れる。
「り、リオナ?」
「な、なんでもないっ!」
慌てて顔をそむける。
けれど、カイルの瞳から逃げようとしている自分に気づいて、
ますます混乱した。
ここまで感情が揺さぶられるのは初めてだった。
図書室での勉強。
昼下がりの紅茶時間。
何気ない会話。
すべてが、ゆっくりと胸に積み重なっていたのだ。
「ねえ…カイル」
「ん?」
「もし…もしも、だよ。私が…カイルといると…その…」
そこまで言って、言葉がつまる。
言えない。
恥ずかしくて、怖くて、でも知りたくて。
「どうしたんだ? いつもより言葉を迷ってる」
「…カイルといるとね、胸がずっと苦しいの。変なの」
「苦しい?」
「うん。変な感じ。苦しいけど、嫌じゃないの。むしろ…あったかくなるというか…」
カイルは歩みを止め、リオナを見つめた。
その瞳の奥で、少しだけ緊張が走っている。
「それはな、リオナ」
喉が鳴るような低い声。
「恋に…似ている感情だよ」
「こ、こい…?」
リオナの顔は一瞬で真っ赤になる。
「うそ、だって…そんな…私が…カイルに?」
「違うとは言えないんじゃないか? その反応を見る限り」
「えええええええ!? ちょっと待って…待って…!」
リオナは頭を抱えてその場でくるくると回り出す。
カイルが慌てて肩を押さえた。
「落ち着け、リオナ! 回るな!」
「だ、だって…! そんな…! 私がカイルを好きってこと!? ありえないよ! いや、ありえるの!? どっち!?」
「落ち着けってば!」
けれど、カイルも顔がほんのり赤い。
リオナはようやく立ち止まり、
胸に手を当てながら、小さくつぶやく。
「でも…確かに…これ、カイルのことを考えるときだけなんだよね…」
自分の言葉に驚き、再び赤面する。
カイルは息を呑み、ほんの少しだけ目を伏せた。
「リオナ。それはきっと…」
言いかけた時。
「おっと、こんなところにいたのか」
背後から聞こえた軽い声に、ふたり同時に振り向いた。
セドリック第二王子が、ニヤニヤしながら立っていた。
「いやあ、甘い雰囲気を邪魔しちまったかな?」
「殿下っ!?」「殿下!?」
二人の声が重なり、空気が一気に爆発した。
カイルの眉間がぴくりと動き、
リオナは頭を抱えたまま固まる。
そしてセドリックは満面の笑みで言い放った。
「さて。恋の相談はあとにして、ふたりとも王のところへ来てくれ」
最悪のタイミングだった。
リオナの恋の自覚も、
カイルの告白のきっかけも、
全部、中断されたまま――
二人はしぶしぶ王のもとへ向かうことになる。
けれど。
リオナの胸には、初めて生まれた確かな感情があった。
カイルのことが好き。
その事実は、もう誤魔化せなかった。
カイルとふたりきりの夜会が終わり、控え室から王城の廊下へ出たとき。
リオナの胸は、どくんどくんと落ち着かず、小さな動悸が続いていた。
先ほどまで泣いていた自分とは思えないほど、心が温かい。
隣を歩くカイルは、どこかぎこちなく、それでも優しい笑みを見せていた。
「送っていくよ、リオナ。馬車の場所、案内する」
「うん…ありがとう」
何度も言ってしまう言葉。
でも、どうしても口からこぼれてしまう。
廊下を歩くたびに、カイルの影が自分に寄り添うように伸びる。
それだけで胸が締め付けられた。
(どうしてこんなに…落ち着かないんだろう?)
