白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

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第34話 収穫祭の準備開始 リオナ、まったく覚えられず叱られる

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第34話 収穫祭の準備開始 リオナ、まったく覚えられず叱られる

翌朝。王宮の一角にある儀式用の訓練室には、清らかな空気が漂っていた。

高い窓から朝日が差し込み、床には大きな魔法陣が描かれている。
ここで、リオナは補佐役としての作法と段取りを学ばなければならない。

「それでは、リオナ嬢。まずは儀式で使う祝詞を覚えていただきます」

教官役として呼ばれたのは、宮廷侍女長レアナ。
厳格で有名な彼女は、手に分厚い資料を抱えている。

リオナは資料の厚さを見た瞬間、目が死んだ。

「こ、こんなに…?」

「これでも要点だけをまとめた簡略版です」

「ぜんぜん簡略じゃない…!」

カイルが横で小さく肩を震わせる。

レアナは表情ひとつ変えず、淡々と説明を続ける。

「まずは祝詞です。こちらを暗唱していただきます」

リオナは紙を受け取り、震える声で読み始めた。

「か、感謝の…ええっと…豊穣を…た、たたえ……?」

「違います。『豊穣を讃え』です」

「ひゃっ…ご、ごめんなさい!」

レアナの指摘は鋭いが、間違ってはいない。
ただ、リオナの理解力が追いつかないだけだ。

「もう一度最初から」

「は、はい!」

リオナは深呼吸し、再チャレンジする。

「感謝の祈りを……ええっと……魂に導き……?」

「違います。『大地に導き』です」

「だ、大地…あ、魂じゃないんだ…」

「そもそも魂に導いたら、祭りではなく葬式になります」

「ひぃ…!」

カイルがわずかに吹き出しそうになるが、必死にこらえる。

レアナはさらに続ける。

「次。儀式の所作です。
右手で器を受け取り、左足から三歩進みます」

「右手で受け取って…えっと…左足から……え、三歩?」

「そうです。では実際にやってみてください」

リオナは器を持ち、慎重に一歩踏み出した。

しかし。

「リオナ。今、右足から出したぞ」

カイルの指摘が飛ぶ。

「あれ!? 左足だっけ!? ああああ!」

「リオナ嬢。今ので三回目です」

レアナの冷静な声が胸に刺さる。

「ご、ごめんなさい…」

儀式の流れ、祝詞、器の扱い、魔法陣の踏み方。
覚えることがあまりにも多くて、頭はすでにパンク状態。

レアナは一歩近づき、リオナをまっすぐ見つめた。

「リオナ嬢。あなたはやる気がないのですか?」

「そ、そんなことないです! 本当に頑張ってるんです!」

「では集中してください。補佐役は責任重大です。
王国を代表して、この儀式を成功させねばならないのです」

リオナは肩を落とす。

「うぅ…難しいよぉ…」

カイルがそっと近づき、耳元でささやく。

「リオナ。焦らなくていい。俺が横で教えるから」

その声だけで、リオナの心は少し落ち着いた。

(カイルがいるなら…頑張れる気がする)

するとレアナが言った。

「カイル卿。あなたも手伝う気なら、責任を持って彼女を導いてください。
補佐役の補佐は、あなたに任せます」

「承知しました」

カイルは真剣に頷く。

その数秒後。

「では、祝詞をもう一度。リオナ嬢、最初から」

「は、はい…!」

リオナは震える声で読み上げた。

「感謝の祈りを…大地に導き…豊穣を讃え…」

今度はほぼ正解。

レアナは小さく頷く。

「少し成長しましたね」

「ほ、本当ですか!? やった…!」

レアナは淡々と続ける。

「では次。器の持ち方からやり直します」

「ええええ!? まだ続くの!?」

「当然です。儀式は数日後なのですから」

リオナは泣きそうだった。

しかしカイルは隣で優しく言う。

「一緒に頑張ろう、リオナ。君ならできる」

その声が、疲れた心に沁みる。

(カイルが言うなら…やってみる…)

そしてリオナは、また一歩、儀式の練習へ踏み出した。

――ただし、また左足ではなく右足から踏み出し、
カイルがそっと肩を押さえて止めるのだった。

「リオナ。左足だ」

「ううう~~~……!!」

レアナはため息をつきつつ、まだ教える気は失っていない。

こうしてリオナの儀式特訓は、初日から波乱の幕開けとなった。


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