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第35話 セドリックの乱入 リオナの才能がまさかの方向に開花
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第35話 セドリックの乱入 リオナの才能がまさかの方向に開花
儀式準備二日目。
リオナは相変わらず祝詞を噛み倒し、
器を持てば左右を間違え、
歩けば必ず右足から出してしまうという致命的なクセを克服できずにいた。
「リオナ。左足からだって言ってるだろう…」
カイルはすでに何度も言い続け、半ば泣きそうな顔になっている。
「わ、分かってるんだけど…体が勝手に動くの…!」
レアナ侍女長はこめかみを押さえながら深く息を吐いていた。
「リオナ嬢。あなたの身体に、右足しか存在しないのですか?」
「ひぃ…頑張ります…!」
そんな混沌とした空気の中――突然、訓練室の扉が勢いよく開いた。
「やあ、みんな元気に混乱しているか?」
「殿下…!?」
第二王子セドリックが片手をひらひらさせながら入ってくる。
レアナの顔が一瞬で険しくなり、
カイルは頭を抱え、
そしてリオナは「助けを求める人間を見る目」でセドリックを見た。
セドリックは状況を一瞥すると、
まるで面白い玩具を見つけた子供のように笑った。
「なるほど。リオナ嬢は祭礼の儀式訓練で苦戦しているわけか」
「笑いごとではありません」
カイルがきっぱり言い返すが、セドリックは意に介さない。
「ふむ。では、私も少しだけ手伝おう」
「て、手伝うって…殿下、そんな簡単なものじゃ…」
レアナが制止しようとした瞬間。
「リオナ嬢、君はどうやって覚えている?」
「どうやって…? えっと…頭で覚えようとして…でも全然覚えられなくて…」
「よし。それが間違いだ」
セドリックは胸を張って言い切った。
「君のようなタイプは、頭ではなく――体で覚えるのだ」
「体で…?」
すると彼は祝詞の紙をひょいと取り、
その場で軽快に読み上げながら、
ステップを踏み始めた。
右、左、くるり。
器を持つ動きと、歩幅の取り方をまるで踊りのように組み合わせていく。
「こ、これは…!」
レアナが目を丸くする。
セドリックの動きは滑らかで、理にかなっていた。
祝詞も、所作も、歩法も、わかりやすくリズムに合わせて整理されている。
まるで――舞だ。
「す、すごい…!」
リオナの目が輝いた。
「よし。リオナ嬢、私の真似をするんだ」
「は、はい!」
リオナはセドリックの隣に立ち、
彼のステップに合わせて動き始める。
すると――
「感謝の祈りを…大地に導き…豊穣を讃え…」
「リオナ。今、祝詞を一度も噛んでいない!」
カイルが驚いた声を上げた。
レアナも信じられないという顔をしている。
さらに驚くべきは――
リオナが、自然と左足から踏み出していたことだ。
「リオナ嬢、左足…正しく出せています!」
「え!? 私、出せてた!? ほんとに!?」
「本当だ!」
セドリックが満足げに頷く。
「人には向き不向きがある。
君は型を丸暗記するより、流れと感覚で覚えるタイプだ」
「すごい…! なんだか…できるかも…!」
リオナは、まるで新しい世界に飛び込んだように嬉しそうに笑った。
セドリックはニヤリと笑い、カイルの肩を軽く叩く。
「ほらな。君は頭で教えすぎだ。
リオナ嬢はもっと感覚派なんだよ」
「くっ…しかし殿下…!」
「まあまあ。君の教育が悪いわけじゃない。
ただ、タイプの違いってやつだ」
セドリックは肩をすくめる。
レアナ侍女長も、半ば信じられない表情で言った。
「…確かに、リオナ嬢の理解速度が上がっています。
殿下の言う通り、方法の問題だったようですね」
リオナはステップを繰り返しながら笑顔になる。
「なんだか楽しい! あの難しい祝詞も、ちゃんと覚えられそう!」
カイルはその姿を見つめ、胸が温かくなるのを感じた。
(よかった…本当によかった…)
しかしその一方で。
(……殿下、急にリオナに近づきすぎじゃないか?)
