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第33話 王からの呼び出し リオナ、まさかの大役に抜擢
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第33話 王からの呼び出し リオナ、まさかの大役に抜擢
王の執務室は、夜会の喧騒から離れた静かな場所にあった。
磨き抜かれた床と重厚な扉が、そこにいる者の緊張を一段と高める。
リオナは胸の鼓動を必死に抑えながら、カイルと並んで廊下を歩いた。
さっきまで「恋」「好き」という単語に頭がぐるぐるしていたため、
まったく気持ちの整理がついていない。
それなのに――よりによって国王陛下からの呼び出しである。
(ムリだよ…! 今の状態で王さまに会うなんて!)
ちらりと横を見ると、カイルも表情こそ整えているが、どこか思いつめた面持ちだった。
さきほどのリオナの様子が、よほど衝撃だったらしい。
(うわあ…なんか気まずい。どうしよう。どうしたらいいの…)
などと混乱しているうちに、扉の前へ到着してしまった。
「陛下。カイルとリオナ嬢をお連れしました」
セドリックがノックして呼びかける。
少しして、落ち着いた低い声が返ってきた。
「入りなさい」
カイルが軽く息をのみ、リオナの背中をそっと押した。
部屋に入ると、王は書類を前にして椅子に座り、
二人をじっくりと見つめてきた。
白髪混じりの髪、鋭い眼光。
けれどその瞳の奥には優しさもある。
リオナは緊張のあまり、心臓がどこかへ逃げ出しそうだった。
「リオナ・ハーヴェル嬢」
「は、はいっ!」
声が裏返り、カイルが横で小さく肩を震わせた。
王は気にする様子もなく、軽く頷いた。
「先ほどの夜会での騒ぎについては、セドリックより報告を受けている。
不快な思いをさせてしまったな」
「い、いえ! 私が未熟でして…!」
思わず深く頭を下げるリオナ。
王は穏やかに微笑み、手を軽く振った。
「責めてはおらん。むしろ、礼を言いたい」
「れ、礼…?」
リオナは思い切り目を丸くする。
カイルも思わず王を見た。
「お前があの場で見せた素直な振る舞いは、
臣下たちの気を引き締めさせる結果となった。
己の立場を過信していた者たちに、よい薬となったのだ」
リオナは、ぽかんと口を開けたまま固まった。
(ただ泣いただけなんだけど…? そんな効果があったの…?)
王は続ける。
「それに、リオナ嬢。お前はこの国で数少ない、
民の声を正しく聞ける素直な心を持っている。
カイルも以前から進言していたが…」
カイルがびくりと肩を揺らす。
王はゆっくりと告げた。
「来月行われる収穫祭の儀式。
その補佐役として、リオナ嬢を任命したい」
「…………へ?」
あまりに予想外で、声が出なかった。
カイルが慌てて口を開く。
「陛下。リオナはまだ教育の途中です。
儀式は責任も重く、心の準備も…」
「だからこそだ。
無垢な心で儀式に臨める者は、今の王宮には少ない」
王はリオナをまっすぐ見つめる。
「リオナ嬢。引き受けてくれるか?」
部屋の空気が静まり返り、
王の視線も、カイルの視線も、リオナに集まる。
リオナは唾を飲み込み、そっと口を開いた。
「わ、私…できるかは分からないけど…」
震える声。
でも逃げない。
「やってみたいです」
その瞬間、王の顔に満足げな笑みが浮かんだ。
「よく言った。期待しているぞ」
「はい…!」
リオナは深く頭を下げた。
カイルは安堵と驚きが混じったような顔でリオナを見つめる。
部屋を出た後、廊下に戻ると、リオナはふらふらと壁に寄りかかった。
「な、なんか…とんでもないことになった…」
カイルは横で苦笑した。
「でも、リオナらしいよ。
君がやると言ったからこそ、陛下も任せたんだ」
「うう…私に務まるかなぁ…」
「務まるさ。俺がついてる」
その言葉だけで胸がぎゅっと締まった。
また、あの恋に似た感情が胸を温める。
けれど次の瞬間。
「おやおや。甘い空気を出すのはそこまでにして」
廊下の角からひょこっと顔を出す影。
セドリック第二王子が、にやりと笑っていた。
「リオナ嬢。儀式の練習、一緒にやるから覚悟しておけ」
「ひ、ひゃあああああ!? せ、セドリック殿下!?」
カイルは頭を抱える。
「殿下。タイミングというものを…!」
だがセドリックは楽しそうに肩をすくめた。
「恋も仕事も、同時進行だ。頑張れよ、カイル」
「……っ」
カイルは真っ赤になり、リオナは混乱したまま固まる。
こうしてリオナの新たな日々が始まる。
儀式の補佐という大役。
そして――恋を知り始めた心の揺れ。
静かな日常は、少しずつ、けれど確実に変わり始めていた。
王の執務室は、夜会の喧騒から離れた静かな場所にあった。
磨き抜かれた床と重厚な扉が、そこにいる者の緊張を一段と高める。
リオナは胸の鼓動を必死に抑えながら、カイルと並んで廊下を歩いた。
さっきまで「恋」「好き」という単語に頭がぐるぐるしていたため、
まったく気持ちの整理がついていない。
それなのに――よりによって国王陛下からの呼び出しである。
(ムリだよ…! 今の状態で王さまに会うなんて!)