いつものカイルなのに。
いつもの距離なのに。
どうして、こんなに意識してしまうのだろう。
控え室で言われたことが、何度もよみがえる。
リオナ。君を守りたい。
その言葉だけで胸が熱くなる自分がいた。
「リオナ? 歩くの遅いけど、大丈夫か?」
「え? あっ、ごめん…!」
ぼんやりしていたせいで、少しつまずきそうになった瞬間、
カイルがそっと腕を取って支えてくれた。
その温もりに、リオナは息を呑む。
「危ないだろ。ほら、こっち」
「う…うん…」
手はつないでいないのに、指先が触れただけで、体全体が熱くなる。
(これ…おかしいよ…私どうしちゃったの?)
胸が、ずっと苦しい。
でも、それは嫌な苦しさじゃなくて、もっと甘い、くすぐったい痛みだった。
カイルは気づいていないのか、いつもと同じ落ち着いた口調で話す。
「さっき泣いていた時、手が震えてた。もう大丈夫か?」
「あ、うん。カイルが迎えに来てくれたから…」
言った瞬間、言葉の意味に気づき、顔が真っ赤になる。
(だめ! なに言ってるの私!)
カイルは少し驚いた顔をしたが、すぐに柔らかく笑った。
「…そう言ってもらえると、俺も救われるよ」
その表情は、まるで自分だけに向けられたようで。
リオナの心は一気に跳ねた。
胸の奥がぎゅっと締めつけられ、呼吸が少しだけ乱れる。
「り、リオナ?」
「な、なんでもないっ!」
慌てて顔をそむける。
けれど、カイルの瞳から逃げようとしている自分に気づいて、
ますます混乱した。
ここまで感情が揺さぶられるのは初めてだった。
図書室での勉強。
昼下がりの紅茶時間。
何気ない会話。
すべてが、ゆっくりと胸に積み重なっていたのだ。
「ねえ…カイル」
「ん?」
「もし…もしも、だよ。私が…カイルといると…その…」
そこまで言って、言葉がつまる。
言えない。
恥ずかしくて、怖くて、でも知りたくて。
「どうしたんだ? いつもより言葉を迷ってる」
「…カイルといるとね、胸がずっと苦しいの。変なの」
「苦しい?」
「うん。変な感じ。苦しいけど、嫌じゃないの。むしろ…あったかくなるというか…」
カイルは歩みを止め、リオナを見つめた。
その瞳の奥で、少しだけ緊張が走っている。
「それはな、リオナ」
喉が鳴るような低い声。
「恋に…似ている感情だよ」
「こ、こい…?」
リオナの顔は一瞬で真っ赤になる。
「うそ、だって…そんな…私が…カイルに?」
「違うとは言えないんじゃないか? その反応を見る限り」
「えええええええ!? ちょっと待って…待って…!」
リオナは頭を抱えてその場でくるくると回り出す。
カイルが慌てて肩を押さえた。
「落ち着け、リオナ! 回るな!」
「だ、だって…! そんな…! 私がカイルを好きってこと!? ありえないよ! いや、ありえるの!? どっち!?」
「落ち着けってば!」
けれど、カイルも顔がほんのり赤い。
リオナはようやく立ち止まり、
胸に手を当てながら、小さくつぶやく。
「でも…確かに…これ、カイルのことを考えるときだけなんだよね…」
自分の言葉に驚き、再び赤面する。
カイルは息を呑み、ほんの少しだけ目を伏せた。
「リオナ。それはきっと…」
言いかけた時。
「おっと、こんなところにいたのか」
背後から聞こえた軽い声に、ふたり同時に振り向いた。
セドリック第二王子が、ニヤニヤしながら立っていた。
「いやあ、甘い雰囲気を邪魔しちまったかな?」
「殿下っ!?」「殿下!?」
二人の声が重なり、空気が一気に爆発した。
カイルの眉間がぴくりと動き、
リオナは頭を抱えたまま固まる。
そしてセドリックは満面の笑みで言い放った。
「さて。恋の相談はあとにして、ふたりとも王のところへ来てくれ」
最悪のタイミングだった。
リオナの恋の自覚も、
カイルの告白のきっかけも、
全部、中断されたまま――
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けれど。
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