ほんのわずか、胸の奥にちくりとしたものが生まれた。
そんなカイルの気持ちに気づかず、
リオナは楽しそうに声を弾ませる。
「カイル! ねぇ、私できてるよね!」
「…ああ。とても、上手い」
「へへへ…良かった…!」
リオナが嬉しそうに笑うだけで、
カイルの不安も、嫉妬も、少しずつ溶けていく。
セドリックは腕を組みながら、にんまりと笑う。
「これで儀式も安心だな。
さて、リオナ嬢。次は魔法陣の踏み方だ。リズムで行くぞ」
「はい!」
そして――
リオナの儀式訓練は、思わぬ方向から才能が開花し始めたのだった。
儀式準備二日目。
リオナは相変わらず祝詞を噛み倒し、
器を持てば左右を間違え、
歩けば必ず右足から出してしまうという致命的なクセを克服できずにいた。
「リオナ。左足からだって言ってるだろう…」
カイルはすでに何度も言い続け、半ば泣きそうな顔になっている。
「わ、分かってるんだけど…体が勝手に動くの…!」
レアナ侍女長はこめかみを押さえながら深く息を吐いていた。
「リオナ嬢。あなたの身体に、右足しか存在しないのですか?」
「ひぃ…頑張ります…!」
そんな混沌とした空気の中――突然、訓練室の扉が勢いよく開いた。
「やあ、みんな元気に混乱しているか?」
「殿下…!?」
第二王子セドリックが片手をひらひらさせながら入ってくる。
レアナの顔が一瞬で険しくなり、
カイルは頭を抱え、
そしてリオナは「助けを求める人間を見る目」でセドリックを見た。
セドリックは状況を一瞥すると、
まるで面白い玩具を見つけた子供のように笑った。
「なるほど。リオナ嬢は祭礼の儀式訓練で苦戦しているわけか」
「笑いごとではありません」
カイルがきっぱり言い返すが、セドリックは意に介さない。
「ふむ。では、私も少しだけ手伝おう」
「て、手伝うって…殿下、そんな簡単なものじゃ…」
レアナが制止しようとした瞬間。
「リオナ嬢、君はどうやって覚えている?」
「どうやって…? えっと…頭で覚えようとして…でも全然覚えられなくて…」
「よし。それが間違いだ」
セドリックは胸を張って言い切った。
「君のようなタイプは、頭ではなく――体で覚えるのだ」
「体で…?」
すると彼は祝詞の紙をひょいと取り、
その場で軽快に読み上げながら、
ステップを踏み始めた。
右、左、くるり。
器を持つ動きと、歩幅の取り方をまるで踊りのように組み合わせていく。
「こ、これは…!」
レアナが目を丸くする。
セドリックの動きは滑らかで、理にかなっていた。
祝詞も、所作も、歩法も、わかりやすくリズムに合わせて整理されている。
まるで――舞だ。
「す、すごい…!」
リオナの目が輝いた。
「よし。リオナ嬢、私の真似をするんだ」
「は、はい!」
リオナはセドリックの隣に立ち、
彼のステップに合わせて動き始める。
すると――
「感謝の祈りを…大地に導き…豊穣を讃え…」
「リオナ。今、祝詞を一度も噛んでいない!」
カイルが驚いた声を上げた。
レアナも信じられないという顔をしている。
さらに驚くべきは――
リオナが、自然と左足から踏み出していたことだ。
「リオナ嬢、左足…正しく出せています!」
「え!? 私、出せてた!? ほんとに!?」
「本当だ!」
セドリックが満足げに頷く。
「人には向き不向きがある。
君は型を丸暗記するより、流れと感覚で覚えるタイプだ」
「すごい…! なんだか…できるかも…!」
リオナは、まるで新しい世界に飛び込んだように嬉しそうに笑った。
セドリックはニヤリと笑い、カイルの肩を軽く叩く。
「ほらな。君は頭で教えすぎだ。
リオナ嬢はもっと感覚派なんだよ」
「くっ…しかし殿下…!」
「まあまあ。君の教育が悪いわけじゃない。
ただ、タイプの違いってやつだ」
セドリックは肩をすくめる。
レアナ侍女長も、半ば信じられない表情で言った。
「…確かに、リオナ嬢の理解速度が上がっています。
殿下の言う通り、方法の問題だったようですね」
リオナはステップを繰り返しながら笑顔になる。
「なんだか楽しい! あの難しい祝詞も、ちゃんと覚えられそう!」
カイルはその姿を見つめ、胸が温かくなるのを感じた。
(よかった…本当によかった…)
しかしその一方で。
(……殿下、急にリオナに近づきすぎじゃないか?)
ほんのわずか、胸の奥にちくりとしたものが生まれた。
そんなカイルの気持ちに気づかず、
リオナは楽しそうに声を弾ませる。
「カイル! ねぇ、私できてるよね!」
「…ああ。とても、上手い」
「へへへ…良かった…!」
リオナが嬉しそうに笑うだけで、
カイルの不安も、嫉妬も、少しずつ溶けていく。
セドリックは腕を組みながら、にんまりと笑う。
「これで儀式も安心だな。
さて、リオナ嬢。次は魔法陣の踏み方だ。リズムで行くぞ」
「はい!」
そして――
リオナの儀式訓練は、思わぬ方向から才能が開花し始めたのだった。
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