ちらりと横を見ると、カイルも表情こそ整えているが、どこか思いつめた面持ちだった。
さきほどのリオナの様子が、よほど衝撃だったらしい。
(うわあ…なんか気まずい。どうしよう。どうしたらいいの…)
などと混乱しているうちに、扉の前へ到着してしまった。
「陛下。カイルとリオナ嬢をお連れしました」
セドリックがノックして呼びかける。
少しして、落ち着いた低い声が返ってきた。
「入りなさい」
カイルが軽く息をのみ、リオナの背中をそっと押した。
部屋に入ると、王は書類を前にして椅子に座り、
二人をじっくりと見つめてきた。
白髪混じりの髪、鋭い眼光。
けれどその瞳の奥には優しさもある。
リオナは緊張のあまり、心臓がどこかへ逃げ出しそうだった。
「リオナ・ハーヴェル嬢」
「は、はいっ!」
声が裏返り、カイルが横で小さく肩を震わせた。
王は気にする様子もなく、軽く頷いた。
「先ほどの夜会での騒ぎについては、セドリックより報告を受けている。
不快な思いをさせてしまったな」
「い、いえ! 私が未熟でして…!」
思わず深く頭を下げるリオナ。
王は穏やかに微笑み、手を軽く振った。
「責めてはおらん。むしろ、礼を言いたい」
「れ、礼…?」
リオナは思い切り目を丸くする。
カイルも思わず王を見た。
「お前があの場で見せた素直な振る舞いは、
臣下たちの気を引き締めさせる結果となった。
己の立場を過信していた者たちに、よい薬となったのだ」
リオナは、ぽかんと口を開けたまま固まった。
(ただ泣いただけなんだけど…? そんな効果があったの…?)
王は続ける。
「それに、リオナ嬢。お前はこの国で数少ない、
民の声を正しく聞ける素直な心を持っている。
カイルも以前から進言していたが…」
カイルがびくりと肩を揺らす。
王はゆっくりと告げた。
「来月行われる収穫祭の儀式。
その補佐役として、リオナ嬢を任命したい」
「…………へ?」
あまりに予想外で、声が出なかった。
カイルが慌てて口を開く。
「陛下。リオナはまだ教育の途中です。
儀式は責任も重く、心の準備も…」
「だからこそだ。
無垢な心で儀式に臨める者は、今の王宮には少ない」
王はリオナをまっすぐ見つめる。
「リオナ嬢。引き受けてくれるか?」
部屋の空気が静まり返り、
王の視線も、カイルの視線も、リオナに集まる。
リオナは唾を飲み込み、そっと口を開いた。
「わ、私…できるかは分からないけど…」
震える声。
でも逃げない。
「やってみたいです」
その瞬間、王の顔に満足げな笑みが浮かんだ。
「よく言った。期待しているぞ」
「はい…!」
リオナは深く頭を下げた。
カイルは安堵と驚きが混じったような顔でリオナを見つめる。
部屋を出た後、廊下に戻ると、リオナはふらふらと壁に寄りかかった。
「な、なんか…とんでもないことになった…」
カイルは横で苦笑した。
「でも、リオナらしいよ。
君がやると言ったからこそ、陛下も任せたんだ」
「うう…私に務まるかなぁ…」
「務まるさ。俺がついてる」
その言葉だけで胸がぎゅっと締まった。
また、あの恋に似た感情が胸を温める。
けれど次の瞬間。
「おやおや。甘い空気を出すのはそこまでにして」
廊下の角からひょこっと顔を出す影。
セドリック第二王子が、にやりと笑っていた。
「リオナ嬢。儀式の練習、一緒にやるから覚悟しておけ」
「ひ、ひゃあああああ!? せ、セドリック殿下!?」
カイルは頭を抱える。
「殿下。タイミングというものを…!」
だがセドリックは楽しそうに肩をすくめた。
「恋も仕事も、同時進行だ。頑張れよ、カイル」
「……っ」
カイルは真っ赤になり、リオナは混乱したまま固まる。
こうしてリオナの新たな日々が始まる。
儀式の補佐という大役。
そして――恋を知り始めた心の揺れ。
静かな日常は、少しずつ、けれど確実に変わり始めていた。
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